ブラックドラゴンの婿~魔術適正0%でむっつり巨乳好きの僕が魔界最強生物ブラックドラゴンの貧乳少女と婚約したら魔界の検索ホットワード1位になって魔界の実力者から求婚されたり命を狙われたりしてるらしい件~

新田竜

第1章 運命の入学試験編

第1話 旺金林ミレイ

 十歳の時に測った魔術適正値は0%だった。

 それでも僕はからどうしても魔術士になりたかったのだ。



 ゼロパーセント男。


 無能君。


 魔術に嫌われすぎた人。


 史上最強の落ちこぼれ。



 同級生の誰もが笑顔で僕のことをそんなふうに呼んでいた。

 明らかに悪意のありそうな子もいたし、まったく無さそうな子もいたが、誰に言われても僕は傷ついた。


 だって、と毎回断言されているみたいだったから。

 


 

 あれから五年の歳月が過ぎた。



 

 どこから話そうか。

 やっぱり、君にはのことから話さなければならないだろう。

 あの日、僕は何人かの子と出会った。どの子も今まで僕が会ったことのないような子ばかりだったけど、はちょっと特別で、君にも紹介したくないくらいとても魅力的なだったんだ。

       




  

         ◇






 「貴方あなた1藻見川もみかわ 君ね? わたくしは旺金林おうごんばやしミレイ。・・・・・・そうですわ! 旺金林おうごんばやしグループの創業者の一人娘ですの! どうぞよろしく!」



 嫌味なほどつやつやの銀色のロングヘアに、宝石のように美しい碧眼へきがん、さらにはとんでもなく主張の強い魅惑的なの、怪しいくらい完璧な見た目のその女の人は、マリエリア魔術学園の一次試験が終わって校舎を出てわずか数分後、受験者のウルトラウォッチ(中空に3D映像を写し出すタイプのやつ)に合格者1000名の順位(同一日、複数会場で世界中で計10万人以上が受験したらしい)が送信されてきた次の瞬間に、そう言って僕に手を差し出してきたのだった。


 これはおそらく握手をするのが正しかったのだろうが、僕はその美しく華奢きゃしゃな白い手を握ることを躊躇ちゅうちょしてしまっていた。


 

 罠だと思ったからだ。



「どうしましたの? 置物みたいに固まっちゃって。もしかして・・・・・・女の子が苦手なのかしら? 

 そんなわけないですわよね?   

 このマリエリア魔術学園に入学すれば

 ・・・・・・貴方あなたもここの受験者ならこの学園に男の子が入学したことは、もう六十年近くないってことくらいはご存じですわよね? 今のところ現在の校長先生が最初で最後だってこと。・・・・・・ということは、貴方あなたが合格すれば未来の校長先生になれるかもしれないってことかしらね。

 フフッ、アハハッ! ハハハハハッ!」



 その可憐な見た目からはまるで想像できない発作みたいな大爆笑に、僕が完全に引いてしまっていると、彼女はさらにこう続けた。



「冗談、冗談っ! ジョークですわよ! ごめんなさいね、わたくしジョークのレベルもものすごいの! 

 コホン! ・・・・・・まあ、明日の二次試験もせいぜい頑張って。それじゃあ、また明日。

 ・・・・・・ああっ、わたくしとしたことが大事なことを言い忘れるところでしたわ! 貴方あなたもチェック済みかもしれないけど、わたくし、一次の筆記試験の成績、第2位だったんですの! 貴方あなたさえいなければ1位だったのに! ちなみにわたくしが試験で1位を取れなかったのはこれが初めてなんですの。だから、男の子の名前なんて生まれて一度も覚えたことがなかったんだけど、貴方あなたのフルネームだけは一瞬で覚えたちゃいましたわ! 

 藻見川もみかわ 房男ふさお君!

 結構シュッとしたお顔をしてるのに名前が少し残念ですわね!

 それじゃあ、また明日の二次試験でお会いしましょう!」



 そうやって僕の一番気にしていること(僕は自分のこの名前が大嫌いなのだ!)を言い捨てて、旺金林おうごんばやしミレイという、そのおそろしく美しくて、おそろしくの豊かな女の人がとてもいい匂いを残して立ち去ると、こんな声が後ろから聞こえてきた。



「あーあ、いきなり厄介そうな子に目をつけられちゃったみたいだね~」



 振り返って、その顔を見て僕は一瞬で安心してしまった。


 その声の主は思った通り、幼なじみの虹倉にじくらユウナだった。


 旺金林おうごんばやしミレイほどではないが(ごめん!)、十分に美少女と言っていい、ちょうどいい明るさの茶髪ボブの丸顔の女の子で、昔から周りの男子たちにモテまくっているのに、なぜかいつも僕なんかのことを気にかけてくれるのだ。



「ユウナも・・・・・・一次試験通ったの?」


「当たり前でしょ! 馬鹿にしないでよね! これでも魔術の知識はおふさよりもあるんだから! おふさこそ、のくせによく頑張ったじゃない! 偉いっ! 偉いっ! よしっ! よしっ! よしっ!」



 そう言って、ユウナは愛犬にするみたいに僕の頭をかなり乱暴にでてくる。



「もう! こんなところで頭 でないでよ! ・・・・・・それからそのゼロパーセント男っていうのもいい加減やめてくれない?」



 全く悪意なくユウナが言っていることはわかっていたが、それでもやっぱり嫌だった。

 それに本当は、『おふさ』って呼ばれるのも恥ずかしいからやめてくれって言いたいぐらいだったが(だってなんかみたいじゃない?)、それを言うと幼い頃からずっとそう呼び続けてきて愛着があるらしいユウナが涙目になって怒るだろうと想像できたのでやめておいた。



「え~!? なんで~? 本当のことなんだから別にいいじゃない!」



 そう。残念ながらゼロパーセント男は本当のことなのだ。だから、そう呼ばれても仕方ない。

 普通は職業適性は30%~70%くらいの数値になるはずらしいので、0%なんていうのは、はっきり言ってあり得ない異常値だった。

 でも、そのかわりに実は超マイナー職業である、盗賊シーフの適性値が100%だってことはユウナにもまだ言っていなかった。

 100%ももちろんとんでもない異常値で、なにも努力しなくても世界一の実力者になれるくらいの無茶苦茶な数値であるらしかった。

 きっとそのことを知られたら僕は周りの大人たちに無理矢理に盗賊シーフにされてしまうだろう。

 ここで君にははっきり言っておくけど、僕は小さい時アニメで見た脇役のいつもやさしい笑顔でみんなを励ましていた魔法使いのおじいさん(でも本当は最強の魔法使い!)にずっと憧れていたから(ちなみにそのパーティーに盗賊シーフはいなかった)、いくら適性があっても盗賊シーフなんかには絶対なりたくなかったのだ。

 ずっと僕の将来の夢は使一択だった。

 僕が目指すあのおじいさんのような世界一やさしい魔法使いになるには、世界最強の魔法使いになるのがきっと一番の近道のはずだ。

 アニメでそう学んだ僕は最強の魔法使いになるために、世界で一番有名で、数々の偉業を成し遂げている伝説的な魔術士を大勢輩出しているこのマリエリア魔術学園を受験したのだった。

 でも、一次試験の問題は



「・・・・・でも、どうせ全部マーク試験だったから123321・・・・・・とか適当にマークしたんでしょ~!」



 ユウナにいきなりそう言い当てられたので、僕は正直に告白した。



「そうなんだ! 全然わからなかったから、ほんとに123321・・・・・・とかデタラメをマークしただけなのに、まさか1位になっちゃうなんて!」


「えっ! ホントに~? ホントにそれで1位取っちゃったの? 逆にすごいけど・・・・・・。まあ、昔からおふさは運がいいとは思ってたけどさ、どんだけ強運なのよ! でも、それ、絶対誰にも言わない方がいいよ! 運だけで1位取ったとか、きっとめちゃくちゃ馬鹿にされるから! とくに、さっきの・・・・・・なんだっけ?」



 僕は、ついうっかり、さっきの銀髪、碧眼へきがんのほぼ完璧な見た目をした女の人の名前を口にしてしまった。



「・・・・・・旺金林おうごんばやしミレイ・・・・・・さん?」


 

 でも、すぐに僕は言わなければよかったと後悔することとなった。



「あーっ! 美人の名前はすぐにフルネームで覚えちゃうんだ~! おっぱいもすっごい大きかったもんね~! ずっと見てたでしょ? おふさってホントむっつり巨乳好きだよね!」



 むっつり巨乳好き?


 さすがにそんなふうに呼ばれたのは初めてだったが、なんとなく核心を突かれたような気がして、僕は慌てて必死に否定した。



「みっ、見てないよっ!」


「ホントに~?」


「本当だよっ! かっ、神に誓ってっ!」


「じゃあ・・・・・・あたしのこの・・・・・・かわいい小振りのおっぱいに誓える?」



 ユウナがわずかに顔を赤らめて、小振りだけど形の良い胸を両腕でギュッと寄せて無理矢理に谷間を作って言ってくる。

 


「え? えっ? ぅえっ!?」



 そう僕が思いっきり動揺してしまっていると、ユウナは明るい声でこう言った。



「もうっ! ダメだよ~! こんなことくらいで動揺したら~! なんか噂じゃ、女子に免疫ない男子はみんな悪い女子たちに手玉に取られて脱落しちゃうみたいだよ~! とにかくまぐれでもなんでも一次試験1位で通っちゃったんだから、きっとおふさは今、そういうわる~い女子たちに徹底マークされてるはずだよ。だから、ちゃんとあたしで免疫つけとかなきゃ! あたしと同じ学校通いたいでしょ~? あたし、この学園に受かる気満々だから、おふさも頑張ってよね~!」



 もちろんその噂は僕も知っていたから何か言い返したかったのだが、そう言った後、ユウナは急に何かを思い出したように、「ああ~っ!」と叫んで、どこかに消えてしまったのだ。

 

 すると、その直後、僕はまたしても後ろから声を掛けられたのだった。



「・・・・・・大丈夫ですよ! が味方になってあげますから!」



 振り向くと、そこには男・・・・・・ではなく、どう見ても十歳くらいにしか見えない水色のセミロングの、大きなくりくりした紫の瞳の女の子が立っていた。



 もちろん僕は、と強く感じていた。



 でも、そのくりくりした紫色の大きな瞳に見つめられると、自分の意志とは関係なしに、だんだん警戒心が薄れていってしまうのだ。


 そんな僕にその十歳児にしか見えない女の子はすっかり勝ち誇ったような声音でこう言ったのである。



「おにーさん。魔術士の瞳を安易に見つめたら駄目なんですよぅ。それがどんなにか弱そうに見える小さな女の子でも!」



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             新田竜

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