第93話女性からのエリアスへの気持ち(上級生&姉編)

 リズベットside


 エリアス君はいくら追いかけても振り向いてくれない。

 でも絶対に諦めない。


 私の理想の人がそこにいる。

 振り向いてくれるまで追いかけ続ける。


 私はしつこいんだから。

 覚悟しなさい。





 リステアード君とブリュンヒルデさんが戦うことになった。

 二人を近くで見てきた私は何故? って思った。


 リステアード君にも譲れない想いがあるのね。

 正直厳しい結果になりそうだけど、頑張って欲しいわ。


 普段穏やかなブリュンヒルデさんが、リステアード君を罵倒している。

 彼女らしくない。


 何か思惑があるように思える。

 まさか……エリアス君を誘い出している……?


 エリアス君の性格なら、リステアード君を馬鹿にしたら試合を申し込んでくる可能性がある。

 ブリュンヒルデさんはエリアス君と戦いたがっていた。


 そのためにリステアード君を罵倒している……? エリアス君、その挑発に乗っちゃ駄目。

 ブリュンヒルデさんに勝てる人なんていない。


 私の願いは届かず、エリアス君とブリュンヒルデさんの試合は決まってしまった。

 エリアス君らしいといえばらしいけど。


 そういうところを好きになったのよね、私は。


 試合が始まった。

 この五年傷一つ付かないどころか、一瞬で試合を終わらせてきたブリュンヒルデさん。


 その彼女の攻撃が当たらない。

 信じられない。


 それにエリアス君の攻撃が徐々にダメージを与え始めている。

 五年続いた不敗神話が崩れる時が来たの? 私はこの時を待っていたのかもしれない。


 エリアス君は切り札の魔光剣でブリュンヒルデさんを負かした。

 凄い……歴史が本当に塗り替わった。


 エリアス君の同級生たちが、彼に駆け寄っていたので私は駆け寄らなかった。

 でも、本当は駆け寄って声をかけたかった。


 想いが溢れてきて言葉にならないけど、それでも声を掛けるべきだった。


 大好きだって。





 オティリアside


 許されない恋だって分かってる。

 エリアス君は女性に興味がないって知ってるのに、想いが抑えられない。


 リズベット会長のことを、実らない恋をいつまでも追いかけている女性だと思っていた。

 私もそうなってしまうなんて。






 エリアス君とブリュンヒルデ先輩が戦うことになったわ。

 リステアード先輩を罵倒されて、エリアス君が激昂してしまった。


 そういうところも好きなんだけど。


 試合が始まった。

 ブリュンヒルデ先輩の攻撃は、エリアス君に当たらない。


 その後はエリアス君が徐々にではあるけど、ブリュンヒルデ先輩にダメージを与え続け、最終的に勝利した。


 もう感動しすぎて感情がぐちゃぐちゃになってしまっているわ。

 私の気持ちは決まった。


 エリアス君が女性を好きじゃなくても諦めない。

 必ず好きになせてみせる。





 ルイーサside


 エリアスは私のことをどう思っているんだろう。

 強さばかり追い続けて、人を好きになることなどないと思っているのかな。


 ふふ、そんなことはないのに。

 だが、私の気持ちを中々表に出すのは難しい。


 いつもエリアスは女性に囲まれている。

 女性らしさに欠ける私があそこに飛び込んでいくには、中々厳しいものがある。






 エリアスとブリュンヒルデ先輩が戦うことになった。

 兄上のために立ち上がってくれたのは嬉しいが、相手が悪い。

 五年間無敗は伊達ではない。


 エリアスの強さは分かるが、今ではない。

 実力差が開き過ぎている。


 今は力を蓄えて、来るべき時に備えるべきだ。


 試合が始まった。

 エリアスの素早さは戦った私が一番分かっているが、ブリュンヒルデ先輩を翻弄するまでとは。


 戦いが続くうちにブリュンヒルデ先輩の双翼は縮小している。

 長期戦の経験がないから、魔力切れを起こしているのか……? まさかそんなことが。


 エリアスは徐々にブリュンヒルデ先輩の隙を突き、魔氷竜と魔雷竜を放っている。

 それが徐々にブリュンヒルデ先輩にダメージを与えている。


 さらにブリュンヒルデ先輩の双翼は縮小している。

 エリアスはその隙を見逃さず、切り札の魔光剣で勝負を決めにいく。


 ブリュンヒルデ先輩が敗北を認めた。

 五年間の不敗神話は崩れたのだ。


 歴史は塗り替わった。

 エリアスの凄さを改めて実感している。


 男性に興味がなかった私を魅了してしまうとは。





 リアside


 あたしが気になっていることがる。

 異母兄弟はこの国で結婚出来るのかってこと。


 何か嫌な予感がするので、敢えて調べないことにしてる。

 今は自分のやるべきことをやる時期だというのは分かっているけど、どうしてもエリアスのことが気になる。


 勉強をしてても、魔法の練習をしてても、エリアスのことを考えてしまう。

 そのエリアスがブリュンヒルデ先輩と戦うことになった。


 いくらエリアスでも相手が悪すぎる。

 挑んできた相手を無慈悲に返り討ちにしてきたブリュンヒルデ先輩とは。


 試合が始まった。

 エリアスの素早さがブリュンヒルデ先輩を翻弄している。

 エリアスの攻撃も徐々にではあるけど効いてる。


 何か途轍もないことが起きようとしているわ。

 胸が高鳴っている。


 これがエリアスの力。

 強いとは思ってたけど、ここまでとは。


 ブリュンヒルデ先輩が負けを認めた。

 歴史が塗り替わったわ。


 あたしは気付いた。

 エリアスを弟ではなく、男性として見ていることに。





 レアside


 私はあることについて調べていた。

 この国では異母兄弟が結婚出来るかということを。


 結果的には無理だった。

 悔しい。


 私はエリアス以外には結婚したくない。

 考えたこともない。


 それ程に私の中で、エリアスとその他の男性との差は大きい。

 エリアスのことばかり考えていると、よく分からない話が飛び込んできた。


 エリアスとブリュンヒルデさんが戦うという。

 私は戦闘が得意でなく、勉強しかしてこなかったけど、確信がある。


 エリアスが勝つ。試合に負けて退学しない様に私は戦闘データを集めているけど、エリアスはブリュンヒルデさんとの相性が良い。


 ブリュンヒルデさんは今まで一瞬で勝ってきたので、長期戦に慣れていない。

 長期戦に持ち込めばエリアスに分がある。


 それとこれは仮説でしかないけど、ブリュンヒルデさんは魔法防御力が低い。

 何の確証もないことだけど、魔法を食らったことがないから、当てることさえ出来れば面白いことになるのではないかしら。


 試合が始まった。

 試合展開は私の想定通りに進んでいる。


 怖いくらい。

 私のデータは間違ってなかった。


 でもデータだけじゃない。

 エリアスが勇気をもって戦闘を進めてるからこそ、この結果が起きている。


 少しでも足を止めれば集中砲火が襲ってくる。

 エリアスはそれを全て躱し、隙を見て攻撃している。


 ブリュンヒルデさんが負けを認めた。

 何てことを成し遂げたのよ、エリアス。


 そうだ、成し遂げればいいのよ。

 異母兄弟の結婚が駄目なら、変えてしまえばいい。


 この国の法律を変えるのよ。

 そしてエリアスと結婚するのよ。





 ブリュンヒルデside


 ふう、ボクと互角に戦える奴がいなくて退屈だな。

 いや、待てよ。エリアスがいる。


 でも、どうやったら戦えるだろうか。

 何か口実がいるな。


 ボクがそう思案していると、リステアードから魔法試合を申し込まれた。

 正直リステアードには何回勝ったか分からないくらいだから、戦いたくない。


 いや、待てよ。

 これを利用させてもらおう。


 リステアードを罵倒すると、エリアスが激昂して試合を申し込んでくるかもしれない。

 実際その通りになった。


 まあ、リステアードには悪いことをしたけど。





 試合は日を改めず、連戦になった。

 まあ、このくらいのハンデは必要だよね。


 ワクワクする。

 エリアスの実力はどのくらいなんだろう。


 試合が始まった。

 ボクの魔法は全然当たらない。


 こんなに素早い奴は初めてだ。

 楽しいんだけど、これほどまでに避けられたらボクの魔力が枯渇してしまう。


 ボクは魔力量には自信があるけど、ここまで魔力を使わされるのは初めてだ。

 エリアスは試合開始当初は避けてばかりだったけど、次第に攻撃を仕掛けてくるようになった。


 まさか魔法を食らうのがここまで痛いとは。

 そういやボク魔法食らったの初めてだっけ? 流石だな、エリアス。


 徐々にボクの魔法障壁で防ぎきれなくなっている。

 ダメージが蓄積している。


 まずい。

 余裕がなくなってきた。


 魔力が枯渇してきたのと、ダメージで動きが鈍くなっている。

 さらにエリアスは切り札で猛攻を仕掛けてきた。


 ボクはエリアスを見上げている……? ボクはダウンしたのか……?

 反撃したいけど、魔力がないし、体が動かない。


 くっ……ここまでか。

 ボクはギブアップすることにした。


 他の奴に負けるのは癪だけど、エリアスに負けるのは何故か受け入れられる。

 エリアスに負けて芽生えた感情は悔しさじゃなく、清々しさだった。


 そしてエリアスが大好きだってことだ。

 今は『エリアスが大好きだ!』って、叫びたい!

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