第6話 蜂条シオリ(ボクっ娘)②

「・・・・・・な~に? その子、迷子なの~? おふさって頼りないくせに、昔からこういう小さい子にはよく頼られるよね~!」

 

 そう言って虹倉にじくらユウナはその十歳にしか見えない、水色のセミロングの、大きなくりくりした紫の瞳をした女の子に近づいていき、なんと両手でその子のことを抱き上げたのだ。


「大丈夫だよ~! お姉さんたちがママをちゃんと探してあげるからね~! どこではぐれたのか言ってごら~ん? ん~? どうしたの~? 顔赤らめて? 恥ずかしがらないでいいから言ってごら~ん?」


 てっきり僕はその少女が怒り出すかと思ったのだが、そうはならなかった。


 それどころかユウナに抱き上げられたその少女は恍惚こうこつの表情を浮かべて、ただされるがままになっているのだった。


「かわいいね~! ほっぺすりすりしてい~い? いいの~? じゃあ、お姉さんすりすりしちゃうよ~! すりすりすり! すりすりすり・・・・・・あ~っ! おふさ! この子のこと預かってて! あたしあのベンチにも忘れ物ちゃったみたいから取ってくる!」


 そう言って、ユウナがその子のことを無理やりこちらに預けようとしてくるので、一瞬断ろうかと思ったのだが、なんとなくその子が僕に抱き上げられることすらも受け入れているように感じられたので、結局僕は恐る恐るその子を受け取った。


 しかし、ユウナがその場からいなくなると、その少女は僕にこう言ったのだ。


「はっ、早く下ろしてくださいっ! 早くしないと大きな声で叫びますよっ!」

 

 慌てて僕はその少女を地面に下ろした。


 もうその少女の瞳の魔術は発動していないみたいだった。


 地面にちゃんと両足がつくと、彼女は茶色い制服のブレザーの僕に触れられた箇所をパンパンと手で払いながら、


「・・・・・・あっ、あの、それで・・・・・・は、誰なんですかぁ?」


 と、恥ずかしそうに尋ねてきた。


虹倉にじくらユウナ。僕の幼なじみの・・・・・・」

  

 とまで僕が答えると、


「・・・・・・幼なじみ」


 と僕の言葉を繰り返して、その少女はゴクンと喉を鳴らした。


 なんかすごく興奮しているみたいだった。


 そして、その少女は興奮したままの顔つきで僕にこう言ってきたのだ。


「・・・・・・に免じて、今回だけはおにーさんに瞳の魔術にかけるのはやめてあげます。・・・・・・そのかわり、ボクがとても優れた魔術士だってことをそれとなくに伝えておいてください。・・・・・・それから、ボクの年齢がお兄さんたちと同じ十五歳だってこともなるべく自然にに知らせておいてください! ・・・・・・ボクの名前は蜂条ほうじょうシオリ。・・・・・・別に、おにーさんのことを認めたわけじゃないので、くれぐれも勘違いしないでくださいね! ・・・・・・では、また明日。ああ! 遅刻はしちゃ駄目ですよぉ! がきっと悲しみますからぁ!」


 それで、その蜂条ほうじょうシオリというどう見ても十歳児にしか見えない同い年の女の子がいなくなると、僕は肩をトントンと叩かれた。


 その遠慮のまるでないフレンドリーな叩き方から完全にユウナだと思って振り返ると、そこには新たな全く知らない女の人が立っていた。


蜂条ほうじょうシオリの瞳の魔術からのがれるなんて、てめぇやるじゃんかっ!」


 その人は金髪ゆるふわロングのぶりんぶりんのギャルだった。

 さらに、彼女はあの旺金林おうごんばやしミレイと遜色そんしょくないくらいの、大きくて魅力的なを持っていた。

 そして、彼女の制服の白のワイシャツのボタンはいくつか外されていて、その褐色の深い谷間が思いっきりあらわになっていたのである。

 


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第6話も最後までお読みいただきありがとうございます!


もしちょっとでも「なんかおもしろそう!」「これは期待できるかも!」と思っていただけましたら、最新話の後に☆☆☆評価をしていただけるとめちゃくちゃうれしいです!

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