ファイル12 足枷を取り払ってくれる人

俺がGK04本部の人間を大虐殺に合わせた日から

4ヶ月が経った。

時というものはあっという間らしくて、俺はずっと自分の家の中で膝を曲げて、うずくまっていた。

暗い部屋の中は、俺にちょうどいい。



俺は悪だ



ガラスに映った俺の姿はどう見ても人間の姿じゃなかった。

まあ、俺は元から能力を持っていて、人間じゃないけど、でも、あれは悪魔そのもので表現できるような肉体だ。


俺は何かを壊すことを連続ですると、快感を得る。

そうすると、殺したがりの俺が出てくる。

殺したがりの俺はいつもこう言う。


「人を破滅に導くのって、楽しいだろ?あの光を失った顔が俺は大好きなんだよ。お前もそうだろ?俺なんだから」


今でも、俺の手は人を殺したいって疼く。


だから、俺は誰とも会わない様にした。

だって誰も傷つけたくないから。


殺したい衝動が収まらない。

誰も傷つけたくないと言うのに。


赤は血の色。

良い色だ。


GK04の人の中でも、研究室の中の人間は無理矢理やらされていると言った。

まだ、悪い人と決まって居ない人。


悪の人ではないかもしれない人を俺は手に掛けたんだ。

そんな事を考えるだけで、俺は吐き気がする。


俺が、正気の俺が殺したあの女の人。まだ生きたかっただろうな、なんて考えると俺の心の中にまた何かが貼られていく。剥がせない、何か。

呪いのような何かが俺の足枷となって、動けなくする。


今でも俺は死にたいなんて考える。


でも、殺したがりのアイツは「罪から逃げるな」

という。


マンションから飛び降りようと思うもんなら、足が震え、手が強張る。


家のチャイムがなる。

「ユミー!いるでしょ?僕だよ!出てきて欲しいんだ!みんな心配してるよ!」

声の主は多分かえでだろう。

みんな心配してる。

多分そうなんだろう。

俺の兄弟は優しいな。


でもそんな優しい人たちと対等に並べる気がしない。

何つたって俺は人を殺したくて堪らない、殺人鬼なんだから。


想像してみる。

例えば俺が、アイツらをはりつけにして、体をギタギタに割いたとしよう。

多分それでも、アイツらは俺のことを家族として扱って、一緒に涙を流してくれるのかもしれない。

でも俺は流す涙よりも、最高で最低な笑みを浮かべるだろう。


「ごめんな、かえで。俺は、俺は一緒にいられないんだ。ごめん」

俺はインターホンにそう言うと、インターホンの電源を落とした。

「ゆ、ユミー!?」

ドアが叩かれる音がしたが俺はうずくまって無視し続けた。

しばらくすると、ドアの叩かれる音は無くなった。

「ごめんみんな」

俺はボソッと言うとまたうずくまる。

ドンドン。

またドアを叩く音がした。

「ユミーさん!任務の依頼いいですか?」

この声はVか。

俺は無視する。

「おーい、早く出てきてくださいよー。私今ピンチなんですけどー」

何が、ピンチだろう。多分そうでもない気がする。

「すまん。他を当たってくれ。俺ではない誰かを」

俺はドア越しにVに言った。

「私友達少ないんですけどー?」

「情報屋だろ?どうにかなるだろ」

「無理ですうー、早く開けてくださーい。私にはユミーさんしかいないんですけど」

「俺はそれどころじゃないんだよいいから帰ってくれ!」

「え、どうしたんですか。やっぱり4ヶ月間外に出てないのってほんと?」

「そうだよ」

「なんかあったんですか?私でもいいなら聞きましょうか?」

Vは少し心配そうに聞く。

「お前がどうにかできる問題ではない。一人でいたいんだよ」

「なんか、口先では一人でいたいとか言いますけど、本当は寂しいんですよね?」

「…」

「開けてください。私たちって出会ってから一年くらいしか、経ってませんけど、それでもわかることはあると思います」

「俺に殺されたいのか?」

「はは、冗談を。まあ、私は生きることに理由を持ってないんで、別に今死んでも、特になんの心残りもないんで、むしろ、ユミーさんに殺されるのは逆に最高の贈り物だったりして」

「…」

「とにかく開けてください…私はどうなってもいいので。何があったかは知りませんけど、相手になりますよ」

「わかったよ。今開ける」

俺は鍵を開けると直ぐに、その場から離れた

「お邪魔しまーす」

彼女が入ってくると、いつもとは違う雰囲気の人が立っていた。

「それで、どうしたんですか?」

俺は彼女から少し距離をとる。

「お前、俺が今なんでこうなっているかわからないのか?」

「いや、もちろん知ってますよ。GK04を大虐殺ですよね?」

しっかりとVの言葉は俺の心に刺さった。

「じゃあ、俺のことなんかほっとけよ」

少し俺は自分でも涙目になってることがわかった。

「ほっとけませんよ、そんな声されたら。私だって、一応、入るために知らないふりしてただけで、ほんとは心配してるんですよ?てか、あの組織は闇組織です。だから、正義に反する連中なんですよ!?別に殺したって…」

「俺は、の時に、人をたくさん殺した。それが快感と認識したみたいで、どうやら俺の心の中には、殺人鬼がいるみたいなんだ。そのせいで俺は、何人もの罪のない、GK04に無理矢理、働かされている人たちをたくさん殺した。俺はどうしようもない悪人なんだ。だから俺を殺してくれ…一層のこと、俺をズタズタに火してくれ…頼む」

俺は蹲って、悟られないように、涙を床に垂らす。

死にたくない。

そんな浅さかな考えを捨てる方法。

それは殺されることだ。

刃物で内臓をギタギタにされたい。

落下死なんて生易しいものでは俺の魂は浄化されない。

だから。

だから!!!


彼女は被っていたパーカーを下ろして、仮面を外した。

仮面の下から現れたのは、整った顔と、雪のような色の肌だった。

「それはこれから、治せばいいんですよ。ユミーさんのその心の中にいる化け物は、これから私と一緒に追払いましょ?任務に行かせたので私にも責任がありますから」

「だが!!!俺はあ!!!」

俺は涙をいっぱいに流しながら、彼女の瞳をみる。

「罪のない人をいっぱい殺した!!!俺の魂はもう人の血で汚れているんだよ!!!毎晩、夢に俺を殺したいって叫ぶ人たちが夢に出てくるんだ!!!そんな悪夢を見ても、まだ汚し足りないって言う俺が居るんだ!!!!どうにかしてるよ…そのうちお前も殺してしまうぞ!?」

「大丈夫です。貴方は私を殺せませんよ」

「なんでそう言えるんだ。俺の手は今でもお前をぐちゃぐちゃにしたいって震えているんだ!!!」

Vは俺に少し近ずく。

でも俺は、涙を流しながらまだ話す。

顔を下に向けて

「どうせだったら、この震えを止めてくれよ!!!そうだ…俺のこの、殺人衝動をいっそのこと止めてく…うぐ!!」

Vは自分の胸に、俺の頭を埋める。

柔らかい。

いい匂いがする

あったかい。

「大丈夫ですよ。その震えている手は、怖がっているだけですよきっと。殺した人が呪ってくるんじゃないかって、怖がっているだけですよ。でもその時は私が守ってあげますから、それに泣くんだったら、私の胸の中で泣いてください。私の見えないところで泣いてると、慰められないじゃないですか」

それから覚えていないが、俺は精一杯に泣き叫んだ。

Vの胸の中で泣き叫んだ。

ただ一つ覚えていることは彼女の胸の中はあったかかった。











「落ち着きましたか?」


「うん」


「ふふ、ならよかったです」


「なんかV、性格変わったね」


「心配してたかたでしょうかね。でもそれはお互い様じゃないですか?」


「まあ、確かに」


「…」


「…」


「そういえば、仮面とった姿初めて見た」


「あれ、そうでしたっけ?」


「うん」


「そうですか…じゃあ、私、可愛いですか?


「え、うん。カワイイ」


「ふぇ?」


「ん?カワイイと思うけど」


「え、い、いや!!わ、わかってますよ!!!!へへへ!!」


「どうしたの?そんな赤くなって」


「へ!?いや、なんでもないですよ!!!」


「やっぱ変わったね」


「え!?そ、そうですか!?」


「俺も、そろそろ変わらないと。みんなに、本当のこと伝えないと」


「え、えーと本当のことって…」


「俺の過去のこととか、今までVが調べてくれた事とか、かな」


「そうですか…私もついていきましょうか?」


「え、いいの?」


「はい。いいですよ。私は一応全て知ってますから」


「そうだね。お願いするよ」


「…はい。」


「にしても、もうこんな遅くなっちゃったね。Vはどうするの?」


「私は…このまま泊まります。」


「え!?きょ、今日!?」


「はい。ユミーさん、今悪夢にうなされているんでしょう?」


「え、うん。そうだけど」


「じゃあ、私が悪夢から守ってあげますから。安心してください」


「あ、ありがとう」


俺はその夜、Vと同じ布団の中で夜を共に過ごした。

その日は悪夢にうなされることはなかったが同時に、Vの吐息が掛かって安心して眠ることはできなかった。








翌日、電脳特殊捜査隊第六課、インターネット本部

青い光に包まれて、俺は第六課の本部に到着する。

会議室に俺は駆け込むと、予想通り、全員が揃っていた。

「「ゆ、ユミー!!!!」」

みんなが俺を見て言った。

みんなは目が飛び出しそうになっていた。

「あ、えと、久しぶり。みんな」

俺がそう言うと、皆んなは

「ユミー!!!心配したんだよ!!」

「よかった。なんか生きてて」

「いつかは帰ってくると思ってたけど、流石に遅すぎだよ!!!!!」

「がえっできで良がっだアアアアア!!!!」

「心配させやがって!!よかったよ」

「無事で何より」

『立ち直れたみたいでよかったよ』

やっぱりこんな俺を心配してくれるなんて、俺の兄弟はやっぱり優しいな。

「それよりなんで引きこもったの?」

「そのことについて、今から話すよ。それと、俺らの過去のこととか、能力のことも話すよ」

俺は会議室の傍に座って話し始めた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る