第2話 旺金林ミレイ(ご令嬢)

貴方あなた1藻見川もみかわ 君ね? わたくしは旺金林おうごんばやしミレイ。・・・・・・そうですわ! 旺金林おうごんばやしグループの創業者の一人娘ですの! どうぞよろしく!」


 嫌味なほどつやつやの銀色のロングヘアに、宝石のように美しい碧眼へきがん、さらにはとんでもなく主張の強い魅惑的なの、怪しいくらい完璧な見た目のその女の人は、マリエリア魔術学園の一次試験が終わって校舎を出てわずか数分後、受験者のウルトラウォッチ(中空に3D映像を写し出すタイプのやつ)に合格者1000名の順位(同一日、複数会場で世界中で計10万人以上が受験したらしい)が送信されてきた次の瞬間に、そう言って僕に手を差し出してきたのだった。


 これはおそらく握手をするのが正しかったのだろうが、僕はその美しく華奢きゃしゃな白い手を握ることを躊躇ちゅうちょしてしまっていた。


 罠だと思ったからだ。


「どうしましたの? 置物みたいに固まっちゃって。もしかして・・・・・・女の子が苦手なのかしら? 

 そんなわけないですわよね?   

 このマリエリア魔術学園に入学すれば

 ・・・・・・貴方あなたもここの受験者ならこの学園に男の子が入学したことは、もう六十年近くないってことくらいはご存じですわよね? 今のところ現在の校長先生が最初で最後だってこと。・・・・・・ということは、貴方あなたが合格すれば未来の校長先生になれるかもしれないってことかしらね。

 フフッ、アハハッ! ハハハハハッ!」


 その可憐な見た目からはまるで想像できない発作みたいな大爆笑に、僕が完全に引いてしまっていると、彼女はさらにこう続けた。


「冗談、冗談っ! ジョークですわよ! ごめんなさいね、わたくしジョークのレベルもものすごいの! 

 コホン! ・・・・・・まあ、明日の二次試験もせいぜい頑張って。それじゃあ、また明日。

 ・・・・・・ああっ、わたくしとしたことが大事なことを言い忘れるところでしたわ! 貴方あなたもチェック済みかもしれないけど、わたくし、一次の筆記試験の成績、第2位だったんですの! 貴方あなたさえいなければ1位だったのに! ちなみにわたくしが試験で1位を取れなかったのはこれが初めてなんですの。だから、男の子の名前なんて生まれて一度も覚えたことがなかったんだけど、貴方あなたのフルネームだけは一瞬で覚えたちゃいましたわ! 

 藻見川もみかわ 房男ふさお君!

 結構シュッとしたお顔をしてるのに名前が少し残念ですわね!

 それじゃあ、また明日の二次試験でお会いしましょう!」


 そうやって僕の一番気にしていること(僕は自分のこの名前が大嫌いなのだ!)を言い捨てて、旺金林おうごんばやしミレイという、そのおそろしく美しくて、おそろしくの豊かな女の人がとてもいい匂いを残して立ち去ると、こんな声が後ろから聞こえてきた。


「あーあ、いきなりめちゃくちゃ厄介そうな子に目をつけられちゃったみたいだね~」



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第2話を最後まで読んでくださりありがとうございます!


もしちょっとでも「なんかおもしろそう!」「これは期待できるかも!」と思っていただけましたら、最新話の後に☆☆☆評価をしていただけるとめちゃくちゃうれしいです!

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