ファイル18 東京都全体に避難警報

「ねーお母さーん見て、大っきいー」

電車の中の少年は東京スカイツリーを見ながら呟く。

「んー?そうねー。え…?」


「な、なんだこの怪物は!!!!!」

「資料にあったやつと全然違うじゃん!!」

兄貴と俺、タタはスカイツリーの半分の身長はあろう、青の騎士を見上げていた。

「うわあー!!!!!!!ば、化け物だー!!!!!」

広場にはさっきまでの喜ぶ声や笑顔はなく、恐怖だけが満ち溢れた。

「!!!!!」

さっきまで、棒立ちしていた、Vがここで動く。

「デトラル!!!お前はその体から出てけ!!!!!」

Vは弟の体に宿ったデトラルを掴み、左手を触れる。

「うぐ!!!!」

途端、Vの左手が、輝くと、デトラルの赤い瞳は水色の瞳へと変色した。

「うわー!!!!!お、お姉ちゃん!?!?」

デトラルだった体は元の体の持ち主、夏帆乃蒼に移り変わった。

「よ、よかったー!!!」

Vは安心したのか、ほっとため息をつき、蒼を精一杯に抱きしめる。

「うぐぐ…お姉ちゃん、きついよぉー!」

そんなほんわかした2人に俺は

「おい!!目の前の怪物が見えないのか!?早く逃げねえと!!みんな殺され…」

俺が言いかけた時、何かが、叩かれたような音がした。

「まさか!!」

俺の予想は的中したらしく、俺が上を見た時には、スカイツリーが半分ほどのところで切断され、瓦礫がこちら側に飛び散るのが見えた。

スカイツリーは青の騎士の剣によって切られ、広場の方の反対側のビル群に300mのスカイツリーの半分が落とされた。

スカイツリーという大きな木に潰された人々は数え切れないだろう。

いくつものビルが下敷きになったのだから。

だが、こちらも、切られた衝撃によってスカイツリーの切断面から流れてくる瓦礫が見えていた。

「に、逃げろー!!!!!!」

俺は力一杯に叫ぶと、すぐさま、上の方から瓦礫が数個落下してきた。

「つ、ツヴァイ!!!!」

上をみるとツヴァイの真上に瓦礫が落ちるのが見えた。

「うわあああああ!!!!!」

大きなコンクリの瓦礫はツヴァイの場所に落下した。

「あ、あぶなーい。ありがとタタ!!」

だが、どうやらツヴァイは間一髪で落下を回避することができたようだった。

「おい!アズキ!!!」

「俺は、俺は!!!みんなを苦しめて……………!!!!」

アズキは汗を垂らしながら、ずっとさっきと同じ場所に立っていた。

「おい!!!アズキ!!!!!」

俺はそんな呪文のように呟いていたアズキの頬を叩いた。

力は篭っていないが、少しアズキの頬は赤くなった。

「今は、六課として、ユミーを止めなきゃだろ!!!そんなモジモジしてないで、さっさとここから逃げるぞ!!!!!!」

「だ、だが!俺はお前達を苦しめた張本人だぞ!?それに、あの怪物だって俺が作ってしまった……!!!!スカイツリー本体だって…!今はこっちの方に落ちてきてないが、スカイツリーの切り落とされた、あっちの方にはビルがたくさんある!!!あそこでスカイツリーに潰された人たちは俺が殺したようなもんだぞ!!!!!!」

俺はアズキの手を引っ張ってその場から離れようと走った。

他のメンバーの姿はもう見えない。

先に逃げたのであろう。

「早く!行くぞ!!」

アズキは走る俺に引っ張られながら言う

「だ、だが俺は!!死ななければならない存在だぞ!!!」

俺は走りながら、言った。

「これはユミーにも言えることだがな、あくまで、今のお前らの意思で殺しているわけじゃないし!俺はアリジアルが目の前に現れたら殴るけど、俺らの、電脳特殊捜査隊第六課のアズキが現れても、俺は助けるだけだ!だから、俺が今助けているのはアリジアルじゃなくて、六課のアズキなんだよ!!!」

「た、タタ…!!ご、ごめん!!俺、まだ六課として、力を尽くすよ!!!」

「ああ!頼むぜ!!!」


スカイツリーから少し離れると兄貴達の姿が見えた。


「あ!タタ!アズキも…よかった!!」

兄貴は俺らの姿を見て、胸を撫で下ろした。

「ねえ!ユミーはどうするの!?」

「お、落ち着けかえで!一旦作戦を考えよう!」

俺はかえで含めみんなを落ち着かせた後に「今の状況を整理しよう。」と言った。


「まず蒼は何か分かっていることはないのか?デトラルに関して何かちょっとした情報でもいいんだ!」

蒼は少し、俺に声に驚き、少しタジタジしたが、俺の顔を見ていう

「えっと、そのデトラルってのが、持ってた、このカプセルみたいなやつは持ってるよ…」

「え!?蒼持ってたの!?早く貸して」

Vは慌てた口調で言った。

「え!?あ、うん!!」

蒼はリュックからカプセルを取り出した。

「こ、これ…」

青く輝いていたカプセルは今や光を失っていた。

「その、俺がアリジアルだった頃に開発したやつの中で、電脳マインドは確か、魂にある種の電波を送ってデットモードを確か作動させてたけど…デットモードを鎮めるには、またそれ専用の電波を発するカプセルが必要なはず…」

「ということはこれかもしれないってことですか!?」

だが、考えてみるが、確か、デトラルはユミーのデットモードを発動させる際にこれで日本はお終いと言っていた…

それにデトラルの狙いは…

「なあ、みんな聞いてくれ」

「え、どうしたの?タタ」

「ユミーがGK04に突入する日のことだ。俺は連絡がつかないユミーの家に一回行ってみたんだ。その時は能力で、ユミーの家のテレビから入ってきたから、ユミーの家に侵入できたんだが、その時、ユミーの家の机に、GK04の情報やMSRの情報が載ったファイルがあったんだ。その時、俺はGK04の存在、俺らの過去、MSRという存在この前に話してもらった事全てを知った。俺はこの情報を兄貴だけに教えたんだ」

「な、なんで兄貴に…?」

「なんとなくだが、被害が少なさそうって思ったんだ」

「て、適当ですね」

「それで、兄貴と俺は、MSRのことについて調べた」

「そして、分かったんだ。MSRの今の狙いが!」

みんなが首を傾げた。

「狙い?そんなもの、生物兵器の増殖とかですか?」

「惜しいが少し違う。MSRの狙いというのはな…全人類を減少させること。これはGK04の極秘ファイルにも同じようなことが書いてあった」

「な、なんでそんなこと…」

「人類の繁栄のためです。人類は今、急速な人口増加により、世界人口は80億人に登ります。そのため、地球の資源が底につく可能性があるため、GK04はあらかじめ、人口を減らし、地球の資源の急速な減少を減らそうとしているのです」

「そういうことだった。だが、MSRは人類の進化を目的としているようだ」

「「人類の進化?」」

「俺はこの4ヶ月間、MSRについて調べることで分かったことは、MSRはIQの高い人間だけを揃えて、高度な生命体に進化させようとしているようだ。IQは遺伝性が高いからな」

「そ、そうなんだ…」

「それでも!こんなに殺したらIQの良い人まで、殺しちゃうんじゃ!!」

「そこには何か手立てがあるんじゃないですか?例えば、MSRの元研究員とか」

「な、なるほど…」

「そして、デトラルはユミーのデットモードにする際に「これで日本はお終いだ」とか言ってた、もしかしたら、ユミーが止まるのを防ぐために、もう、制御するための電波を発生させるカプセルは壊したんじゃないか?」

「つ、つまりユミーを止められる方法ないということか!?」

「そ、そんな!!!!」

「………私には、心あたりがあります」

黙っていたVが口を開いた。

「私がユミーさんに飛び移り、私のこの左手で、ユミーさんの頭に触れることです」

「…Vの能力か?」

俺は少し考えてから言う。

「はい。私の能力は左手で触れた人の魂を消滅させるという能力があります。これなら、たとえどんなに硬い甲羅を持っていようとも、一発で殺せる自信があります」

「で、でもそんなことしたらユミーが!!!!」

「分かっていますよ……!!!!!!!!」

Vはいきなり大声をあげる。

「そんなこと!!!私が一番分かっているんですから…」

Vは下を向いて涙を垂らす。

「でも…ユミーさんはこの3回目の暴走のショックで、自殺をする可能性が高いです…だから!せめて!!私の手で!!!この生き地獄から解放させてあげたいんです………!!!!!」

「お姉ちゃん…」

その場で沈黙が漂う。

「分かった。俺はユミーを殺すに協力する。それのために何か作戦を考えなければならない。とりあえず、デトラルの作った何かがあるかもしれないVの家に向かわないか?まずはそこから作戦を立てなおそう。今、避難警報が出ている。これを聞いて被害は少しは減るはずだから、今は落ち着いて作戦を練ろうじゃないか」

「分かった」

「それじゃあ行くぞ!なるべく急ぎで!!!」



俺たちは、そこからVの家へと向かったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る