やさしいせかい
古井さらさ
やさしいせかい
煙突をそうやってはがして、たべるのですか、はい、僕はそうしています、静かに静かに、僕たち以外の生き物などいないから、空虚で、ほろほろで、最低なこの場所、昔は多くの人が闊歩していたときくけれど。
まだ、食べますか、はい、おなかはすいています、ゆうひはデザートなのですが、もう、とけてしまうので、先にどうぞ、いいのですか、ええ、僕は月光をのんでがまんしますので。ありがとうございます。
どくどく、わたしの彩度がめいかくにあがりました。あまくはないけれど、言葉にするともう甘いしかないきがするのです、ことばももうずいぶんたべてしまいました。
すみにふるえている、植物の芽をみのがさないでつまみます、ひかりも、もうずいぶん少なくなってしまって、味気ない闇ばかりのんでくらしています。
一冊ほんが、おちています。わらう、とか、なく、とか、たまごかけごはん、とか、よめるのはそれくらいです。ことばはどれもおいしくて、まこまこしながらたべましたから。
なく、はなんだかぼくのあじににていました。
もう、ねむりますか。かえりますか。はい、かえります。ぼくは、にびいろにひかっています。ぼくはまたしずかにしずかに、全くひとつになりました。
せかいより。
やさしいせかい 古井さらさ @hakobune09
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