第5話:消えたマーラ。

「え?・・・・」

「誰?・・・あんた誰?・・・」


「マーラ?・・・マーラは?・・・どこ行った・・・」


俺はリビングを見回したが、マーラの姿がない代わりにソファの上に

誰かマーラよりデカい女が寝そべっていた。


「おまえ、誰だよ・・・マーラをどこへやった?」


俺はその女を確認しようと近ずいて、よ〜くみたらすっぽんぽん

だし・・・しかも髪が白くて顔からつま先まで全身青い女。


「あんた誰?」


「カーマラーナだぉ」


「カーマラーナ?・・・カーマラーナだって?」


「だから神様のカーマラーナだってばぉ」


「神様って・・・なんでマーラがカーマラーナになってるんだよ」


「お菓子いっぱい食べたからかもぉ」


「え?そんなことで?」


「大きくなったらプリキュア破れたぉ・・・」


青い姉ちゃんがそう言ったから俺がソファの下を見るとベリベリに

破れたプリキュアの衣装があった。


「あ〜あ、せっかく買ったばっかなのによ・・・ったく」

「お菓子食ったからってなんでそうなるんだよ」


「う〜ん、マーラも分かんないぉ」

「とにかく今はカーマラーナが憑依してるおね」


「そう言われるとマーラの面影があるな・・・たしかにマーラの顔だよ」

「デカくなっても、その、だお言葉はやっぱり使うんだな」


「もしかして、今までが子供に化けてて今本性現わしたとか・・・」


「そうかも〜」

「あのさ・・・せっかく大人になれたんだし大人にしかできないことしようよ」

「たとえば、お酒飲むとか〜・・・エッチいことするとか・・・」

「どう思うレンちゃん?」


「煩悩の化身がそんな煩悩の塊みたいなこと言っていいのか?」


「青い女となんかエッチいことしねえよ・・・俺は肌色の女がいいの」

「そんなことよりマーラに戻ってくれないか?」

「いきなり違う女といるようで違和感ありありだわ」


「あのさ明日、遊園地とか動物園とか、あとは美味いもの食いに連れて

ってやるから・・・な?元のマーラに戻れ」


「ほんとか?」


「ほんとほんと・・・ディズニーランドでもディズニーシーでも USJでも

どこでも好きなところに連れて行ってやるよ」

「まあ、これから時間たっぷりあるからな」


「デズニーランドってなに?」


「遊ぶとこ」


「マーラお菓子いっぱい食べてるからすぐには元に戻れないぉ」

「たぶん一晩寝たら元にもどってると思うけど・・・」


カーマラーナが言ったとおり朝になったら、リビングのテーブルの

上で宙に浮いて瞑想している小さなマーラがいた。


ってことで俺は約束どおりポンコツにマーラを乗せてアミューズメントパーク

巡りを敢行した。

マーラにとっては目から鱗・・・いく先々驚きと桃の木の連続だっただろう。


でもって夕方高級じゃないけどファミリーレストランでオムライスとハンバーグ

定食を食べさせてやった。

デザートは果物がいっぱい乗ったパフェ。


今日1日で大満足なマーラだった。

たぶん俺のところに来なかったらこんな贅沢な経験はできなかっただろうな。


「レンちゃん、ありがとう・・・楽しかったぉ」


「また連れてってくれる?」


「おう・・・また来ような」


俺はマーラが義理じゃなく本当の妹のように思えた。

一緒に過ごすうちに俺にとってマーラは大切な存在になったんだろう。


「ちゃんと独り立ちできるまで面倒みてやるからな」


そんな将来のことなんか知りもしないで、クチの周りにパフェの

ホイップクリームをつけて嬉しそうにしてるマーラだった。


まじ、あどけないよな。


でもマーラがカーマラーナになってる時は、不思議といいことがあったりした。

普段でもカーマラーナになったマーラを連れ歩いていたからな。


小口だけどスーパーの帰りに買った宝くじが当選したり・・・。

イベントに行ったら、ちょうど記念すべき100人目のお客様に選ばれたり・・・。

商店街のくじを引いたらハワイ旅行が当たったり・・・もちろん辞退したけど。


ただカーマラーナは顔が青いからすれ違う人に珍しそうに見られた。

肌の色が青い女なんてどこの国に行ってもいないからな。


それからマーラはカーマラーナなっている時の時間のほうが子供である時より

長くなっていった。

もうお菓子を食べなくてもカーマラーナでいることのほうが多くなった。

家の中を青い女がうろうろしている。


つづく。

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