茅野先輩。

テストが終わり、仮入部という形でフォト部にお世話になろうと決めた。


「無理やり見学させちゃった形だったのに、どうして仮入部してくれたのかな?」


部活始まってすぐに、茅野先輩から質問をされた。


「えーっと....。」


この前写真を撮った時、凄く心が揺さぶられていたのは事実だ。それも一つの理由だと思う。


だが、もう1つの理由として..


「綺麗なものが、撮りたい。そう思ったからです。」


綺麗なものは好きだった。


綺麗な空、自然が生み出す景色、人の笑顔。そういったものをもっと撮ってみたいと思った。


「うん!素敵だと思うよ!!とっても。」


そう言って茅野先輩はあたたかく迎え入れてくれた。


「戸琵さんはまだ仮入部になりますが、改めまして副部長をしています都です。よろしくお願いします。」


彼女の顔は少しほっとしていた気がした。


「さて、今後の予定について伝えておきたいことがあります。」


「なんでしょうか?」


真剣で、少し悲しそうな、寂しそうな、そんな雰囲気で茅野先輩は話し始めた。


「私は、進学希望をしています。ですが、あと少しでも多く部活に顔を出していたいと思っています!そう思っているものの....少し難しくなってしまいそうで....。」


そうか、2年生の俺たちにとって茅野先輩は3年生。


そう、受験生という事を意味していた。


「私は、人を撮ること、私の周りの素敵な笑顔をしてる人の写真を撮りたくて、フォト部を作ろうと思って都ちゃんを誘ってやっとの思いで出来た部活動で!

戸琵くんが仮入部って形で参加してくれてるって言うのは重々承知の上で、この部活動を2人に任せたいなと...。」


茅野先輩は、先輩と彼女の2人で立ち上げたこの部活動を残したい。そう強く感じでいるのが伝わった。


彼女も、茅野先輩も。


このフォト部というものにとても思入れがあるのだろう。まだ何も知らずにこの学校に来た俺に部活を託するくらいに。


「先輩、私に任せてください。いえ、私達がしっかりと継ぎます。ですので、勉学に励んでください!」


やっぱり、カッコイイ。


俺なんかよりずっと、頼もしい背中だ。


「茅野先輩。俺、仮入部って形で参加してますけど、入る前提だったんです。本当は。」


少し盛ってしまったかもしれない。でも、フォト部は俺を温かく迎え入れてくれた。


それだけで入りたい理由には十分だ。


「戸琵君、それは本当に..??」


「はい。」


「ありが....とう...。」


そう言った先輩は、泣き崩れてしまった。とても喜んでいた。とても安心していた。


何か気にしていることでもあるのだろうか...。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る