第98話サミュエル&ナルシス&ヴァンサン&シャルロット&レオンside

 サミュエルside


 王国などいつでも潰せると思っておる。

 だが、利用価値はある。


 忌まわしき魔族打倒のために、一時的ではあるが、手を組むことにしよう。

 だが、奴らが日和見主義の集団だったら、覚悟しておれ。


 瞬く間に攻め落としてやる。


 国王は取るに足らない人物だ。

 余程自らの子供が可愛いと見える。


 このまま王国を攻め落とすのも一興。

 だが、余の考えは変わった。


 ディートリヒ家当主レオン。

 何という眼光、威圧感。


 帝国にまで伝わってくる武勇は伊達ではない。

 帝国が王国に攻め入ることが出来ぬ理由。


 それは奴とディートリヒ家の存在だ。

 戦になれば間違いなく帝国が勝利するであろう。


 だが、帝国側にも甚大な被害が生じるであろう。


 この男油断ならん。

 自らの息子を敵国である帝国に躊躇なく預けると申してきた。


 国王とは格が違う。

 それほどまでに我が子を信頼しているとは。


 忌々しい男だが、賞賛に値する男だ。

 この男がいる限り、帝国が王国を落とすのは容易ではないだろう。





 ナルシスside


 皇帝は慎重ですね。

 王国など滅ぼしてしまえばいいのに。


 魔族討伐のための共同戦線など必要ありません。

 我ら帝国民だけで、魔族など討伐してみせるのに。


 会談は退屈なものです。

 この国の王は頼りない人物。


 やはり共同戦線などやめて、滅ぼしてしまえばよいのですよ、こんな国など。

 だが、僕の考えは変わりました。


 ディートリヒ家の当主レオン。

 先任の将軍や兵士からレオン公の武勇は散々聞かされてきましたが、実際に会ってみたら噂以上の人物ですね。


 刃を交えぬとも、彼の恐ろしさは伝わってくる。

 ふう、僕が気圧されているのですか。


 こんなことがあるとは。

 帝国が王国に攻め入ることが出来ない理由は、彼が原因と言われていますが、それは間違いないですね。


 仕方ありません、手を組むとしましょう。帝国と。

 命拾いしましたね、王国民よ。


 レオン公に感謝しなさい。





 ヴァンサンside


 ふん、王国などという軟弱な国家は攻め滅ぼせば良い。

 魔族など我らだけで滅ぼしてくれよう。


 登城する前に王都の様子を見たが、王国民の軟弱なことよ。

 完全に平和ボケをしている。


 戦争など自分たちには関係ないなどという顔をしている。

 ふう、呑気なものだ。


 帝国が王国を攻め落とす算段を立てていることなど知らずに。

 対魔族のために共同戦線の話が持ち上がって、その話は中断しているが、今に見ていろ。


 必ず滅ぼしてみせる、この国を。

 そのためには先ずは魔族を滅ぼさねばならん。


 正直我らだけで魔族など滅ぼすことは可能だが、皇帝のご意向。

 従うしかあるまい。


 正直軟弱な王国民と組むのは、反対であるが。


 会談は不愉快なものである。

 この国の王はこれほどまでの日和見主義者なのか。


 この場で攻め落としたい気分だ。

 この様な指導者の下で戦う兵士は可哀想だ。


 だが、俺の考えは変わった。

 ディートリヒ家当主レオン。


 馬鹿な……幾多の戦場を駆け回ったこの俺が臆しているだと……。

 何という眼光、威圧感。


 ナルシスやシャルロットだけでなく、皇帝までもが彼の威圧感に臆している様に見える。

 くっ……王国に攻め入るべきでないという皇帝の判断は間違っていないようだ。


 流石皇帝。

 乗り気ではなかったが、王国との共同戦線を組むしか選択肢はなさそうだ。


 レオン公、面白い男だ。

 いつか手合わせしたいものだ。





 シャルロットside


 皇帝が王国に攻め入るというのなら、そのご意向通りに。

 手を組むというのなら、そう致しましょう。


 全ては皇帝の御心のままに。


 ルシャード国王は今回の話に乗り気なのか、反対なのか分からない。

 こんなことで共同戦線なんて上手くいくの?


 魔族打倒は人類の悲願ではあるけど、足並みがそろわないと手痛いしっぺ返しを食らうわよ。


 勢いに飲まれていた王国側の空気を変える人物が口を開いた。

 ディートリヒ家当主レオン。


 何て眼光と威圧感。

 そして、何て素敵なおじさまなの。


 ダメよ、シャルロット。

 彼は敵国の人間なのよ。


 彼は躊躇なく息子を帝国に送り込むと言った。

 息子がいるのね、残念。


 そうじゃないのよ、シャルロット。

 今はそういう話をしているんじゃないのよ。


 ああ、でもダメ……。

 今、目が合った。


 何て素敵なの。

 王国を攻めるのはダメ。


 共同戦線を組むべきよ。

 そうよ、永遠に組むべきよ。


 そして私がレオン様と結ばれて。

 って、彼は既婚者なのよ。


 でも諦めきれない。

 彼には息子がいると言ってたわね。

 どんな子なのかしら。





 レオンside


 あああああぁぁぁあああ!!! 私の悪い癖が出たぁぁぁ!

 エリアスを帝国に送り込むなんて。


 魔法学校に入るのも本当は反対だったのに!

 帝国民って恐ろしい奴らじゃないのか? そんなところにエリアスを送り込むなんて。


 本当はずっと近くにエリアスにいて欲しいのに。

 どこにもいって欲しくないのに。


 帝国民に酷い扱い受けてないかな、虐められてないかな、心配だあああああぁぁぁあああ!!!


 何で毎回私はかっこつけた発言してしまうんだあああぁぁあぁああ!

 今度は絶対私の本心を言うんだ! エリアスには傍にいて欲しいって!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る