第11話 木のパズル
冬の日。
冬の間は寒いので、家の中にこもっていることが多い。
窓ガラスが普及していないので、窓も閉めると家の中は暗い。
カメルも暇そうにガラガラを鳴らしたりして遊んでいた。
「そこで思いついたのがこれです」
「おおう!」
メルシーもびっくりしてくれる。
もちろんカメルも興味深そうに見ていた。
一枚の木の板をナイフで削ってパーツに分解していく。
そして外枠と後ろにあてる薄い板を接着剤でくっつける。
接着剤は
動植物由来の謎物質だけど、いいんだ。
「じゃじゃーん。木のパズルです」
「すごいですね」
「にゃはにゃは」
メルシーもなんだかわからないけどよろこんでくれた。
「まず完成系はこうね。これをひっくり返してバラバラにします」
「きゃっきゃ」
「それでこうやって並べていくんです」
「なるほど」
木の板を表裏を見ながら組み合わせていく。
すると一枚の絵になるのだ。
絵は子供が三人遊んでいるデザインにしてみた。
もちろんモデルは私、カメル、メルシーの三人。
絵も適当なので似ているかといわれるとわからないと思う。
「あら、新しいおもちゃ?」
「はい、お母様」
「どれどれ、私もやってみていい?」
「どうぞ」
「なるほど、木の板を組み合わせて元の絵にするのね」
「そうです」
お母様もやってくれる。
「できたわ」
「おめでとうございます」
「さて、カメルよね」
「はい」
「きゃっきゃ」
そして次、本命のカメルだ。
これは本来カメルのおもちゃなのだから、彼女が遊んでくれないと意味がない。
「にゃはは」
カメルに渡すとさっそく木をひっくり返して、ああでもない、こうでもないと並べていく。
なかなか頭を使うみたいで苦戦中だ。
そこで運よくパーツがくっつくところがあった。
「できた」
木の枠には二つのパーツが並んでいる。
その部分だけ完成したみたいだ。
「やったね」
「きゃっきゃ」
続いて他のパーツも、ひっくり返したり回転させたりと組み合わせていく。
大人だと頭の中で組み合わせをシミュレートするけれど、まだそういうのは難しいみたいで実際にやって確かめていた。
なかなか夢中になって遊んでいる。
「できた!」
「おお、すごいです。カメル」
「やったね。カメル様」
「やりましたね、カメル様」
「カメル、やったわね」
みんなで褒める。カメルもそれにきゃっきゃと応えた。
そしてまたひっくり返して遊び始める。
どうやら気に入ってくれたようだ。
「さて、どうするか」
「どうしたんですか? エルダ様」
「これ、量産しようかなと考えててデザインを」
「あぁそうですね。動物とかがいかかですか」
「いいね」
ということで次は動物をデザインしたものを考える。
牛、馬、馬車、羊、スライム、ドラゴン、ワイバーン、ハーピー。
ラインナップはこんな感じに。
それに足の間に草、動物の間に木のパーツ。太陽と雲とかも配置。
「いい感じですね、エルダ様」
「うん」
他の人は違うことをしているが、メルシーはずっと見守ってくれた。
たまに聞けば意見とかも言ってくれる。
「色も塗るといいんですけどね」
「色ですか」
「絵具は高価ですもん」
「そうですね。でも貴族に売るって考えたらそのほうがいいかもですね」
「そうね」
二人して採算ラインを考える。
これから色々作るなら、絵具くらいは欲しい。
スローライフだけれど、工作とかも好きなのだ。
「よし、色を塗ろう」
「そうですね」
「あ、でも子供に安全かどうかは考えないと」
「毒の絵具があるのですか?」
「うん……たぶん」
そうなのだ。絵具は鉱石などが多い。
中には毒素が含まれているものがある。
「色は保留で」
「そうですね」
「あ、草木染ならいいかも」
「草木染ですか?」
「うん。ほら赤い花とか青い花とかあるじゃない?」
「ありますね。それを使うんですね」
「そういうこと」
ということで来年の目標に、草木染の染料集めが加わった。
これはたまに忙しくなるぞ。
「でも、それは来年の冬に作業するとして、今年は木のパズルだね」
「そうですね。エルダ様」
ということで私とついでに見てるだけだと暇そうなので、メルシーにもナイフを持たせて木のパズルを削っていく。
本当は電動のこぎりとかで切ると楽なんだけど、そんなものがあるわけがない。
これだから転生者はとか言われる前に、そもそも秘密にしてるけど、そっと考えを改める。
「ふんふんふん」
ナイフで木を削っていく。
こういう単純作業も嫌いではない。
失敗したらショックだけど、なるべく慎重に。でも素早く。
そのバランスが重要で、早すぎて雑でもよくないし、遅いのもよろしくはない。
それから一週間。
ポーション作りの時間を除いて、暇な時間はパズルを作っていた。
木の板はなるべく薄いものを使って、ナイフで削るのが楽なようにしている。
そして鉄のヤスリで角を取っていく。
手で触れるものなので、トゲがないように十分削る。
こうしていくつものパズルが完成した。
全部、同じデザインにしたけど、手作りなので少しずつ曲面とかが違って、他の部品ではくっつかない。ワンオフ品だ。
お母様のお茶会で紹介してもらい、金貨数枚くらいの値段で売れていった。
他の貴族の家でも小さい子供がいる家中心に販売された。
中には十歳くらいの子の家でも、気に入ってくれて買ってくれた方もいたそうだ。
私は鼻を高くして、このパズルの成功をよろこんだ。
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