勇者の夢 第12話
魔王城に潜り込んだ勇者は周囲を見渡して、誰も居ない事が共有でアランに伝わると共有は解除され、その少し後に『隠密』も解除された。
勇者は聖剣を抜いて、周囲を警戒しながら魔王城内を進んで行った。
魔王城はとても広く、そして魔族がほとんど見当たらなかった。
勇者は途中で迷子になりながらも全ての部屋を見て回った。
途中で扉を守っている1人の魔族が、魔族語で何かを言いながら攻撃して来たので倒し、そいつが持っていた鍵で扉を開けると、そこには地下に続く階段があって、その先にある扉からは大量の魔力が溢れ出ていた。
勇者はそれを見て魔王はその部屋に居ると思い、引き返してその場を後にした。
最後に一番奥の部屋の扉を少し開けて警戒しつつ確認しようとした時、中から特大の氷柱が扉を破壊しながら勇者を襲った。
咄嗟に構え直した聖剣で運良く受け止める事に成功し、途中から『聖剣化』を発動させて、その氷を破壊しながら勇者は(今さら逃げる意味も無い)と思い、部屋の中へ入った。
そこに居たのは、勇者が日本の高校に通っていた時のクラスメイトの女子だった。
さらに勇者は、ついいつもの癖で使用した『鑑定』で見てしまった。
その人に表示された職業は魔王だった。
お互いの顔を見た勇者と魔王は驚愕すると同時に日本での出来事が思い出され、苦しんだ後に2人の『忘却』の文字が消えた。
『鑑定』レベル10(MAX)
勇者 男 人間
スキル『火3』『水8』『風5』『シールド8』『回復4』『剣術8』『身体強化5』『鑑定6』『他言語理解(人語)10』『カウンター2』『アイテムボックス8』『聖剣化』『運命』
ステータス スピード、スタミナ、魔力が高い
HP、攻撃力、防御力が低い
武器 聖剣
状態 『制限』
魔王 女 魔族(元人間)
スキル『水10』『氷7』『シールド6』『回復4』『剣術8』『身体強化5』『察知2』『他言語理解(魔族語)9』『鑑定6』『魔剣化』『運命』
ステータス HP、攻撃力、スピード、魔力が
高い
防御力、スタミナが低い
武器 魔剣
状態 『制限』
わずかな時間が過ぎて、互いに記憶の整理がつかずに戦いは始まってしまった。
魔王は泣きながら魔剣を握りしめて『身体強化』と『魔剣化』のスキルを使用して、勇者に剣を振るう。
勇者も、わずかに遅れながら『身体強化』と『聖剣化』を使用し、それを受ける。
魔王「どうして私の幸せを奪ったの!、あの子達を殺したの!」
勇者はその一言で今の現状を、自分のして来た事を理解したが、それを受け止める事ができずにただ(死にたくない)という生存本能だけで魔剣の攻撃を受け続け、魔王に返すべき言葉が何も浮かばなかった。
魔王は怒りの感情のままに、勇者は魔王に合わせるように全力の剣術で争った。
戦いの途中で魔王は後ろへ跳んで距離を取りながら氷の魔術を使い、大量の氷の刺が豪雨のように勇者に降り注いだ。
勇者は『シールド』で守るがすぐに破壊されて、咄嗟に頭を庇った手の甲や腕全体、体から足に至るまで、『氷』の刺が全身に刺さる。
全身の痛みを耐えながら『回復』を使用するが、痛みが少し和らぐだけで『氷』の刺が無くならないので、完全に治す事ができずに苦痛は続いた。
最後の氷魔術を放った魔王は剣を構えた。
そして全ての氷魔術が勇者に当たるか通り過ぎた時、魔王は勇者に突進し、全力の一撃を振るった。
その魔剣は勇者が時間を稼ぐために再発動させた『シールド』を軽々と破り、勇者へ迫る。
勇者は痛みを我慢して体を動かし、その魔剣を受け止めるために交差させるよう自身の聖剣を縦に振るって衝突した。
すぐに魔王は魔剣に自身のほぼ全ての魔力を送り込み、最後の一撃とした。
勇者もその攻撃を防ぐために、同様に魔力を送り込んだ。
相反する強大なエネルギーのぶつかり合いで魔王城の壁や床に亀裂が入った。
互いにほとんど互角の力だったが、急に魔王の力が抜けて魔剣に込めた魔力が尽きた。
魔王の『身体強化』が切れて弱体化したのだ。
勇者の聖剣は、抗う魔剣の力が急に無くなってしまい、動き出した勢いで魔剣と魔王の体を切り裂いてしまった。
魔王は血を流し、その場に倒れた。
同時に勇者に刺さっていた『氷』が消滅し、勇者の『カウンター』で発動された『回復』と発動途中で中断されていた『回復』の続きが強制発動して、勇者の体の傷はすぐに治った。
直後、勇者の『身体強化』が切れて弱体化した。
勇者は聖剣を落として屈み、魔王に手をかざす。
魔王の体から流れる出る血液がひび割れた床を染める。
勇者はすぐに『回復』を使用するが発動しない。
なぜなら先程の魔術で、勇者に残っていた魔力を全て使い果たしてしまっていた。
勇者はそれでも、使えない『回復』を使おうとし続けた。
すると何度目かの時に『制限』にひびが入り、さらに続ける度にそのひびは大きくなり、そして『制限』は砕けた。
一気に溢れ出す魔力が勇者の願いを叶える。
魔王の体が、折れた魔剣が、傷ついた魔王城が、まるで何も無かったかのように全て元に戻った。
しかし、それでも魔王は目覚める事は無く、無傷のまま体は冷たくなった。
勇者は悲しんだ。
今までの全てを後悔した。
涙を流し、両手の拳で床を叩いた。
その衝撃は魔王城全体にヒビが入る程だったが、勇者の溢れ出す魔力がすぐに直してしまった。
しばらくして、自身を無理やり落ち着かせた勇者は聖剣を鞘に収め、魔王を優しく抱き上げて魔剣と一緒に『アイテムボックス』に入れ、部屋を出る時には2人が戦った形跡は何一つ残っては無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます