第8話 突然の開発

「なぁ、ノート見たろ。お前、俺がこうなるの分かっていたんだろ」

 ベッドに抑えつけられる俺は息を荒げる河出から目を背けた。


「止めろ」

 河出は耳を舐めてきた。


「あっ」

 声が出た。これは気持ちいいわけではない。反射神経だ。


「感じているじゃないか。可愛いやつだな、もう少し舐めてやるよ。どこが気持ちいいか探してやる」

 顔を這う河出の舌と息にくらくらした。吐しゃ物の味もにおいもしなかった。


「口も弱いのか」

 河出はそう言って、俺のあつく閉ざした上唇を舌で触り、無理やり開かせた。あとで初キスとか思ったけど、頭がドロドロに溶けてしまった。

 歯の根元をくまなく触り、舌を吸い付くす。奥を攻めたて指で乳首をなぜた。


「いやっ」


「エロい声出して、口がとろとろだぞ」


「俺は」


「俺はホモじゃないってか? 俺がお前を育ててやる。乳首を触ったくらいでがちがちになって」


「違う」


「違わない。いくふべ、お前モテないだろ。ちゃんと俺の味を教えてやらないいとな」

 俺のがちがちになったそれを服の上からそわす。やばい、でそう。


 握力が急に無くなった。俺の体に身を預けてグーグー眠っている。


 ホッとしたが、どうにも収まりがつかないので、トイレで致した。悔しいけど、不完全燃焼ふかんぜんねんしょうの自慰行為だった。自分はホモでは無いと思っていたが、こんなにすんなり受け止めてしまった。


 でも、あんなされ方ないだろ。


 河出が寝ている間にノートを見直した。

 行為の特徴とくちょうを書いてあったが、本当にホモにされる前に俺は逃げると記されていて、そこからは白紙のページだった。


 見直すと逃げると書かれた下に『尚、当の本人は夜のことを覚えていないが、酒を飲ませると思い出すので、ちゃんと最後まで致したかったら酒を飲ませろ。さらば』と書かれている。


 予備校でも悶々もんもんとしていた。コロッケを買い忘れたのも、乗り過ごしたのも、全部アイツのせいだ。認めてしまうと腹立たしい。アイツの手を俺のでドロドロにしたい。でも、ビールは買えるだけ買った。

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