ファイル14 生物兵器ユミー
僕は避難先で敵軍の兵隊に連れ出され、生物兵器の被験体にされた日から、随分と長いこと経った。
僕が4歳の時は研究によって発現する変化を観測だけの毎日だったが、僕が6歳になった時、頭脳の性能の向上を図るべく知識を叩き込まれた。
問題を間違えれば言うまでもなく苦痛を与えられる。
そのおかげで、12歳になる頃には学力こそは向上したが、心は子供のままだった。
そしてどうやら、科学者の話によると僕以外の被験体も存在しているらしい。
被験体は僕を始め、01〜07まで存在しており、被験体同士の馴れ合いや触れ合いは存在せず、見たこともなかった。
そしてある日のこと。
モニターをじっと見つめる科学者の並ぶ研究室にて
「それでは実験を開始します」
いつも通り全身にホースを刺し、激痛が走る。
何年間もずっと受けてきた痛みなのに慣れることができない。
「ヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!!!!」
カプセルに貼り付けにされた体は痛みに耐えられずいつも暴れるがいつもの如く、体は抑えられ、自由が効かない。
片目だけにサングラスをした中央に立っている科学者が言う
「それじゃあ、電脳マインドを試そう。そうだなー。とりあえず、痛みを快感として捉えさせろ」
「了解」
ガラス越しに聞こえたその会話を俺は混乱している脳では整理することができなかった。
次の瞬間、再び苦痛が体を走ったハズだった。
だが、僕の脳はそれを快感などと捉えた。
本能的な喜びだった。
「フヴヴヴヴヴヴ!!!!」
「どうやら実験は成功のようだな。!」
「そのようですね」
「これで、感情とかも操作できる。ふふ。一気にゲージをぶっ壊して、こいつが暴れ回ることを楽しみにするとしようそれでは次の実験に移ろう」
「では電脳マインドを解除します」
今までの本能的な喜びはやがて消え去り、また本能的な苦しみへと姿を変えた。
「ヴヴヴヴヴ!!!!」
「獣が暴れているよ。眠らせて」
「了解しました」
そして僕は強い眠気に襲われ、痛みも忘れ去って眠りに落ちた。
次に目が覚めたのは、アラームの様に鳴り響く、警報音によって目が覚めた時だった。
その警報音は祖母が殺された日を連想させるように音を響かせる。
研究所では警報と同時に、アナウンスが流されていた。
『警戒準備!警戒準備!敵国軍侵入!!攻撃体制に移行してください!』
「所長、敵国が領地内に侵入してきましたよ」
落ち着いた雰囲気の副所長と名札に描かれた科学者が真ん中にいる片目サングラスの科学者に言った。
「どういうことだ?」
「どうやら、ここの闇組織の存在が国連にバレたらしく、あらゆる軍隊が四方八方から攻めてきてるらしいです」
「バリアを張れ。あのバリアでミサイルは防げる」
「了解。ですが戦車も侵入してきているようですよ?」
「ふーん。じゃあこいつを試そう」
そう言って僕の方に指を刺す。
「こいつの性能を試すのにちょうど良いじゃないか。こいつの性能上、野生の動物は一瞬で捻り潰してしまう」
「こいつは今調整中では?」
「俺が作ってんだ。失敗なんてしねえよ」
「ほ。よほどの自信なのですね」
「被験体1号デットモード」
「了解」
その淡々とした会話が終わると、俺はエレベータが下の階に行くように暗闇の研究室の地下部分へと落ちて行った。
感覚的に何か地下トンネルを通っているような感覚になった。
どうやら、何かの配管を下っているようだった。
しばらくすると、今度は上に上昇する様に圧を少し感じた。
そして僕は目を疑った。
一番カプセルの上昇が止むとそこに広がっていた景色は僕が数年間ずっと見ていなかった、地上だった。
地上は白く染まっていて、僕は初めてみるものだったが、生物兵器として場所の状況を知る必要があるので、これがなんなのかは知っていた。
「雪だ」
カプセルが開き、液体が周りに溢れる。
プシュウと風船から空気が抜けるような音がすると、俺に刺さっていたホースが抜ける。
そして俺は地面に重力によって叩きつけられる。
「う、うう。も、もしかして脱出できた?」
僕は立ち上がり、久しぶりの重力を実感した。
服ひとつ着てない僕は、小鹿のように立ち上がる。
「う、うう。何か、誰かいないのかな?」
重力を受けながら歩いていると、雪の中、人影を見つける。
「あ、誰かいる!!」
僕は精一杯に手を振り、大声を上げた。
「おーい!!おーい!!」
すると人影はどんどんと近づいて来た。
銃を持っているその特殊部隊のような格好をした人は銃を構える
「何者だ!?」
「う!うわあ、銃!?ごめんなさいごめんなさい!!!もう脱出なんてしませんから!!!」
と僕は叫ぶ。
何故ならこの人たちが研究所の人たちの可能があるからだ。
「君、もしかして、被験体にされていた子供か?」
「え?」
「怖かっただろうに。ほら、毛布を持ってきた。これで温まりなさい」
「あ、ありがとうございます!!」
僕はすぐにこの人たちが被験者たちを救出しにきたと分かった。
僕に与えられた毛布はとても暖かかった。
「先輩、敵が見当たりません」
「ああ。だがとりあえず一人保護できた。あと6人だ」
僕は助かったのだ。
涙を流しそうになった。
すると、特殊部隊の毛布をかけてくれた人が僕に話しかけてきた。
「えっと。僕の名前は小林雄和です」
「雄和か。良い名じゃないか。そうだ雄和、他の被験体の子供が今どこにいるかわかるか?」
「え?多分、研究所にまだ残されていると思います。僕は何故か、脱出できて」
「何故かって…どうやって脱出したんだ?」
「僕は、僕が入ってた被験体のカプセルが何故か急に動き出して外に出て、脱出できました」
「な、なるほど。」
すると男の人は立ち上がってあたりをキョロキョロと見回した。
「あの、すいません」
「あ、どうした雄和」
「その、僕って助かるんですよね?」
「あぁもちろんだ。助かるとも」
「じゃ、じゃあ僕、お願いして良いですか?」
「お願い?なんだ?それは」
「その、僕は今まで、毎日苦痛を与えられて育ってきました。僕がこんなことになった日のこともよく覚えています。その時、僕は避難所で研究所とかの人に捕まえられたのですけど、その時、僕以外に6人くらい子供が残されてて、多分今、捕まってると思うので、その、その…その子たちをこの地獄から、救ってあげてくれませんか!?!?」
僕はそういうと、特殊部隊の人はマスク越しでもわかるくらいににっこりと笑い、
「ああ。約束するよ。」と言った。
そういうと、特殊部隊の男は手を差し出す。
どうやら握手をしたいようだ。
僕は少しその時に顔が明るくなったと思う。
そして僕は、男の人が伸ばした手に向かって握手をしようと、手を伸ばした。
ハズだった。
だが、僕の手は男の人の喉元に深く噛みつき、ゴキと何かが折れる音がした。
ーーーーーーーーーーーーーー被験体1号デットモードーーーーーーーーーーーーーーーー
普通はおかしいのだ。
知能がある人間を生物兵器にするなんて。
だが僕は思い出した。
先日の実験で僕は脳からでる感情を変えられる電脳マインドと言われる装置の動作テストをさせられた。
その時は痛みを快感にされたが、もし電脳マインドと言うものが遠隔操作が可能な物で、人間の本能を弄りまわせるのであれば、殺すことを快感とする殺人鬼も作れないわけではない。
普通は制御のできる感情だ。
だが、それが、生物兵器を作るという目的ならば、まず人を殺すことに躊躇しない感情が必要。つまり、制御が効かないまでに感情を昂らせるだろう。
それに、あの科学者たちがわざわざ逃すなんてことはしない。
全て合点がいった。
僕は生物兵器だ。
人を殺したいという本能を使い、兵器に仕立て上げる。
今僕は、初めて人を殺した。
気持ちが良い。
でもダメなんだ。
体はそんな制御も無視して暴れ始める。
生物兵器の役割を果たすべく。
「せ、先輩!?」
特殊部隊の男の人はぐったりしていた。
「あ、あ、ご、ごめんなさい!!」
僕は涙を流しながら言った。
ハズだった。
「お、お前!!!まさか敵なのか!?!?敵が死んでそんな嬉しいのか!!!」
どうやら後輩らしきその男は、涙を流しながら、僕に銃を向けた。
僕は自分の顔を触る。
口はにやけ、最高で最低な笑みを浮かべている様だった。
そして、僕が手にかけた特殊部隊の男の後輩らしき人物は、銃のトリガーに指をかけるが、指に力が入るよりも先に俺の体は生きる生物に反応した。
「やめて!!」
僕は自分の体に語りかけたが、止まることはなく、特殊部隊の男の後輩の胸ぐらを右手で掴み、左手で男の頭を殴って潰す。
頭は風船が割れたかの如く、砕け散り、雪のパレットには血が飛び散る。
「あ、あああああああ!!!!!!!!!」
殺人衝動と人間離れした力。
これは生物兵器の武器の一つなんだろう。
「だ、誰だ!?うあああああ!!なんだこの血は!!!!!」
また別の方から特殊部隊の人間が現れた。
その男は雪に染まる血と二人の人間の死体を見た。
「まさかお前が!!!!!この野郎!!!!」
俺はそいつに飛びかかる。
「う!うわあああああああ!!!!この化け物がああああ!!!!!」
「駄目だ!!止まれ俺の身体!!!!!!!」
そんな言葉は言葉でしかなかった。
そして、僕の襲いかかった男はナイフを腰から取り出し、僕の片腕を切った。
生物兵器の能力は基本的にデットモードの時発動する。
超再生。
この能力は具体的に行って細胞の再構築だ。
僕の人殺しの腕がどんどんと治っていく。
ついには、切り落とされたはずの左手が生えてきた。
「ま、まじかよ!!!!化け物め!!!!!」
生物兵器の二つ目の能力。
細胞の構築。
僕の背中から、人間ではない、爪のようなもの血を辺りに吐き出しながら生えてくる。
そしてその爪は特殊部隊の人の両サイドから体に突き刺さる。
血を撒き散らしながら特殊部隊の人は力が抜ける。
僕は突き刺しの爪をぐちゃりと音を立てながら抜く。
血をが滴る爪はとても綺麗だった。
次の瞬間、頭が爆発によって潰れる。
戦車の砲撃のようだ。
だが僕は潰れた頭を再構築する。
実験室の科学者は言う。
「人間の記憶はあらゆる体の部分に分散している。脳だけが記憶を保存するわけではない。そして、魂にも人間の記憶が刻まれている。つまり、魂にも意思がある」
僕の視界は暗くなったが、すぐに再生を始めた。
「時期に、体の記憶をもとに髪の毛一本一本の長さすらも同じ様な見た目になるだろう」
僕の視界が戻ると、すぐに、見えたのは戦車だった。
俺はすぐに戦車の元へ走り出した。
戦車は第二撃目の準備をする。
何をするんだ!?
俺は手を上に挙げる。
僕は握った拳に、硬い鉄金属の様な肉体を細胞が作る。
そして作ったその手を戦車へと振り下ろした。
戦車は爆発し、弾け飛ぶ。
「ヴァアアアアアア!!!!!!!」
僕はまるで、怪物のようなうめき声を挙げる。
まるで我を忘れたかのように
僕は何か、青い何かに包まれる。
その時、僕は青色が嫌いになった。
「人型の青い騎士のような怪物になった俺は手当たり次第、敵を殺した。その時の俺は、本心から殺しを楽しんでいたんだ。また、あんなことが起きて欲しくないって思ったんだけど、それでも、起きてしまった。4ヶ月前にGK04襲撃時に俺はまた、暴走したんだ。これが俺の引きこもった理由」
「そ、そうだったんだね」
「みんな、迷惑かけてごめんね」
「いや、いいよ!それに、帰ってきてくれて私は嬉しいよ!」
「まつ…」
俺は少し泣きそうになる
「まあさ、人間は失敗するもんよ。必ずさ」
「タタ…」
俺は少し涙目になった。
「あのさ、それで、その青の怪物になったユミーが引き起こした、青の戦争ってのは結局ユミーが全滅させるのか?」
「うん。その後にも人員が投入されたけど、そのエリアに近づいただけで、死ぬことがあったらしいよ。そこから、俺が研究所を守ったから青い見た目をしていたのと、騎士の見た目をしていたことで青の騎士と名付けられたんだ。ごく一部の人間しかこのことは知らないけどね」
『それじゃあ、なんでユミーが怪物になったんだ?それに、青い戦争の後のことはどうなったんだ?』
「あ、あんまり、聞かない方がいいんじゃない?そう言うことはさあ」
かえでが小さくアズキにつぶやいた。
「いや、いいんだ。俺らのこれからにも関係することだからな。話を続けるぞ」
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