ファイル13 蘇った記憶


1978年 冬


「お母さーん!」

「なあに?雄和ユウワ

「見て!飛行機!!ぶううううん!!」

「おー!飛行機!かっこいいね!!」

「うん!いいでしょ!」

俺の母さんは俺が幼い頃、俺にとても優しくしてくれた。

俺はそんな母さんが大好きだった。


「お!かっこいい飛行機じゃないか!」

「でしょでしょ!僕ね!大人になったら、パイロットになりたいんだー!」

「いいじゃないか!じゃあ、パイロットになったら、その飛行機に乗せてくれよ!」

「いいよー!」

俺の父さんは俺が幼い頃、俺にとても優しくしてくれた。

俺はそんな母さんが大好きだった。


俺の両親は紛争した地でボランティアを行なっている。

そのため、俺は日本という国に行った事がなかった。


「あ!お母さん!見て!雪が降ってる!」

「あ、本当だね!」

「綺麗だな」


俺の両親はそのボランティア団体で、知り合って交際、そして結婚し、俺を産んだらしい。


ある日のことだ。

「じゃあ、仕事に行ってくるね!」

「いい子にするんだぞ、雄和」

「じゃあ、お願いしますね。お母さん」

「わかったよ。行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃーい!」


その日、両親は病院で怪我をした人たちを診に行くと言って家を出た。

俺の両親は医学免許を取得している、立派な医者で、あちこちの病院に回っていた。


その日は俺の祖母と一緒に自分たちの家で待っていた。


「それじゃあ何して遊ぼうか。」

「僕、絵本読んでほしい!」

「いいわよ、むかーしむかし、あるところに…」


その日の午前は特に何もなく随分と平凡だった。


窓から日差しがさしてきて、そよ風も気持ちよかった。


祖母は俺の遊びに付き合ってくれて、優しかった。

俺はそんな祖母が大好きだった。


俺のいた国は、名前は知らないが、幼稚園や保育園なるものは無かったので、一日中ずっと家にいることがほとんどだった。


昼は祖母と、朝と夜は両親と一緒。

俺は大切な家族と一緒にいる、この生活が大好きだった。




でもそんな生活は、長くは続かず、俺たちの楽しい、生活は崩れ始めた。

あの一つのアラートによって。



ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ



けたたましい音が突然町中に鳴り響く。

その時、祖母は何か焦っていた。

もちろん。今の俺なら、わかる。

Jアラートだ。

祖母はお昼寝していた俺を起こし、家の下にある防空壕に潜り込んだ。

その時、激しい衝突音と爆発音がした。


俺は何があったのかと祖母に聞いたが、祖母は答えてくれなかった。


Jアラートが鳴り止むと祖母はすぐに外に出て、走ってどこかへと向かった。


向かった場所は避難所だった。

避難所では、たくさんの子供がいた。

同じように大人もいた。

避難所は地中にあるらしく、ぎゅうぎゅうに詰められた、避難所は居心地が悪かった。


「な、何が起こったの!?」

「とうとう、始まってしまったみたいだな。戦争が」


俺は周りの人が言ったという言葉の意味をよく知らずに生きてきた。

なので、という言葉がわからなかった。


「おばあちゃん、戦争って何?」

祖母は一瞬戸惑ったが、だが、時期に口を開いた。


「戦争ってのはね、大人の喧嘩なの」

「大人の…喧嘩?」

「そう。戦争ってのは、恐ろしいくて、本当は絶対にやっちゃいけないの。人が死んじゃうから」

「な、なんでそんなことするの!?」

「それはね、大人は子供よりも無邪気だからだよ。大人の力で欲しいものは無理矢理にでも奪い去る。そんな大人たちが、集まっちゃうと戦争が起こっちゃうの」

「そんなことしないで話し合えばいいのに」

「そうだね話し合えばいいのにね」


またもや、爆発音が数回、聞こえた。

「うわあああああ!!!!」

俺は凄まじい衝撃音と、振動で思わず叫んでしまう。

そこから数分後、俺はいつ同じような爆発が起きるか、ビクビクしていると

出入り口の方から爆発音と、断末魔が聞こえた。


俺が、出入り口の方へ顔を向けるたが、人が多すぎて、よく見えなかった。


次の瞬間、銃声が鳴りびいた。

銃声は止むことなく、多くの断末魔を生み出した。


とうとう、銃声は近付き、ついに銃を持った防弾服姿の、特殊部隊のような服をした、銃を構えた、人たちが俺の目の前に現れた。


「あ、あんた達一体、誰なの!?」

俺の祖母はその言葉を口にしたが、そこからノータイムで、祖母に何発かの銃弾が打ち込まれた。

銃弾は遺言を残す時間も与えずに、体全体に撃ち込まれ、祖母の体は蜂の巣となった。

「うわあああああああああああ!!!!!!!!!」

俺が泣いて祖父だったものに、泣きついたが、俺に銃が突きつけられることはなかった。

それでも、銃声と断末魔が鳴り止むことはなかった。


そこから、少しすると、俺は強い衝撃を感じ、気絶してしまう。



そしてその次に目を覚ましたのは、長いホースのようなものを口につけられ、肌に注射のような針をいくつもさしている最中のことだった。


何か薄暗い研究室のようなところに俺はいた。

モニターを見る研究者達が並べられている真ん中に、片方だけ、赤いメガネをかけた白衣の科学者がいた。


「被験隊001番の意識が戻りました」

「続けろ」


その言葉が聞こえると、また俺の体に、針のついたホースが刺される。

針のついたホースは固定された俺の体に刺さり、俺は抵抗すらもできず、ただ声を上げることしかできなかった。

「ゔゔゔゔゔ!!!!!!」

痛みが体全体からした。


「ふふ。いやー苦しむの姿を見るのはいいねえ。その焦ってる顔がたまらないよ」

「アリジアルさん、それでは開始しますか?」

「ああ、頼むよ」


ガラス越しに見えたその不気味な笑みを浮かべた白衣の科学者を見ると、下から液体が込み上げてくる。


「放射線遮蔽液体投入完了です」

「了解。放射線5589投入。」


不気味な笑みを浮かべた科学者がそういうと、痛みも薄れてきた針の先から、更なる電気のような鋭い感覚が流れ込む。


「ヴヴヴヴウヴヴヴウ!!!!!!!!!」


「ふふ。敵国の子供に人権はないからなぁ!こうやっていくら痛めつけても許される。ほんと、この職につけてよかったよ!」


「数値正常。これより本実験に入ります」


「ああ。君たち、よろしく頼むよ。このビッグプロジェクトは我らMSRの最大の商品になりそうだからね。国から依頼された生物兵器の開発。実にゾクゾクするよ!!」


俺はその言葉を最後に気を失う。

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