紙の書籍が世界から消える。それは現代の私たちの時代でも起きていること。強制でもなく政府や世界の陰謀でも弾圧でもない。それは時代の流れ。人はその波や流れに逆らえない。流れは冷たくもなく。便利が背中を押してくれるから。そして自身の存在価値やライフラインはすべての端末に集約される。そんな時代の中で生きる。小説を書く。いや書いて来た彼女。彼女の残した痕跡は紙の本とともに無用の烙印を押され。つまりは絶版。そして書店で他人の本を売る仕事をしている。そんな彼女の作品に出会いファンになった主人公。失われた書籍は彼の心に。まだ生きている。消えゆく。失われる時代に。忘れえぬ人。その思い。非常に端整で簡潔で読みやすい。それゆえに物語や心情が読み手の中で深く残ります。ぜひお読み下さい。おすすめしたい作品です。