第5話 蜂条シオリ(ボクっ娘)①

「・・・・・・大丈夫ですよ! が味方になってあげますから!」



 振り向くと、そこには男・・・・・・ではなく、どう見ても十歳くらいにしか見えない水色のセミロングの、大きなくりくりした紫の瞳をした女の子が立っていた。



 もちろん僕は、と強く感じていた。



 でも、そのくりくりした紫色の大きな瞳に見つめられると、自分の意志とは関係なしに、だんだん警戒心が薄れていってしまうのだ。


 そんな僕にその女の子はこう言ったのである。



「おにーさん。魔術士の瞳を安易に見つめたら駄目なんですよぅ。それがどんなにか弱そうに見える小さい女の子でも! おにーさん。・・・・・・もうボクの瞳から目が離せないですよねぇ? 

 じゃあ、おにーさんにしますね! 

 ・・・・・・

 わかりましたか? ボクのためにたっぷり遅刻してきてくださいね! ・・・・・・どうですか? 気持ちいいですよねぇ、ボクに命令されるの。気持ちいいから言うこと聞いちゃいますよねぇ! このまま快楽地獄に落ちちゃっていいんですよぅ! ・・・・・・でも、遅刻は即失格ですから・・・・・・試験にも落ちちゃいますけどね。せっかく一次試験1位だったのに残念ですね! ・・・・・・ボクのかわいさに惑わされて迂闊うかつに瞳を見つめちゃったおにーさんがいけないんですよ! このマリエリア魔術学園は女の花園なんです! おにーさんのような人は入るべきではないんですよ! 残念ですけど諦めてください!」



 駄目だ。

 こんなすごい魔術を見せられたら


 でも、僕はやさしい魔法使いになりたいんであって、他人の大切な能力を盗む盗賊シーフなんかには絶対ならないと決めたのだ!


 きっとやさしい魔法使いのおじいさんなら、今の僕と全く同じ立場でも相手の魔術を絶対盗んだりしないはずだ。


 盗みたくないっ! 

 僕に盗ませないでくれっ!

 お願いだからっ!


 気がつくと、僕はその十歳児にしか見えない少女に向かってこう叫んでいた。



「今すぐその瞳の魔術を使うのをやめるんだっ! そうしないと・・・・・・君は二度とその魔術を使えなくなってしまうよっ!」


「なにを訳のわからないことを! そんな言葉にこのボクがだまされるわけないじゃないですかぁ!」



 その少女があざけりの笑みをかすかに浮かべながらそう答えた直後、後ろからよく聞き慣れた声が再び聞こえてきたのだった。



「・・・・・・な~に? その子、迷子なの~? おふさって頼りないくせに、昔からこういう小さい子にはよく頼られるよね~!」

 


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第5話も最後までお読みいただきありがとうございます!


もしちょっとでも「なんかおもしろそう!」「これは期待できるかも!」と思っていただけましたら、最新話の後に☆☆☆評価をしていただけるとめちゃくちゃうれしいです!

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