第4話 何もかも新しくなっていく
何もかも進んでいってしまって、ぼくは置いてけぼりの気分だよ。
時代という名の怪物の手綱を握っている人たちは、それでいいんだろうけれども。置いていかれてしまったものは、その怪物の手綱すら握れずに、いつも後ろを追いかけるように、俯いて歩かないといけないんだ。
そんなある日。
ぼくの持っているポイントが消えた。
無駄遣い?
本をたくさん買いすぎたから?
バイト先での人々と交流して疲れたから? 振り回されたから?
いや、どれも違うんだ。
ぼくがスマホをどこかで無くしたんだ……。
…………
市の管理システムに、ぼくはすぐに紛失届けをだしたけど、きっと、もう遅いんだ。スマホの紛失はこの時代では致命的だった。ポイントが消滅したも同じだ。ポイントがないと生きていけない。そして、ぼくの市民としての存在価値の消滅も意味しているんだ。
確かにスマホは、もう一人のぼく自身だ。
ぼくの持ち物で、ぼくだけしか持ってはいけない。
「スマホ……すぐに見つかればいいんだけどな……」
せっかく爆買いした電子書籍ももう読めない。
気に入った「春風と共に桜はすぐに散る」はまだ読んでいないけど、もう読めないのだ。
ぼくはそう思い。沈んだ気持ちで何気なく。あの本屋の前へと来てしまっていた。今じゃ店の壁は全て透明なパネル式なんだ。ぼくは自然とパネル越しから彼女を探していた。
本屋の中央に彼女はいた。どうやら、石井さんはスクリーン上をタッチしたりして、本棚のメンテナンスをしているようだ。
そしたら、ぼくに気がついてくれた石井さんが、店内からこちらに向かって、パネル越しに手を振ってくれた。
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