第13話

 残り三か所の石碑の解読が始まった。

解読と言っても、石碑の場所まで行き、キルミースさんが文字を読み取り私が謎解きするのくりかえし。

私たちが石碑の場所に行く際には、館の周囲や道端からの視線や声かけが増えていた。

石碑に向かう時も、帰ってきた時も多くの影が見送り、出迎えてくれた。

どのタイミングで出かけるか、戻ってくるかは知らせていないのに。

もしかしてずーっとあの場所にいるのかしら?

多くの影が『キルミース様』と呼びかける中に、時折『ニーナ様』と呼ぶ声が交るようになっていた……キルミースさんはその声に手を振って応えている。

うぅ……慣れないよぉ。

 

 「これが二つ目の石碑ですか」

キルミースさんは丁寧に文字を読み取っていく。

「読み取れました。今度も謎解きのようですね。『せまいとんねるいりぐちふたつにでぐちはひとつ』と書いてありますね」

……また、変な謎解き出てきた。

これじゃ謎解きというよりなぞなぞだってば。

キルミースさんに試練を与えたのって神様だから、この質問?も神様が出したんだろうけど。

なんでこんな問題出すかな?

もしかして、私に合わせたレベルのなぞなぞってこと、ないよね?

せまいトンネル 入り口二つに出口は一つ。

この問題は、似たようなもの聞いたことがあるから簡単。

「答え、わかりました」

「え?!もう、ですか?」

 

 「はい。間違いないと思います。はな、が答えです」

キルミースさんは石碑に向かって答えを言った。

それと同時に文字が光りだし、石碑全体が輝いた。

一つ目の石碑の時と同じ反応。

「正解、だったようですね。素晴らしいです、ニーナ」

「このなぞなぞ、以前聞いたことがあったんです」

「なぞなぞ、とはなんですか?」

「なぞなぞ、ご存じないのですか?」

「ええ」

「えーと。たとえば『パンはパンでも食べられないパンってなーんだ』みたいな。答えは『パンダ』だったり『フライパン』だったりするんですが」

「ぱん、ぱんだ、ふらいぱん……それは、いったいなんですか?」

 

 「パンは食べ物で、パンダはかわいい動物で、フライパンは料理に使う道具なんです。パンダもフライパンも、パンという言葉が中に入っているけど食べ物じゃないから食べられないよって、言葉遊びもつかった謎解きなんです」

「そうなのですか」

「……子ども時代に遊ばれたこと、ないのですか?」

「子ども時代?」

「ええ。赤ちゃんで生まれて、大人になるまでの間の一時期……ちょうどマオちゃんぐらいの背丈かな。いろいろ勉強したり覚えたりする時期なんですけど」

 

 「残念ながら、私は経験していないようですね」

「どういうことですか?」

「私は記憶している最初からこの姿でしたから」

「もしかして、子ども時代がなかったということですか?」

「そうなのかもしれません。私はここ以外を知らないのです」

生まれたときから大人ということなんだろうか??

やっぱりキルミースさんって不思議な存在なんだ。


 


 

 

 

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