A side




「わぁ!皆久しぶりー!元気ー?」


集合場所に着くなり、私はみんなに向かって叫んだ。


『あ!A子!久しぶりー!』


ってみんな返してくれた。


皆すっごい綺麗になってる!すっかり垢抜けて、大人っぽい!


私達は、この春に高校を卒業したばかりの19歳。ここにいる子達は皆私と同じ吹奏楽部の子。


全国的に有名校の吹奏楽部だった私達(私はそんなに上手な方じゃなかったけど)は、同じ吹奏楽部だけで50人くらいいる。


今日は、現役の子達の定期演奏会を皆で手伝いに来ている。


定期演奏会は、毎年6月に行われるので、私達が最後に会ってからまだ3ヶ月くらいってことになる。


なのに、まぁ皆大人っぽくなっちゃって。


『A子。久しぶり。元気そうだね。』


うん!


「元気だよ!B子も元気そうだね!それになんか大人っぽくなったね!」


『うーん、まぁ元気でもないけど。』


一瞬で会話が続かなくなった。


ま、しょうがないか、B子だし。


「ねね、B子はどこの担当?」


こう言う時は話題を変えるに限る。


『ん?あぁ、ドアマンだよ。』


ドアマンかぁ、確かに、B子は受付っぽくないもんね。


「そうなんだ!私は受付なんだ!」


無言。変わってないな、そういうとこ。


でも、それがB子だもんね!いいの。私はB子のいいところいっぱい知ってるから!



いつの間にか今日手伝いにくる子達のほぼ全員が集まっていた。


受付は受付で集まって、準備を始める。


チケットもぎり、プログラムの配布、花束の受付、当日券の受付。一口に受付って言ってもやることはたくさんある。


開場までの後30分。役割も決まったし、いよいよだ。


会場は1500人くらい入るかなり大型のホールで、県内はもちろん、県外からも聞きにくる人がいる。


大変だけど、私達は現役の頃からこういうことには慣れているから全然平気!


『時間通り開場しまーす』


伝令係の子が、無線で連絡を受けて皆伝える。


皆口々に返事をする。


懐かしいなぁ、この感じ。




始まったらあっという間だった。


さすが私の同級生達!トラブルなんて一切ない!


お客様を全員案内する頃には、開演時間間近だったので、迷っていそうなお客様を席に案内したり、届いた花束を分けたりした。


演奏が始まったら、少しずつ片付けを始める。


私は、チケットの半券を集めてから当日券売り場へ。


今の時点での金額の確認をしたら受付セットを片付け始めた。


ここまで終わる頃には演奏会の1部が終わったみたいで、お客さんがロビーに出てきた。


『はい、じゃぁ受付チームは休憩後は各自ドア係の応援に行ってください。受付に残るのは、A子、花束を楽屋に届けたら当日券の受付をお願い。後は私と、誰か2人残ってくれる?』


D子とF子が顔を見合わせて手を上げる。


『ありがと。じゃ2人、よろしくね。他の人は、ドアの応援をお願いします。』


ここでも各自返事をして動き始めた。ほんと、部活みたい!



私は、まず花束をそれぞれの楽屋まで運んだ。


さすが名門校!届いている花束や差し入れも本当にたくさんあった。


『すごい量ね。私も手伝うよ』


受付のリーダーをしていたC子が話しかけてくれた。


「ありがと!助かる!」





終演後は、お客様のお見送りをして一旦全員で集合する。


B子、どこかなー?って探してたらすぐそこにいた。


「B子、お疲れー!」


『あぁ、お疲れー』


ほとんど抑揚のない喋り方だけど、朝よりは機嫌がいいみたい。


B子って、本当不器用ね。



私達の代の部長が簡単に挨拶をして解散。


なんとなくの流れで、私はB子と一緒に帰ることになった。


というよりは、そうなるようにB子と一緒にいた。


というのは、さっき楽屋に花束を届ける時、C子にお願いされたのだ。



『ごめん、A子、今日B子と一緒に帰れる?私、どうしても苦手なんだよね。B子』


実はこのお願いはC子が初めてじゃなくて、受付とドア係の子数名からも同じお願いをされていた。


私は、ぜーんぜんB子のこと苦手じゃないし、でも、みんなが苦手っていうのもちょっとわかる気がしたので、普通にOKした!


どんなことでも、同級生からお願いされるって、それだけ頼られてるってことだし!


私にとってはB子と帰ることは全然我慢でもなんでもないので、それでいいと思う!


「皆元気そうでよかったね!」


私は、隣を歩くB子に話しかける。


『そうだね。A子も、元気そうだし』


ちょっと顔を背けて言う。照れてるの?


可愛い!B子のそう言うとこ、好きだよ!


「ねぇ、せっかくだからお茶して行こうよ!打ち上げ!」


『あ、あぁ、そうだね。』


私は、B子を引っ張ってカフェに入った。


私って、本当友達に恵まれてるなぁ。


困った時に頼ってくれて、他の子にはぶっきらぼうでも私にだけは気を許してくれたり。


本当、幸せ!

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