最終話:幸福をもたらすカーマラーナ。
マーラが俺んちにきて早半年。
彼女の母親が生前、必死で貯めたお金と遺言によって俺のところに
マーラを寄越した。
そのことを思うと、母親の気持ちを無下にはできない。
だから俺はカーマラーナもマーラもできるだけ可愛がった。
マーラとの暮らしは特にトラブルもなく順風満帆と言えた。
そんなある朝のことだった、俺が目覚めたらなんと家の中の雰囲気が
ガラリと変わっていた。
家の中の壁や装飾がやたら凝っているって言うか派手って言うか・・・。
なんか、これって見覚えがある。
そうだ・・・インドのモスクか?
俺は飛び起きて外に出てみた。
そしたら俺の今まで住んでいた家がなくなって、見たことある建物が
そこに立っていた。
これは?・・・え?まさかザマルカンド?
ザマルカンドには行ったことないけど写真では何度も見たことある。
俺は新しく立った建物を写メしてパソコンでザマルカンドと照らし
合わせてみた。
そしたらやっぱりその建物はシルクロードの中心に立ってるザマルカンドと
そっくりだった。
まあ小ぶりだから本物とは思わなかったが、それでもザマルカンドの
中央の建物だけが俺んちの敷地に立ってるって感じだった。
「なんだこれ・・・いつの間に・・・誰がこんなことを」
「考えられるのはカーマラーナ」
そんなことを思っていたら朝の瞑想が終わったばかりのカーマラーナが俺のところに
やってきた。
もう裸の彼女じゃなくちゃんと俺のトレーナーとカーゴパンツを履いていた。
そして俺に向かって言った。
「レンちゃん・・・おはよう・・・この建物はレンちゃんが私を大事にしてくれた
ことへの恩返しだぉ」
「この建物はマーラからのプレゼント」
「プレゼントって・・・そんな勝手な・・・」
「ちょっと来てレンちゃん」
そういうとカーマラーナのマーラは俺の手を引いて建物の中に連れて入った。
「ほら、あの正面の壁の向こうに隠し部屋がひとつあってね」
「そこにいいものが眠ってるんだぉ」
「部屋の中のものは全部レンちゃんのものだぉ」
いったい何が入ってるっていうんだ?
俺は恐る恐るその壁を押してみた。
するとからくりドアみたいに、壁がくるっと回った。
俺の力でもその隠し扉はすんなり開いた。
カーマラーナと一緒に中に入った俺は驚愕した。
部屋の中は一面黄金に輝いていたからだ。
つまり昔の金銀財宝が溢れんばかりに山のように積み重なっていた。
「これ全部レンちゃんにあげる」
「大丈夫だぉ・・・盗んだり強奪したりしたもんじゃないから」
「この財産は私自身の持ち物だからね」
「これを全部俺に?」
「私のご先祖様は幸福をもたらす神様だからね」
「って言うか私がそうだけど」
驚いた。
最初は無理に押し付けたように俺んちにやって来たマーラだったが。
こんな驚きの結果が待っていようとは・・・。
で、もちろん俺はその財産で大金持ちになった。
マーラはまるで日本の伝承に出てくるインド版座敷わらしみたいだ。
その後、マーラは子供のマーラに戻ることなくカーマラーナのまま
俺と過ごしている・・・たぶんもう子供のマーラには戻らないだろう。
だけど成長が早すぎるよ。
俺としては中学生のおまえも女子高生のおまえも見てみたかったのにな。
まあ、神様「いい女」と酒が飲めるのは楽しいけどな。
END.
はじめまして、あなたの妹です。〜 मैं तुम्हारी बहन हूं.〜 猫野 尻尾 @amanotenshi
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