第24話 慎也

 俺は生きるのが上手い。


 今までそう思っていた。

 わりと頭の回転は速い方だと思うし、コミュニケーション能力だって申し分ない。そのおかげかいつも周りには誰かがいた。


 だから勘違いしていたのだ。

 自分は他人のことをよく理解している、と。

 そして自分も皆に理解されて当然だ、と。


 だが、あかりと入れ替わって、そうでないことを痛いくらいに実感した。

 今までの自分はまるで阿呆だった。

 女子として生活するのは想像よりも遥かに大変で、身だしなみから所作、立ち振る舞い、言葉遣いまで全てに気を遣わなければならなかった。

 そのストレスからあかりに強く当たってしまったことは今でも後悔している。

 彼女も彼女で毎日懸命に乗り切っていたに違いないのに。


 そして何より、衝撃的だったのは和樹が自分に恋心を抱いていたと知った時だった。

 親友だと思っていた彼のそんな事実は認めたくなくて、頑なに目を逸らそうとした。

 男が男を好きになるなんて正直馬鹿げている。あり得ない。そんなふうにさえ思った。

 でも、彼自身の口から本心を聞き、その眼差しを間近にして、自分の愚かさを知った。

 親友に悟られぬよう恋心を隠す彼の方が自分なんかよりもよっぽど強くて、大人だった。

 柚香にしたってあかりにしたって気遣いに満ち溢れている。今までそんなことにすら気づけなかった。

 もし、入れ替わらなかったら、きっと今でも、相手を理解した気になって勝手に自分本位の考えを押し付けていたに違いない。


 ──だから、俺はもっと知りたい。相手を、自分を。

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