転生したら、おヨメ様。
奈那美
第1話
さわやかな風が、ほほに心地よい。
暑すぎもせず、寒くもなく。
ぶらぶらとハイキングするには最高の季節。
……一緒に行く相手がいたら、もっと最高だったんだけどね。
「ふぅ……」
ため息なんてついちゃった。
だいたい、あいつが。
なんか思い出したら腹立ってきたなぁ。
あいつ。
この間まで、私の彼氏だったやつ。
バイト先の後輩で、でも私より年上で。
バイトに来た初日から私に猛アタックかけてきて。
ちょうど彼氏いなかったし、見た目もイケメンと言っていいレベルだったからつきあうことになって。
そして半年。
新しく入ったバイトのオバサンにコナかけられて、あっさり乗り換えやがった。
「キミはオレがいなくても大丈夫だよ。でもカノジョは、オレが守ってあげないとダメなんだ」
なんて、今どきマンガのセリフや歌詞でも使わないような陳腐な言葉を並べてきた。
さっくりと『お前よりアイツとのほうが(あっちの)相性がいいんだ』って言ってくれた方が余程すっきりしたのに。
確かに彼女の方がスタイルいいわよ。
バストなんて女の私が見惚れるくらい、ゆっさゆっさしてるんだもの。
CMの謳い文句につられて買った谷間美人になれる下着を使ってもどうにもならなかった私とは正反対。
羨ましいを通り越して(重くて肩こりしないのかな?)なんて要らない心配しちゃったわ。
まあ、いいわ。
あいつって、顔以外はたいしたことなかったから。
きっとすぐに飽きられてフラれちゃうわね。
「さてと、気分転換に音楽でも聴こうかな」
私は立ちどまり、肩にかけていたバッグからスマホとブルートゥースのイヤホンを取り出した。
イヤホンを耳につけてスマホの音楽アプリをたちあげる。
「アルバムでもいいけど……今日はオールシャッフルで聴こうかな」
好きなミュージシャンたちのアルバム数十枚分。
おそらく千曲は入っているはず。
どの曲がどのタイミングでかかるかわからないのがシャッフルで聴く楽しみだ。
(おぉ~!きたきたぁ!この曲ベースがサイコーなんだよね)
そう思いながら、道の山肌側を歩きだした。
イヤホンから響くロックが心地いい。
ドンッ!
突然、激しい衝撃が私を襲った。
ドスン!
そして次の瞬間、新たな衝撃を受けた……気がした。
PiPiPiPiPiPi
……なにか聞こえる。
アラーム?私、アラームなんてかけたっけ?
……あ!バイトが早番の時はアラームかけてたんだった!
ヤバ!遅刻!!
がばっとベッドから飛び起きた……つもりだった。
「え?」
そこは私の部屋、ではなかった。
「ここ、どこ?」
きょろきょろと周りを見回してみても、なんにも形があるものが見えない。
乳白色の霧のようなものが私の周囲を包んでいるだけだった。
周囲……飛び起きた姿勢のままで座っている私のおしりの下も、かたい地面ではなくふわふわとした乳白色の霧。
「やっと、起きたか」
「やっとって。ここ、どこなの?でもってあなたは誰?」
「ここは☆@※&#$。そして我は*○▼⊿‡という」
はい?いったいどこって?
「あの!すみませんが、聞き取れなかったのでもう一度お願いします」
「もう一度?仕方がないな。☆@※&#$。そして我は*○▼⊿‡」
「え?あの、もう少しゆっくりと言っていただけると……って、なんでだけ聞き取れないのよ?!」
「ゆっくり言っても、お前さんには聞きとれないだろう。そうだな、≪冥界の入口≫といったところか。そして我は番人といったらわかるか?」
「めいかい?……わかりやすいの明解?」
「冥界だよ、冥界。もっと平たく言うと死者の国」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます