1st GAME (1)
ザザン…ザザン…
-波の音が聞こえる-
目を覚ますと砂浜にいた。心地よい海風と波の音、さっきまでの体の痛みも出血もない。
-ここは?-
『目が覚めましたか、長いこと起きなかったので心配しましたよ?』
声のする方を見るとこの場所に似つかわしくない深く帽子をかぶったスーツの男がこれまた似つかわしくないテーブルと椅子に腰かけながらティータイムをしていた。
『先ほどはどうも、ゲームへの参加を受諾いただきありがとうございます。私、このゲームにてあなたの担当を務めさせていただきます[陽炎]と申します。以後、お見知りおきを。』
飄々とした話し方にイラっと来るのに不思議と聞き入ってしまう不思議な声、死に際に聞こえてきた声はこの男のものだったのか。
何か聞こうと思ったが男はすぐ話し始めた。
『お目覚めのところ聞きたいことは色々あると思いますが、まずはそちらのエントリーシートにお名前と夢をお書きください。』
男がパチンと指を鳴らすと空から黒い紙と白いインクのペンが降ってきた。
『あっ、書きにくかったらテーブルと椅子は使っていただいていいのでどうぞこちらへ。飲み物でも飲みます?』
愉快な男に促されテーブルで紙に名前を書く。
-夢か…夢っていう夢は持って生きてはこなかったな。何を書こう、今の「生き返りたい」でもいいのかな-
『夢のところは今すぐでなくてもよいですよ。若い方にはすぐ書けない方が多いのです。こちらの紙は後からでも書けますので、まずは名前だけでお渡しいただければ大丈夫です。』
男に紙を渡すと少しクスっと笑った。
-名前だけで何か笑えるのか?-
『おっと失礼。ここまでこれらの状況にあまり驚かれないことに私もちょっと不思議に思っていたですが。名は体を表す、なるほどと思いまして』
そういうと男は紙を空へ掲げると吸い寄せられるように紙は舞い上がり消えていった。
『さて!これでエントリーが完了しました!では、これよりゲームについての説明をさせていただきます。』
『この度参加していただく[RERIVE GAME]についてですが、いくつかのステージで構成されています。それぞれのステージは開催のたびに内容が変わりますのでその都度、私や説明役から紹介させていただきます。』
-いくつか、ということはステージ数も開催のたびに変わるのか-
『基本的にはお一人でゲームに参加していただくことになると思いますが、稀に複数人でのゲームも開催されます。まぁこれまでにも数回しかされたことはありませんけどね。』
『そして今いるこの空間ですが、こちらは待機室となっています。ゲームとゲームの間はこちらで過ごしていただくことになっています。構造は自由に変えることができますので、試しに頭の中で何か空間を強くイメージしてみてください。』
試しに自分の部屋をイメージしてみると、空間が変形し自室になった。机やベット、パソコンや小物まで再現されている。
『追加で物もイメージしていただければ作り出すこともできます。作り出せないものもありますが、可能であればこちらで別途用意させていただけますので、必要であれば私を呼んでいただければと思います。』
そう話を聞いていると黒いカードが降ってきた。
カードには自分の名前と不思議な模様が描かれている。
『おー!なんと早い!どうやら審査に合格したようですね!』
-審査?-
『ゲームの開催には規定以上の人数が必要になるのですが、ゲームに参加できるのは参加受諾者の中でも生き返って良いと認められたもののみとなっており、その者の魂を読み取りインクとして出すペンで書かれた名前を見て審査されるのです。悪人が生き返っても嫌ですからね。』
-なるほど、俺は生き返っても良い人間であると認められたのか-
『普通は時間が少々かかるものなのですが、珍しいこともあるものですね』
チリン…
鈴の音が聞こえた。と同時に男の手元に紙が現れた。
『おや、どうやらさっそく最初のゲームへの招待ですね。』
-最初のゲーム、どんなものなのか-
『1st GAME、その内容は<High&Low>です!』
-High&Lowってトランプの?えっ?そんな?-
『あはは、驚かれてると思いますがこんな感じのものが多いのですよ。簡単で簡潔!ただし基本的にチャンスは1回、当たればクリアですが外れればそれで終わりです。最初のゲームとしてはわかりやすいでしょう?』
-まぁわかりやすいのは良いけど-
『ゲーム開始は私に言っていただければステージへお連れ致しますので、心の準備ができましたらお呼びください。』
『すぐでなくても大丈夫ですよ。ここにきてここまでのこと、頭の整理をする時間も必要でしょう。お休みを取っていただいても構いません。お食事であればお好きなものをイメージしてあちらに置かせていただいた箱を開ければ取り出すこともできますので、どうぞごゆっくりしてください。』
『では、私はひとまずここで。』
そうひとしきり話すと男は煙となって消えていった。
-賑やかな男だったな。確かにちょっと頭を整理したかったし、一人にしてくれたのはありがたい。飲み物でも飲むか-
男の言っていた箱に向かってイメージするとイメージの通りコップに入った冷たい水と袋入りのクッキーが出てきた。飲むと確かに飲んだ感じはするしクッキーもイメージ通りの味はするが、生きていた時のように腹にたまる感覚はない。そういえば空腹感とか喉が渇くといった感じもしていなかったし、あくまで趣向しての物なんだろう。そして食事を終えると袋とコップは煙のように消えていった。
-改めて本当に変なところにいるって感覚が出てきたな。少し目を閉じてみるかー
REVIVE GAME こもれび寝狐 @kuronyanko21
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