第6話 トラブルメーカーしし唐でやらかす

 焦げ臭い、そう思ったのは部屋に帰ってきて、そろそろ半額の焼きさけを食べようとしている時だった。さすがに昨日の今日なので、また焼いているなと思った。だが、けたまましい警報音けいほうおんがした。慌てて隣の部屋の扉を叩いたが、反応が無かった。


 すぐさま救急車と消防車を呼んだ。


 レスキューは扉を破壊し、隣人宅に突入した。中にはビール片手に眠そうにした男がししとうを焼いていたという。念の為に救急車に乗ったが、軽度の一酸化炭素中毒いっさんかたんそちゅうどくで病院に搬送はんそうされた。


 レスキューは冷静にしし唐を鎮火したそうだ。

 消防士が帰ってしまった。代わりに警察官が来た。自宅で冷えた鮭を食べようとしたら隣から煙がと説明すると、事の顛末てんまつを警察官がきかせてくれた。


 どうやら河出は、大量のしし唐が手に入り、後輩を呼んだが来なかった。仕方なく室内にバーベキューセットを置いて、しし唐を塩コショウで焼いていたらしい。食っているうちにビールを飲みたくなり、少し飲んだら記憶が無い。お願いします。大家は呼ばないでください。


 話している警察官の口がぷるぷる震えていたが、問題のある住民らしいので早めに引っ越した方がいいと言い、帰って行った。去っていった方から大きな笑い声がした。


 そうだ。対策ノートだ。部屋に戻るとすぐに手に取った。中には隣人がありとあらゆる方法で火を起こすので、そういう状況になったらコロッケで釣るか大家に連絡するぞと脅迫きょうはくせよ。

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