第10話 ポーション店
私はおままごとはしない。
なぜなら、それよりもポーションを作る方が楽しい。
「メルシーちゃん、今日もポーションを作りましょう」
「はい、エルダ様」
メルシーを従えて、小型の魔道コンロでぐつぐつとウィークリー・ハーブを煮る。
毎日、街へ繰り出しては、ウィークリー・ハーブをその辺から調達してくる。
けっこう道端などによく生えている。
さすが最強の雑草だけはある。
その生命力がポーションの効果を生むらしい。
群生している場所も何か所か確認している。
今日はもう午前中のお散歩でハーブをゲットしてきたので、午後から調薬作業だった。
「空き瓶も手に入るようになったしね」
クライシス診療所で使い終わったポーション瓶を回してもらっていた。
このポーション瓶、実はちょっとした魔道具で中身を新鮮なまま保つように魔法陣が裏に描かれている。
大した効果はないらしく、気休め程度とはいえ、ポーションの使用期限が伸びるとされている。
ゆくゆくはこのポーション瓶も作ってみたいけれど、まだまだ先だろう。
「ぐつぐつ♪」
「ぐちゅごちゅ~♪ ぐちゅごちゅ~♪」
今日も私、カメルの二人とも飽きずに沸騰するビーカーを眺めていた。
濃い緑色なので、そろそろ火を止める。
今度は冷ましながら青くなるのを待つ。
この青くなるのはどうやら空気中から魔素を吸収しているらしい。
なんとなく魔力や魔素の流れを感じられる体質なので、最近わかってきた。
ビーカーで完成したら中古のポーション瓶に移し替えてマジックバッグへ。
クライシス診療所に向かう。
「マクラン先生、本日も持ってきました」
「おおう、見るよ」
毎日少量だが卸している。
マクラン先生は他からも取引があるものの、量としては不足気味だったので、他の取引量を減らして対応しているみたい。
「エルダ様のポーションのほうが長持ちするからね」
「そうなんですね」
「だから、エルダ様の分をメインにして、足りない分を買い付けてるんだ」
「へぇ」
マクラン先生様様だ。
いっぱい作っても買い取ってくれる人がいないと意味ないもんね。
「毎日、一本、飲んでるかい?」
「はいっ」
ポーションは卸しているだけではない。
毎日、お風呂上りにスポーツドリンクよろしく一本飲む。
これは家族全員が実施していることで、これを始めてからみんな風邪などになったことがない。
効いているのかいまいち不明だけど、元気なので大丈夫だろう。
味もちょっとだけ青臭いだけで、飲みにくいほどではないので、平気だ。
「そうだ。オレンジ味にしよう」
「エルダ様、それは名案ですね」
メルシーもおだててくれる。
庭には三年物のオレンジの木が生えている。
いくつかオレンジの実がなっているのだ。
だいぶ黄色く色づいてきたので、そろそろ収穫時だろう。
スキップしながら家に帰る。
「それじゃあさっそくオレンジの収穫です」
「やりましょう」
リーチェにも高い場所をお願いする。
私たちは下の方になってる実を収穫する。
ハサミで実のすぐ上をチョキンと切る。
「はい、採れました」
カゴ一杯くらいにはなった。
「ポーションに入れてみましょう」
家にはいくつかポーションの在庫がある。
今晩の分とそれから予備だ。
オレンジを絞り器で潰して汁をポーションに入れていく。
青い液体が汁に反応して、ピンク色に変色していった。
「あっ、色が変わっちゃったけど大丈夫かな」
「大丈夫だといいですね」
「そうですよね」
みんなが心配して見守る中、とりあえずできたポーションを眺める。
行ったり来たり大変だけど、またマクラン先生に見てもらうことにした。
診療所に行って、試してもらう。
試飲は無料にした。人体実験だしね。
患者さんは無料だと知ると同意してくれた。
「うん、オレンジ風味でとってもおいしいよ。いいねえ」
「ありがとうございます」
「傷も治ったかな。問題ないみたいだ」
オレンジ味のポーションは特に問題なく効果があった。
色がピンクなのはびっくりするけれど。
「そうだね。患者さんには説明して好きな方を飲ませてみるよ」
マクラン先生はそう言ってくれた。
なるほど、自分で選択できるのか。
それから毎日、先生の所にオレンジのポーションを納品した。
「今のところ順調だよ。オレンジ味も人気でね」
「そうですか。よかったです」
ほっと胸を撫で下ろした。
よかったよかった。
こんな感じに毎日ポーションを作っている。
名付けて「エルダのポーション店」なんてどうじゃろ。
いいよね。えへへ。
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