第14話 幼年学校に入学
お母様とメイドのメルシーを連れて学校へ徒歩で移動する。
王都くらい広い場所で上級貴族であれば馬車だし、寮もあるのだろう。
しかし、ここは地方都市、それも辺境といわれるマリアランド辺境伯。
家から普通に徒歩通学でした。ちゃんちゃん。
「行ってきます」
「いってらっしゃい、おエル姉様」
「行ってくるね、カメル。リリーちゃんカメルをよろしく」
「お任せください」
まだ小さいリリーちゃんにカメルをお願いする。
もちろん苦笑気味にリーチェさんが後ろについている。
リーチェもお留守番で監視してくれる。
メルシーは私と一緒に補助をしつつ学園に通う。
メルシーの家も貴族ではないけれど、文官職なので公務員だから、高給取りの家のほうなのだそうで、家に帰ればお嬢様らしい。
今日は入学式なのでお母様も同行している。
学校に到着すると領の子供たちが集まっていた。
受付を済ませ大講堂に移動する。
そこで入学式をした。
親に手を引かれている子や、泣きそうな顔の子などもいて見ている分には楽しそうだ。
「起立、礼」
みんなで頭を下げる。
ずらっと並んだ教会みたいな長椅子にみんなで座る。
上級生が歌を歌ったり、先生たちを紹介したりと、進行していく。
そういうのは日本の学校とそれほど違わないような気がするな、などとぼんやり眺めているうちに終わってしまった。
「それでは、教室に向かいましょう」
クラスは三クラスだろうか。
これが多いのか少ないのかは、正直判断できない。
領都全体でこの人数なら、日本の小学校と同じくらいの規模感に感じられる。
ただしこちらのほうが年齢は九歳から十二歳までなので、ちょっとみんなお姉さんのはず。
でも、なんだか自分は前世があるせいか、周りの子が幼い子のように感じられる。
「ふっ」
「どうしました?」
「あ、なんでもない」
ちょっとお姉さんぶってしまった。
危ない危ない。
変な雰囲気とかしてると男子に言い寄られても困るし。
ちなみにメルシーはメイド服なので、けっこう目立つ。
ほかにも男爵家つきのメイドさんが一人いたので二人して胸をなでおろす。
変に目立つのは避けたい。
あと、げぇぇぇ。
偉そうな子爵家のぼっちゃんとおつきのメイドさんもいる。
ヤンチャなぼっちゃんにおどおどしているメイドさんだ。
明らかにメイドさんはぼっちゃんを御せていない。同じ年齢だから当たり前だけど、ちょっと可哀想だな、というのが今日の感想だった。
「なんだよ、お前、お澄まし顔して」
「え、何、私?」
「そうだ、お前、えっと」
「エルダ様です。ぼっちゃま。あの、失礼しました」
「いえ、別に大丈夫ですよ、メイドさん」
「そうですかぁ」
メイドさんが目にうっすら涙を溜めてホッとしている。
なんだか、守ってあげたそうなメイドさんだな、と思って見ている。
ところが私がメイドばかり見ているのが気に食わないのか、ぼっちゃんがですね。
「お前、なんか気に食わないな」
「そんなっ……」
私もちょっと悲しそうな顔をしてやると、ビクッとしてぼっちゃんも一瞬怯む。
あ、これ、ぜったい普段メイドさん泣かせて困らせてる奴だ。
どうしよう。困ったなぁ。
あれ、実はメイドさんが可哀想かと思ってたけど、逆に泣いて見せてぼっちゃんをコントロールしてる可能性もあるぞ。
メイドさん怖い。実はマジものか。
ちらっとメイドさんを盗み見しつつ観察してみるも、特に毒やわざとらしさは感じられない。
気のせいみたいだ。なんだ、本当にぼっちゃんに振り回されてるだけか。
ホッと息を緩ませる。
「まあいい……」
私が考え事をしたり、メイドさんをちらちらしているのを気味が悪いとでも思ったのか。
それとも何か感じられたのかわからないけど、無罪放免になったようだ。
ふぅ、助かった。
いちいちつっかかっておもちゃにされるのが一番面倒くさい。
どうせ実力なんてそのうちわかるだろうし、今は放っておいてくださいな。
「みんな、おはようございます」
先生がやってきて挨拶からはじまった。
「おはようございます」
「そうね。私が挨拶したら、みんなも挨拶するのよ」
「「「はーい」」」
特に何もなければみんな素直だ。
ぼっちゃんもちゃんと先生の話は聞いている。
分別自体はあるようだ。一応、感心しておこう。
手を付けられないほどの暴れん坊でなくてよかった。
「では、もう一回やってみましょう」
「「はーい」」
「みんな、おはようございます」
「「「おはようございます」」」
「うんうん、元気があっていいわね」
若い女の先生だけど、特に問題もなく普通に進んでいく。
こんなもんかな。まあ最初だし、こんなものか。
私は余裕で小学校の入学式を終えた。
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