第二章
第21話 3人での再スタート
それは夜半まで続いた。
「なぁあ、アリス。考えなおしてぇな」
控えめなノックの音と共に届く、扉の向こうからの女の細い声。
「ウチも調子乗ってた部分ある。それは認める。一文無しで困ってるアンタに借金借金てせっついたんは意地悪やった。あと着服しようとしたのもアカンかった、ほんまごめんて。せやから、お別れとか言わんといてぇや。一緒に仲良ぉしていこうや、な? 気に入らんところあったら直すから、なぁ。ウチを捨てんといてぇ……」
(彼氏から別れを切り出されたメンヘラ彼女か!?)
「アリス」
「いいよ、レオポルド。放っておこう」
私は布団を頭まで被る。
「明日からは、自分たちでやらなきゃいけないこといっぱいあるんだから。寝よう」
「分かった」
「アリス、おやすみなの」
「おやすみ、コリン」
パティと部屋を分けた私たちは、眠りに就くことにした。
「なぁ、アリスて。聞こえとんのやろ?」
「うるせぇ! 眠れねぇじゃねぇか!! 痴話げんかは外でやれ!!」
どこかの部屋からの怒鳴り声で、扉を叩く音が止まる。
(痴話げんかじゃないって!)
やがて階段を上がってくる足音に続き、『金の穂亭』マスターのぼそぼそぼとした声が聞こえて来た。
「パティ、他の客から苦情が来ている。もう部屋に戻ってくれんか」
扉の前から人の立ち去る気配、そして扉の閉まる音。ようやく宿は静けさを取り戻した。
(はぁ……。夜が明けたら別の宿を探そう)
大金に替えられる、無傷の
「えぇと、今日の依頼は」
私は、『金の穂亭』を出る前に掲示板から引っぺがしてきた依頼書を確認する。
『
『
『
(
「ここから近いのは。
「了解した」
「わかったなの」
(あっ)
言って、コリンの様子を慌ててうかがう。
だが、コリン私に無邪気な笑顔を返す。
「ねぇ、コリン? もしかして、
「ボクが? どうして?」
「だって、コリンは
「ううん、気にならないなの! だってあれは
「じゃあ、問題ない?」
「はいなの! 見て見て、姿が違うなの!」
そう言うとコリンは両手を大きく広げ、体を見せつけるように私の前でくるくると舞った。
「本当だ、全然違うね」
コリンの愛らしいステップにほっこりしながら、私はうなずいた。
(すごい……!)
イハバの森の中。
レオポルドの戦う姿は、いつもながら感動を覚えるほど美しい。
緑の間を黒い影が駆け巡り、移動するたび砕かれた
一方、コリンはと言えば見事な足技を見せつけてくる。
素早さが特徴の
だだだっと力強い足音の後の跳躍、そして
この時のコリンの表情は、いつものあどけなくも愛らしいものとは違う。戦う獣の顔をしていた。
「
「討伐対象が前より強い魔獣になったのに、二人とも余裕だね」
「当然だ。あの程度、自分の敵ではない」
「いっぱい遊べて、とっても楽しいなの!」
「あはは、頼もしいなぁ」
そう言えば、今回討伐対象だった
(コリンに魔獣を吸収する能力があるのかと考えたけど)
コリンに吸収された魔獣は、完全な形の
(今日手に入れられたのは、数千カヘに変わる砕けた
あの、完全な形の
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