第47話 紛れていた討伐依頼書
「依頼を受けても、討伐した証拠――つまり
「で、でも、魔獣がいなかったのなら、それはいいことなのでは? 魔獣に困っていたから、討伐依頼が出されてたわけでしょう?」
「そりゃ、依頼主としてはいいことなんだろうな。金を払うことなく、魔獣が消えてくれるんだから」
「デスヨネー」
「だが、俺らや
「……デスヨネー」
魔獣はこの国にとって害でありながら、経済活動の一端を確実に担っているようだ。
(これだと、街の近くにいる魔獣を魔獣人化させるのはまずいかも。
手当たり次第に魔獣人化するべきでないと判断した。
(それに街の近くにいる魔獣の場合、吸収する様子を通りすがりの誰かに見られる危険があるし)
「なぁ。えぇと、コリンだったか?」
「呼んだなの?」
「あんた、その仮面をつけてるんだから、上手く
すみません!
「あの、大丈夫ですよ。他の
「うん? なんでそんなことが、あんたに分かるんだ?」
『私たちが現場に行きさえしなければ消えません』……なんて言えるはずがない。
「……勘、ですかね」
「なぁ、頼むよ」
マスターは私の手首を掴むと、
(ぎゃあ!)
「これを全部引き受けてくれたら、報酬に色付けてやっから」
(あぅう……)
(仕方ない)
勿体ないが、今日手に入れる
それがせめてもの罪滅ぼしだ。
(パティが知ったらキレそうだけど)
(あれ?)
束になっている
『
添えてある絵を見ると、柴犬に似てる気がする。
(
恐らく、私のランクでは受けられない依頼なのだろう。
マスターにこの依頼書だけ返しに行こうとして、足を止めた。
(……柴犬。てことは、ディーンに似るかな?)
私は『けもめん』のキャラクターの一人を思い出す。
活発でツンデレで、好戦的な少年。
イベントのたびに先陣きって大暴れする『けもめん』における特攻隊長だ。
アクティブで動かしやすいキャラのためか、二次創作でも大人気だった。
(なるほど?)
私は依頼書を懐に入れる。
(……やるか)
荷物の中にある、パティから預かったパーカーとパンツ、ネックゲイターを確認した。
(魔獣人化させる一体以外は普通に討伐すれば、大丈夫だよね?)
無傷で手に入れた赤い
距離があるため、例のごとく魔獣人である彼らにおんぶで運んでもらうこととなったが。
(え~っと……)
『自分を選んでくれ』という期待に満ちた眼差しが二組、私に注がれる。
(気持ち的には、やっぱりレオポルドなんだけど……!)
広い背中は安定感があって頼もしい。
何より、最推しの姿をしている。
が、身軽な彼は何の疑問も持たず樹上へと駆け上ってしまう。
あれが怖いのだ。めちゃくちゃ怖いのだ。
「今日は……」
私はコリンへと目を向ける。
彼の肩幅は細く、魔獣人でなければ潰してしまいそうな儚さだ。
けれど彼のパワーは、これまでの戦闘で十分な信頼に繋がっていた。
(ごめんね、レオポルド)
浮気するような後ろめたさを感じながらも、私はコリンに歩み寄る。
「コリン、お願いできる?」
「わはぁ、嬉しいの! 任せてなの!」
「……!」
(だから、そんなショック受けた顔しないで、レオポルド。あぁ、胸がキリキリする)
「ぎゅおおおおおん!!なのー!!」
(ぎゃあぁああぁああぁああーーっ!!!)
はしゃぎつつ全力で疾走するコリンに背負われた私は、心の底から後悔していた。
そう、彼の足は間違いなく地についている。
だが、スピードはレオポルドを上回る。
バナナボートに乗せられ、ジェットスキーに海上を引きずり回されたことを思い出した。猛スピードで進むものにまたがり、我が身を支えるのは自らの両手だけだったあの時のことを。
しかもコリンの華奢な背や肩は密着度が低かった。
(たーすーけーてぇええ!!)
今後は一日で無理に依頼を片付けようとせず、他の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます