勇者の夢 第6話
バレットとバーンとの戦闘から数日が経った。
いつものように勇者達は魔王城へ向けて森の中を進んでいる。
しかし、勇者は魔族2人との戦闘で魔族と戦う事への疑問を抱いていた。
(私はバレットを剣で刺して、バーンを絶望させた。)
魔王を倒すためには必要な事だったのかも知れないが、少なからず罪悪感があった。
2人と会話したホルスから、アランの『統率』を通じて伝わってきた雰囲気はあまり悪い存在には思えなかったが、自分がどんな行動をとっていても戦闘は避けられず、どちらかが全員倒れる結果にはなっていたと思っている。
そんな時、勇者は王国の人達から聞こえた魔族被害の声を思い出して「自分の行いは正しかった」と自身に言い聞かせる事で、それ以上考えない事にした。
ある日、勇者達は砂漠地帯の入り口に差し掛かった。
勇者の行きたい方向は砂漠の向こう側で、砂漠の中を進もうと話すがアラン達に止められた。
そして、砂漠の外側(森と砂漠の境目のような場所)の森の中を回り道しながらアランが母親から聞いた昔話を聞かせてくれた。
昔々、人間は魔族と何度も争っていた。
その頃の魔族は今のように魔術を使わず、純粋な暴力と溢れる生命力で戦う、魔物に限りなく近い種族だった。
人間は今のような聖剣などの優秀な武具を持っていなかったが、魔力で武具を強化して扱っていた。
何度目かの争いで魔族側の援軍により人間側が劣勢になると人間達の中から飛び抜けた才能を持つ存在が現れる。
その人間は剣術と魔術どちらにも飛び抜けた才能があり、攻めて来た魔族を倒しながら兵士達を率いて森の中へ魔族との戦いに向かい、魔族軍の全軍を退けた後どこかへ消えてしまった。
後にその人間は勇者と呼ばれた。
ある時、再び人間と魔族は森の中の広い草原で争いを始めた。
すると突然その草原は広い砂漠へと変わり、両軍は消息を絶った。
その後に砂漠へ向かった者は誰一人として帰る事はなかった。
その場所は「死の砂漠」と呼ばれ、人々に恐れられた。
死の砂漠には、消えた勇者の呪いがかかっていると言われていて、魔族も魔物ですらその地には入ろうとしない場所である。
入れば最後、帰る事はできないとされている。
続けてアランは勇者の持つ「聖剣」についての話しをしてくれた。
王国の何十代も前の王様は凄腕のドワーフ族の職人と出会い、素性を隠して友好を深めていた。
その職人は近い内に旅に出ようとしていて王様は必死に引き留めるが叶わず、職人に「最後に何か武具を作ってやる」と言われた王様は、物語に出て来る消えた勇者が持っていた「魔力を流す事で光り輝き、頑丈になる剣」という作れるとは思えない物を答えて、職人に長くこの国に居てもらおうとした。
しかし5年後に職人は自身の最高傑作として、頼まれた通りの剣を王様に渡して王国を去ってしまった。
本人が付けた剣の仮名は「光剣」だったが、あまりの出来の良さに人々は(神の祝福を受けた聖なる剣)「聖剣」と呼んだ。
聖剣は人間の王様が国宝として代々受け継がれ、人間の魔力特性により黄金の輝きを放ち、王国の窮地を何度も救った。
ちなみにドワーフ族の現状は、人間と魔族の争いに対して中立を主張していて、誰でも報酬や素材提供の量や質によって武器や防具を提供してくれる種族で、魔族への武具提供をしている事に気付いた人間は止めるように話すが、逆に人間達への武具提供を止められそうになったので、「自分達から持ち込んだ素材を魔族に提供する武具には絶対に使わない」と言う契約を交わしている。
ドワーフやエルフは長寿命な種族で、鍛冶や魔術の知識をひたすら研究していて、はっきり言って自分達が生活できる位に稼げれば、それ意外はほとんど何も求めない種族。
そんな話しをアランから聞きながら勇者達は砂漠の周囲を迂回しながら魔王城へ向かった。
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