第14話
三か所目の石碑。
いつもどおりに石碑の文字を読み取るキルミースさん。
今度は前の二つよりも時間がかかっているみたい。
「……ニーナ、いいですか?」
なんだか疲れてる?
ぶっつづけで解読しに出かけているわけではないけれど、やっぱり指先で文字を読むのは、かなり集中力を使うんだろうな。
点字だったら、もっと読みやすいんだろうけれど。
「はい。お願いします」
「では、『むっつのかおにあわせてにじゅうとひとつあるものをのべよ』ですね」
のべよ、ときましたか。
国語のテストじゃあるまいに。
そんなことより謎解きね。
たぶん、これもなぞなぞ。
六つの顔に 合わせて二十と一つあるものを述べよ
ということでいいと思うんだけど。
六つの顔……仁王像だか観音像だかはせいぜい顔は三つだったよね。
顔が六つ。
カレンダー……一般的なカレンダーはマス目は七つだし。
ふと目の前の石碑に目がとまった。
これ、形としたら直方体よね。
六面の長方形。
六、はこういう形だったらクリアできそうね。
次は二十一。
彫ってある文字は、二十一よりもずっと多いし、合わせてと言ってるんだからすべての面に何個ずつかはありそう。
六つの面すべてに、いくつずつかのなにかがあるものといったらサイコロしか思いつかないんだけど。
えっと、一~六を全部足すと二十一ね、これもクリア。
あとは名前を思い出さなきゃ。
なんだっけ……。
私はさいころを振る動作を無意識のうちにやっていた。
一が出たらいっこ進んで……脳内すごろく。
止まったマスに書いてある通りに行ったり戻ったりしたんだよね。
ふりだしに戻るが出たときなんて、泣きそうになったっけ。
そのかわり大当たりのマスだと、六の目が出たらいっきにあがりなんてのもあっ……そうだ!
目、だわ、多分。
「キルミースさん、多分、めだと思うんですが」
「わかりました」
キルミースさんが石碑に答えを告げると……いつもどおり、正解のアクションがあった。
よかった……石碑が目に入らなかったら、答えにたどり着けてなかったかも。
石碑からの帰り道。
「ニーナ、頼みがあるのですが」
「なんでしょう?」
なんだか、疲れたように聞こえる声。
「お疲れですか?帰る前に、一休みいたしましょうか?」
「いえ、それには及びません。ただ、帰る間、手を握っていただきたいのです」
「手を、ですか?」
「ええ。道は見えていますが、ニーナをそばに感じていたいので」
ドキドキしながら、差し出された手を握る。
石碑までの暗く短い時間につないではいても、こんな明るい中を長い時間つなぐのは初めて。
汗ばんでいないか、気になっちゃう。
「ありがとう。ニーナのおかげで、試練もあとひとつになりましたよ」
「あとひとつクリアしたら、キルミースさんの願いがかなうのですね」
「ええ」
「早くかなうように、お手伝いしますね」
返事はなかった。
代わりに、手を握られている力が、少しだけ強くなった。
館について口にしたイーマウは、柑橘系の味がした。
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