第5話 謝らないが気にしていて可愛い奴だ

「あの子のことだから謝らないだろ」


「はい、全く」


「七輪と炭を何度取り上げたことか。私の妹の息子なんだよ。下宿したいと言ってきたが、一人にしておくと心配だから面倒みてくれってね」


 ご両親が思う以上に重症かと思います。


「隣に聞けというには難はあったね。ただここ安いだろ。変なのが寄り付くんだよ。あとで対策ノートをやる。ポストに入れておくから参考にしな」


 すごく暗くされたまま予備校に行った。ほうけてしまって、幾度いくどか怒られた。食材を買わないといけないことを改札の前で思い出した。水道の開栓かいせんは昨日、騒動のあとに済ませた。入居書類に入っていたのだ。


 遅い時間のせいか総菜そうざいコーナーにはしなびた焼き魚くらいしか無かった。牛乳と米は必要だろう。重いよな。不便だな。秋刀魚もあった。見るだけでイライラする。さばにした。


 家具がついている物件で良かった。今朝起きた時に冷蔵庫やエアコンがあることが分かった上にユニットバスがついていることにも気づいた。三万円でこれなら、いいじゃないか。少し涼しい夜に風呂に入ろうとしたが、水しか出なかった。


「あ」

 朝、部屋を出ようとしたら塩顔の青年が隣からでてきた。


「おはようございます」


 そういったが河出は二つある手前ではなく、向こうの階段を下りて行った。

 なんだ、気にしているのか。可愛いやつめ。そう思っていた僕はえらい目にあうことになる。

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