ファイル17 青の怪物
「やったー!!!お好み焼きだーーー!!!」
私の弟、蒼が水色の目をキラキラに輝かせた。
「もうちょっと高級なものでもよかったのに…」
私は少し、呟く
「え?なんか言った?」
「ううん!何でもないよ!」
私は嘘の笑顔を貼り付けた。
今からでも、泣ける。
そんな泣ける準備の出来ている私は今日、電脳特殊捜査隊第六課のメンバーと一緒にお好み焼きを東京のソラマチで食べることとなった。
私は蒼の明るいムードとは裏腹に、ユミーさんとの最後の昼ごはんになることを知っていた。
「MSRの前祝いにお好み焼きなんて…焼肉とかでもよかったんじゃないの?」
「え?まあ、そうだけど、えっと、やっぱ俺、大きい建物の下で食べたいからさあ?」
「そうなんだね」
私はよく分からない、蒼の理由にとりあえず相槌を打った。
東京スカイツリーのよく見えるこの広場は、私達の集合場所だ。
「にしても、そんなにユミーさん達とかと会いたかったの?」
「うん!あんまり、メールでしかやり取りしたことなかったし、ずっと会ってみたかったんだ!」
「へー。そうなんだね」
スカイツリーの柱の間から差す光に私は目を細める。
「にしても大きいね」
「そうだね。確か、電波塔の役割をしてるんだっけ?」
「この東京スカイツリーって機能しなくなったら、テレビ見られなくなるのかな?」
「まあ、多分そうなんだろうね。でも、大地震とかで、倒れることはほとんどないらしいけどね」
「へー。そうなんだ」
私は蒼の背中にかかっている、大きなリュックに目を遣った。
「あのさ、そのー蒼のそのリュックって何?だいぶ大っきいけど…」
蒼は自分のリュックを少し見てから
「これ?これは、秘密!」
「何よ、別に見せてくれたって良いじゃない」
私は少しキツイような言い方をふとしてしまう。
「え…で、でも……」
「あ、いや、そのさ、中身が気になってねー」
私は少し本音が出てしまったことに気づき、少し優しめの言い方で訂正した。
「あ、うん」
「え、えへへー」
少し、気まずい空気が流れた。
「おーい!Vー」
そんな気まずい空気の中、遠くからユミーさんの声がした。
私はその声を聞いて、少し目から何かが溢れたがそれを手で拭き取り、笑顔を顔にまた貼り付けた。
私にはこのお面がしっくりくるようだ。
ひょっとこのお面なんかいらなかったな…
「あ!ユミーさーん!!」
私は元気に手を振った。
彼を見れば、見るほど、これからの別れが、とても悲しいものになっていく…
でも、今日はそんなこと忘れたかった。
「あ!こんにちわVさん!えーとそちらは?」
ピンク髪のまつが、蒼の紹介を待っていた。
「こんにちわまつさん。この子は蒼って言います。蒼、挨拶して」
私は蒼に挨拶するように命じると、蒼はお辞儀をして
「こんにちわ、電脳特殊捜査隊第六課の皆さん。僕は蒼と言います。まあVと同じように、Dとでも呼んでもらっても構いませんよ?」
と言った。
私は急な態度の変わりように呆然とさせられた。
挨拶が決まったのか、蒼は赤い目をギラリと光らせる。
「えーと、V?」
「え、あ!ご、ごめんなさい!蒼が急に大人な挨拶をするもんだからぼうっとしちゃって!!」
「いえいえ、姉さんには敵いませんよ」
「え、あ、うん」
「蒼ってこんなキャラだっけ?」
「まあ、そうですね。もしかしたら、ユミーさんとのライン中は少し変わっていしまうのかも」
「ふふふ。何それ」
やはり、別人のようで、私は急な変わりように、口を開けたままになってしまった。
「それじゃあ、い、行きましょう!」
私がそう言って店に引き連れようとした時だった。
「あ、V…」
「姉さん。まだアズキさんがいませんよ?」
「え?」
私は急いで、六課のメンバーを見渡す。
「1、2、3、4、5、6、7…あ、本当だ。じゃあ待ってましょうか」
「そうだね」
「アズキさんは何をしているんしょうか」
「えっとな、確かアズキはユミーと違うマンションに住んでるから、少し遅れるとか言ってたぞ?」
「あ、そうなんですね」
「そういえば、Vさんの弟さん、アズキのこと知ってたんだな」
「あ、そういえば」
「はい。まあ、そうですね」
そんな時、遠くの方からアズキの走る姿が見えてきた。
「み、みんなー遅れてすまーん!!!」
「お、アズキ!噂をすればだな!」
アズキは息切れをしながら「ま、待った?」と言った。
「ああ、少し待ったぞ?」
「すまん!」
「こんにちわ、アズキさん」
「こんにちわ!Vさんでしたよね?」
「はい」
「それで、その隣にいる水色髪の子は…」
「お久しぶりです。アリジアル様。この僕、デトラル・シュルリンはこの日をどれほど待ち望んだことか…」
「「え?」」
一斉に全員が口を開けた。
私は弟の口から出た言葉に呆然とし、またもや、口を開けたままにした。
「アリジアル・ズイリス・キマシネア、最初の文字を取ってアズキ。自分の名前として、浸透したなんて、愛称の名付け親として感激な限りです」
「え、蒼、何でそのことを!?!?」
ユミーさんは少し困惑した顔で言った。
「簡単なことです。私はMSR副所長のデトラル・シュルリンですから。この子、夏帆乃蒼はMSRの生物兵器、第9号です。能力は一つの体に二つの魂の収納です」
「どういうこと蒼!?」
「だから、僕は9号ではありません。MSR現所長のデトラルです。今、その蒼という少年の魂はこの体の中で眠ってもらっています。そのため、今は私がこの魂の主導権を握っているわけです。まあ、魂が今、僕の頭の中で喚いているんですが…」
「そ、蒼は無事なの!?!?」
「だ!か!ら!今、9号は眠ってもらっているだけで、死んではいません!!!!!!馬鹿な猿め!!!!!お座りでもしておれば良いんだよ!!!!!」
「で、デトラル!!!お前は何で今ここでアズキを!!!」
「た、タタさん!?」
「た、タタ、知ってたの?」
「そうですね。私がアズキさんを誘うためです」
「誘う、だと!?」
「今までの経緯を説明しましょう。
私は、蒼くんに被験体となってもらった時、彼は頭の中でずっとこの苦痛から逃げたいと叫んでいました。
なので、私は魂だけの状態となって、蒼くんの体に宿り、「神の囁き」として、名乗りました。
そして、部下達に、あえて特定の道の警備を薄くさせ、研究所からの脱出経路を作成。
そして私が、蒼くんに脱出経路を教え、蒼くんを研究所からの脱出に成功させました。
そこではもう蒼くんはほとんど自分の能力という風に僕のことを信じていました。
そこからは、この日のために何年も、信頼を重ねていくうちに、蒼くんは私のマリオネットとなってくれました。
そのため、今日、この日にこうやってこの、東京スカイツリーの下で生物兵器、全てが揃い合わせることができました。この時のために私は何年も準備に準備を重ねたんですから!」
「お、お前!!!!」
「それでアズキさん。全て思い出せましたか?アズキさんが魂を乗り移った時の8号に使った放射線は、それほど記憶の飛ぶようなものではないのですぐ思い出せると思いますよ?」
私はアズキを見てみると、滝のように汗をかいていた。
「あ、あああああ……!!!」
「思い出せてもらったようでよかったです」
アズキは頭を抱えて膝を地面に突く。
「お、俺はあ!!!!!なんてことを!!!!!!!!!」
「チッ!クソが、もうこっちの世界に戻って来れないか」
「ねえ!アズキ!」
「あああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「この東京スカイツリーってのは、関東全体の情報を支えている。とりあえずは、ここを潰す!!この時のために用意したこれをとうとう使う時がきたか!できればアズキさんを迎え入れたかったんだがな…」
デトラルは蒼に背中に背負わせていた、リュックを降ろし、中から、青く輝く、カプセルを出した。
「これで、日本もお終い。GK04に頼らなくても、これで日本なんて簡単に潰せる!!!!まあ、GK04は電脳マインドの動作確認ようだったわけだがな」
「ど、どういうこと!!!そ…デトラル!!!」
「つまりこういうことだよ!!!!!!!!」
デトラルは手に持った青く輝くカプセルに刺さっていた、金具を外し、上部についていた、スイッチを押した。
そして、デトラルはカプセルに向かって、こう言った。
「生物兵器No.1青の騎士、デットモード!!!!!!!!!!!!!!!!!」
デトラルがそういうとユミーさんの背中から触手のようなものが生えて地面に突き刺さり青い光を放出しながら、東京スカイツリーの半分はある背丈の怪物を創り上げた。
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