ファイル5 父さんの秘密基地
新幹線は無音で走る。
俺は流れていく風景を静かにじっと見つめていた。
「はあ、今頃ユミー達は学校かあ。俺、ほんと何してんだろ」
この俺、アズキは司令官、もとい成本葉月の居る大阪に向けて新幹線に乗っていた。
少し前に、自分の担当の教師から電話がかかった時のことを思い出す。
あの時は俺も流石に電話の相手がユミーではないと知った以上、電話を切りたくもなったが、わざわざ掛けてくれた先生の気持ちも考えずに電話を切るのは流石に申し訳ないと思ったが俺はその次の瞬間、電話を切ってしまいたくなるほどの無鉄砲なほどの言葉を喰らわせられた。
「お前も学校に来ないか?みんなが心配してるぞ?」
その時、俺は「何を言っているんだお前は?」と言いそうになる強い怒りの感情を押し殺したことを今でも覚えている。
怒りの感情を抑えることに集中していたためあまりその後のことは覚えてないが、俺は「僕を待ってる人なんていないですよ」とだけ言ったことを覚えている。
そして何か言おうとしていた先生を無視してそこで俺は電話を切った。
それから連日、電話が掛ってきたが全てを無視し続けた時はユミー達にも心配を掛けてしまったな。
でも、机に「死ね」や自分の教科書の破られた1ページを見る日々に戻るよりはマシだと思う。
それに、昔とは違う。
なぜなら、電話が繋がらないという理由だけで心配してくれる仲間がいるからな。
『ご案内します。次は大阪駅です』
その言葉に俺は気がつくとせっせと準備をする。
そういえば…そんな中学生活でも、俺を心配してくれた奴がいたな。
第一印象といえばすごい美少年だったけ?
あんま顔とか覚えてないけどなぁ
俺があいつらに絡まれてる時に救ってくれたんだったけ。
男性だったような、女性だったような…
まあ、覚えていても無駄な話だ。
とりあえず今日は司令官に会って事情を色々と探らないとだな。
俺は新幹線から降りると駅のホームから外へ出る。
駅から出ると、太陽は雲一つない大空でギラギラと光を放っていた。
「あっちー、これが所謂ヒートアイランド現象ってやつか」
俺が暑さに朦朧としていると何故だろうか、奴がいた。
「よお。ユミーから来ることは聞いてたぜ」
俺はあまりのことに一瞬思考が停止する。
「は、葉月さん…」
奴はこんな暑い中でも黒い長袖を着て、ポリポリと頭をかいていた。
「話すと長いんだ。こんな暑い中で話すってのもアレだし、とりあえず俺ん家行かないか?そこで色々話してやるからさ」
葉月に言われるがままに俺は葉月の家に着いた。
「ほら、入れよ。中は涼しいぞ」
「あ、はい」
中に入ると、家族7人で暮らしているような家の風景がそこにあった。
「一人暮らしなのにウケるだろ?」
葉月は椅子に座ると向かいに置いてある椅子を指さして
「座れよ、色々説明してやるからさ」
「それで、ユミーからは一体どこまで話を聞いたんだ?」
俺は睨むような目で葉月さんを見る。
「こんなこと言いたくないですけど僕、疑っていますからね」
「わかってるよ。お前のその目見てるだけでほんと傷つくよ」
少し葉月さんは眉間に
「俺はただ、開発者を探してるんだよ」
「開発者?」
「開発者に聞けばさ、分かるかもしれないだろ?なんか、こう情報とかさ」
「て、適当な…」
この人はそう言うところがよくあるなとつくづく思う。
「お前らの能力の発言源は小耳に挟んだ程度にしか分からんだろ?」
「ま、まあ。カプセル5589ってやつが発生源としかユミーから聞いてないんだけど」
「そのカプセルはな、放射線を使うらしいんだ。匿名Vさんから聞いたよ」
「だ、だから青い光があの時…」
「あ、青い光!?!?なんでお前知ってるんだ!?」
葉月さんは慌てた様子で俺に聞き返す
「え、えーとそ、そのですね…」
俺はあの時のことを全て話した。
「な、なるほど。カプセルが発動してイケメンになったのか…」
「何か開発者につながる物なんですか?」
「あ、いや。少し期待はずれだったかもしれん」
「は、はあ!?!?な、なぜ!?」
「はあ、しょうがない。こっちこい」
葉月さんは椅子から立って現在地のリビングの扉から玄関へと移動した。
俺は葉月さんについていった。
そんなに大きな家でもないのに、なぜこんなことを
と思っていると玄関に出た瞬間俺は目を疑った。
葉月さんの家は玄関に階段があり、玄関から2階にへと向かう配置なのだが、その階段は今や一つの壁となり、その2階へと向かう階段があった場所は地下1階へ向かう階段がお出ましになっていた。
「い、いつの間に…」
葉月さんはニヤッと笑うと
「秘密基地。かっこいいだろ?」
ズボンのポッケに手を入れてカッコつけて階段を降りる葉月さんから、この秘密基地はどうやら葉月さんのお気に入りのようだ。
秘密基地内部には、少し前に見た青い光を放つ手榴弾のようなものがズラッと並んでいた。
「こ、これって!!!」
「集めたんだ。ま、全部お前らの能力を与えるきっかけとなったやつとは違うんだけどな」
「これって全部使えるんですか?」
「え?まあ一応。でも、中には危険な奴もあるからな。そうだなーじゃあ、これだな!」
葉月さんは緑色の棚にある手榴弾のようなカプセルを一つ選んで俺に投げる。
「うおお!な、なんですかこれ?」
俺は手榴弾状の形をしたカプセルを見て言った。
「とりあえず、そこのデスクの上にあるコードをカプセルの下に接続してみろ」
「え?はあ」
俺は秘密基地の壁沿いに置いてある勉強机のようなデスクに一杯に広がった、黄色い液体の入ったカプセルからコードを伸ばし、手に持っていたカプセルのしたに空いていた穴に接続する。
するとカプセルについてたライトが点灯する。
「これで充電完了だ。上のボタンを押してみろ。起動するぞ」
俺は恐る恐る、ボタンを押す。
すると
「う、うわ眩しい!!」
強い青い光が放出される。
「も、もう一回押すと止まるぞ!やってくれ!」
「め、命令形!!」
俺は再びスイッチを押すとカプセルは青い光の放出をやめた。
「ふ、ふう。少し暑かったですね」
「そうね、で?どうだ?お腹、減ったろ?」
葉月さんは質問するように聞いてきた。
「え、まあ。聞くって事はこれはお腹を減らす光線を放出するんですか?」
「ご名答」
「でも、お腹が減るのって確か血糖値の低下とかが関係してるはず、と言う事はこれは、血糖とか食べた物を破壊する放射線ですか?」
「え、ええ…なんでわかったの?カプセルは確かに何かを破壊する作用が必ずあるけど、そこまでこれを見てわかるのは怖いよ?」
「え?なんとなく分かるくないすか?」
「分からんよ、常人には」
俺は話を変える。
「それで、どんなことをしたらこれが偽物だって分かるんですか?てか全部作用があるから本物だし」
「あ、そうだったな。俺がこれまでに集めたカプセルたちは特定の物を破壊するだけなんだ。でも本物は能力を授ける。そこの違いだ」
「そ、そうなんですか…てか、葉月さんはなんでそこまで詳しいんですか?」
「こ、これはなー…し、調べたんだよ。闇の社会でね」
少し怪しい言動だが、今は気にしないものとする。この人に関して、俺らに嘘をつくことはないだろう。
ーーーーーーーーーー俺らは家族なんだからーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今日はありがとうございました」
「良いってことよ。それと、アイツらの調子はどうだ?元気か?」
「はい!いつも元気ですよ!」
「よかった。じゃあな」
葉月さんは駅のホームで俺に手を振る。
「あ、そうだ!仕事、頑張りすぎるなよ?」
「あ、はい!!」
俺は明るい声で葉月さんに返事をする。
とりあえず、葉月さん…なんか、堅苦しい言い方だな。
父さん。
父さんが裏切りとか、犯罪とかしてなくてよかった。
安心した俺は山の向こうに沈む夕日を眺めて眠りに付いた…
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