第2話
え?死者?
死者ってことは、私、死んだの?
いつ?どうやって?どこで?
私は思いついた疑問を声の主にぶつけた。
「その疑問に答えるには、お前さんに直接見てもらった方が早いな」
声がそう言うと、目の前の空間に突然スクリーンのようなものが現れた。
そして画像が映しだされた。
山肌に突っ込み大破した乗用車。
膨らんだエアバッグのせいで中は見えない。
そしてその数メートル前方の路面には……。
「わ、私?」
路面には私が倒れていた。
頭のあたりから流れて広がる赤いもの。
手や足も変な方向にねじれている。
「私?!ほんとに?事故?事故にあったの?」
「たった今、な」
「い・ま」
「そう。だから、お前さんは今、ここにいる」
「ここって、死者の国って言ってたけど……そしたら私、死んでるの?」
「まだ、だがな。目撃者が救急車を呼んでいるようだが間に合うまい」
「そんな……。いやだよ、そんなの。死にたくないよ。やりたいこと、いっぱいあるのに。新しく彼氏も作りたいし、いつかは結婚だって」
「死にたくない……か」
しばらくして、また声が聞こえた。
「死にたくない。その願いをかなえることはできない」
「そんな……ひどい!」
「そのかわり」
「そのかわり?」
「転生であれば、可能だ」
「はぁっ?どういうこと?死にたくないがダメで、転生がOKだなんてオカシイでしょ?でも、いいわ。死ななくていいのなら、転生させてちょうだい」
「よかろう。ただし、転生するには条件がある」
「条件?どんな?先に言っておくと、お金とかないからね」
「そんなものではない。簡単なことだ。我の
「ちょ……ちょい待ち!誰の嫁って?というか嫁になるのが条件なの?」
「そのとおり。主様が待っておられる。さっさと嫁入りの準備をするのだ」
「いや!だから、ちょっと待ってよ。私の意志ってモノは無視なの?」
「意思とは?」
「いや、だから!嫁になるっていうことは結婚するってことだよね?」
「そうだが?おまえさんの望みではないのか?結婚したいとも聞こえたが?」
「誰とでもいいってもんじゃないでしょ?好きなヒトができて、彼氏彼女になって……って順序があるでしょうに。そんなどこの誰かもわからない主様?と結婚なんて考えられないわ」
「それならば、お前さんは死ぬしかないな」
「なんで!なんで今度は死ぬしか選択肢がないのよ!」
「それは、そう決められているからだ」
「決められてって、誰が決めたの?」
「運命の神」
「あなたや主様とかいう人じゃないの?」
「我はこの地の番人でしかない。そして主様は、我の主様だ。神ではない」
「わけ、わかんない。ちょっと待ってよ……私は今、死にかけているのよね?」
「うむ」
「そして転生して嫁入りするか、死ぬかの二択」
「理解はしているようだな。転生して嫁入りするか、死んで親兄弟を悲しませるか」
ん?なんか引っかかる。
「転生して嫁入りした場合は、かあさんたちは悲しまないの?」
「嫁入りを選んだ場合は……おまえさんは最初からいなかったことになる」
「……どういうこと?」
「おまえさんが関わったすべての者たちの記憶から消えるということだ」
最初からいなかった……かあさんたちの記憶から消える……それ、ヤダ。
でも……死んじゃったら、きっとかあさんたち悲しむ。
「じゃあ、あの事故は?」
「おまえさんをはねた人身事故ではなく、ただの自損事故となる」
あ、乗用車の事故はなくならないんだ。
ま、自業自得だからいいけど。
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