第18話 カレー作り

そのまま時間は過ぎ……夕食を作る時間になる。


キャンプ広場に戻った俺を、悟が出迎えてくれた。


「優馬君! どこ行ってたの?」


「悪い悪い、少し昼寝してたわ」


「連絡したけど返事ないから心配したよ。先生に言ったら、心配しなくていいって言われるし」


「三浦先生には言っておいたし。それに、友達の青春を邪魔したくないしな?」


俺は清水と話す森川を見ながら、悟の肩を引き寄せる。

他人が羨ましいが、それでも友達の青春を祝えないほど嫌な奴ではないつもりだ。


「な、なんの話?」


「おいおい、二人でいたんじゃないのか?」


「う、うん、彼女も友達いないみたいでさ」


「ほうほう。んで、何をしたんだ?」


「べ、別に大したことしてないよ? 一緒に魚釣ったり、足湯に行ったり……」


「いいじゃん、青春してるな」


すると、二人がこちらに向かってくる。

気のせいか、清水が俺を睨みつけてるように感じた。


「逢沢君、どこに行ってたの?」


「悪い、昼寝してた」


「もう、仕方ないんだから。さあ、揃ったしご飯を作ろう!」


「が、頑張りますっ!」


そうして班ごとに分かれ、調理を始める。

当然、俺は雑用係で野菜の皮むきをひたすらやる……何故か、清水の横で。


「おい、俺の隣でやんなくていいだろ? さっきから男子からの視線が痛いのだが?」


「だって、あの二人の邪魔になるじゃない」


「いや、それはわかるが……」


「なら、貴方があっちに行く?」


「それは勘弁だ」


別にイチャイチャしてるわけではないが、悟の邪魔はしたくない。

森川は、多分俺のことを苦手だろうし。

まだ、一言もまともに話してない気がする。


「でしょ? 大丈夫、みんなには言っておいたから。あの二人を応援してるって……ふふ、これで貴方といても不自然にはならないわ」


「うげぇ……この腹黒聖女め」


「褒め言葉として受け取っておくわ。ほら、口より手を動かして」


「へいへい、わかりましたよ。それにしても、包丁の扱いが上手いな?」


俺自身は料理上手と言えないが、亮一叔父さんは料理上手いしマイ包丁を持つくらいだ。

なので、見れば上手いかどうかくらいはわかる。


「そ、そう? ……ありがと。別に好きで覚えたわけじゃないけどね」


「そうなのか? だとしても立派なもんだと思うぞ」


「……貴方って、そういうところあるわよね」


「どういう意味だ?」


「ううん、何でもない。ほら、ささっと続きをやる」


すると、無自覚なのか鼻歌を歌いながら作業を進める。

よくわからないが、ご機嫌にはなったらしい。






その後、玉ねぎやニンジン、じゃがいもを用意したら悟達に渡す。

そして焼いてあった肉を取り出し、その脂で炒めていく。

ぶっちゃけ、俺は簡単なイタ飯は作れるけどそれ以外は分からん。

なのでひたすら洗い物や、雑用をこなすのだった。


「というか、何時ものと一緒だ」


「そうなの? バイトとか?」


「まあ、そうだな。もちろん、家でもやるけど」


バイトでも家でも、俺のすることは大して変わらない。

雑用や力仕事が、俺の主な役目だし。


「バイトかぁ……」


「ん? やりたいのか?」


「んー、一応。ただ、生徒会もあるし」


「そんな暇はないか。もっと、人にやらせればいいんだよ。そもそも、清水ばかりに負担がいくのが間違ってる」


「ど、どうしたの?」


「いや……すまん」


俺は誰かを犠牲して成り立ってることに腹が立つ。

それは多分、自己嫌悪だ。

母さんが自分を犠牲にしたから、俺達は普通の生活ができていたから。


「変なの……じゃあ、手伝ってもらおうかな?」


「それとこれとは話が別だ。俺は生徒会委員じゃないし」


「むぅ……それはそうだわ」


その後も作業をし、ご飯も炊き上がり、カレーが完成した。

屋根付きのテーブル席に座り、できたものから順に食べ始める。


「うん、美味い」


「森川さん! 美味しいよ!」


「本当に美味しいね」


「あ、ありがとう……えへへ」


今回のメインの味付けは森川が担当したが、普通に美味いカレーだ。


俺自体は話さないが、普通に良い子だと思う。


えっ? 何で清水が作らなかったって?


……簡単だ、男共が寄ってきてしまうからである。









 


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