第5話

 本屋の中央に彼女はいた。どうやら、石井さんはスクリーン上をタッチしたりして、本棚のメンテナンスをしているようだ。


 そしたら、ぼくに気がついてくれた石井さんが、店内からこちらに向かって、パネル越しだけど、手を振ってくれた。


 広い店内へ入ると、彼女はぼくの話を聞いて。


「スマホを失くしたの? 嫌よねえ、それは……。あ、でも。紛失届けをだしたのなら、すぐに市の位置検索システムが作動するから」

「位置検索システム? それでも、見つからなかったら?」

「プッ! クスクス……。大袈裟ねえ」

「そうかな?」

「そうよ。すぐに見つかると思うわ」

「そ! それは良かった!」

「それまでここで働かないかしら? 店員さん少ないのはいいんだけど、本棚のメンテナンスとかもやらないといけないの。どうせ、ポイントがないでしょ。あなた」

「それはありがとう! って、この本屋の全部の本棚を?」

「そうよ……」

「あれ? あそこの本棚だけ何も映ってないや」

「ああ、故障しているの。でも、時々、人の声が聞こえるんですって……」

「へえ、幽霊でもいるのかな? それともグレムリン?」


 そして、ぼくと彼女の本屋でのとても奇妙な……そして、大変だけどバイト生活が始まった。


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スクリーン上の本棚から君へ 主道 学 @etoo

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