勇者の夢 第11話

ルーク、マナの死亡を視認した勇者達は一瞬緊張が和らいだその時だった。

魔王城の上空を飛んでいた1羽の鳥の魔物が大きな鳴き声を上げた。

それを合図に勇者達の居る広場周辺の建物と魔王城に潜んでいた魔法士の魔族達が、入口や窓から姿を現して勇者達に向けて『火』や『風』の魔術が集中砲火された。

その内の魔王城の入口から出てきた魔族は大きな盾を持った者達を先頭に後ろに魔術士達が居た。

ラストの『シールド』は間に合ったが、大量の魔術が『シールド』を攻撃し続けていて割られるのは時間の問題だった。

クイネは即座に一番数の多い、魔王城の反対方向に居る魔族達に向かって、全力の『火』魔術で建物ごと攻撃し、さらに『火』魔術を魔王城以外の場所に放ち続けた。

レインは仲間全員に『回復』魔術を使って、受けた傷や疲労を癒した。

ホルスも小さくはあるが『風』の斬撃をマナを真似て作り出し、魔王城の窓から顔を出している魔族を狙って倒した。


少しして勇者達へ放たれる魔術の数は減ったが、ラストの『シールド』はもう限界が近付いていた。

ラストは自ら『シールド』を解除して、同時に勇者が時間稼ぎの『シールド』を発動させた。

仲間達は勇者から少し離れ、背を向けて囲むように立ち、勇者は隙を見て『シールド』を解除し、すぐにラストが再び『シールド』を発動させた。

同時にアランとホルスは目を閉じて何かに集中し初め、しばらくして2人共に目を開いた。

放たれる魔術も少なくなった頃合いを見て、ラストは『シールド』で周囲を包むのを止め、アランと共に『身体強化』を使用し、魔族達の元へ向かって行った。

残った3人でクイネが『シールド』で周囲を包み、レインがいつでもアランとラストに『回復』を使えるように待機して、ホルスが向かって行った2人が討ち漏らした魔族を『風』魔術で攻撃していた。

その場に勇者の姿は無かった。


勇者は事前に仲間達との相談で、「少しでも早く魔王を倒して王国の人達を救いたい!」と意見を言って話し合った結果、全員で魔王城に入るのが困難な状況で、勇者が居なくても安全と判断した場合のみ「先行捜索」という形で、アランの共有やホルスの隠密の協力の元、1人で魔王城に入って魔王の居場所を探す事が許されていた。

ただし、1人で魔王とは戦わない事が条件だった。


勇者は仲間達に周りを囲むように立って貰い、できる限り魔族達の視線を遮った状態で、ホルスが『隠密』を発動させた。

そして勇者の『シールド』が解除されて、ラストの『シールド』が発動されるまでの僅かな時間で、勇者は仲間の間を通り、『身体強化』を使って全速力で走り、飛んで来る魔術をアランが勇者だけに集中させた共有の『察知』を利用し避けて、どうにか見つからずに魔王城に入る事ができた。


『統率』(共有)の[隠し効果]

一時的に共有する相手を1人に絞ってさらに集中する事で長距離間での共有を可能にする事ができた。

(アランの挑戦と研究の末に発見した)


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