第92話女性からのエリアスへの気持ち(同級生編)

 ミラside


 エリアスとの付き合いも五年になるのか。

 長くなるわね。


 エリアスは私のことどう思ってるのかしら? いえ、エリアスの気持ちも大事だけど、私の気持ちもはっきりさせないと。


 と言っても、この五年エリアスを見つめていた私の胸はときめいているのよね。

 エリアスは姉弟みたいに思ってるのかもしれないけど、私はそうじゃない。





 エリアスとブリュンヒルデさんとの試合が決まった。

 お兄様のために戦ってくれるのは嬉しいけど、エリアスには死んでほしくない。


 止めるべき? いえ、止めてもエリアスは行ってしまう。

 そういう人なのは分かっている。


 試合が始まった。

 予想外と言ったらエリアスに失礼だけど、エリアスが押している。


 エリアスが素早いというのは知っていたけど、ブリュンヒルデさんまで翻弄してしまうなんて。

 驚愕としか言いようがないわ。


 エリアスってこんなに強かったの? 一番近くで彼を見てきた私でも分からなかった。

 魔氷竜と魔雷竜以外に魔光剣という切り札まで隠し持っていたなんて。


 試合はエリアスが勝った。

 私は涙を堪えていた。


 人生でこんなに感動したことは初めて。

 私はエリアスに駆け寄った。


 私の感情はぐちゃぐちゃで何て言葉をかけたかは覚えてない。

 でも、これだけははっきり言える。


 私はエリアスが好きなんだって。





 イルザside


 思い返せばエリアス君と初めて会ったのは入学式の日でしたわね。

 同じ公爵家という出自ながら、纏っている気品や威厳といったものは正直負けていると言わざるを得なかったですわ。


 それでも悔しさというものはなく、当然と思っていましたわ。

 不思議な殿方ですわ。


 入学試験や魔法試合で戦い負けましたが、それも実は悔しくありませんでしたわ。

 エリアス君には対抗意識を燃やす振りをしていましたが、体面を保つ目的でそうしていただけですわ。


 わたくしは負けず嫌いなはずですけど、どういうことでしょうか。


 彼はミラさんと一緒にいることが多いですわ。

 聞けばもう五年の付き合いになるそうですわね。


 確かに過ごした年月は大事ですけど、わたくしも負けるつもりはございませんわ。





 エリアス君がブリュンヒルデ様と戦うですって? 誰かのために戦うエリアス君らしいですけど、流石にそれは認めたくございませんわ。


 試合が始まってしまいましたわ。

 エリアス君はわたくしの魔氷竜を躱したように、とても機敏ですわ。


 それがブリュンヒルデ様の魔法まで躱してしまうなんて、底が知れませんわ。

 そして、魔氷竜と魔雷竜に加えて魔光剣まで隠し持っていたとは。


 試合はエリアス君が勝ちましたわ。

 わたくしの顔と感情はぐちゃぐちゃですわ。


 エリアス君に駆け寄って声を掛けましたが、自分自身何を言っているのか分からない状態でしたわ。


 一つだけ申し上げられるのは、わたくしがエリアス君を好きだということだけですわ。





 アンナside


 入学早々舞い上がっていたというのもあるけど、今でも良かったのかと思う。

 エリアス様をエリアスなんて呼び捨てにして、ため口をきいてることを。


 結局そのままになってしまっている。

 身分違いなのは分かってるけど。


 それでもエリアス様は、嫌な顔一つしないのよね。

 お心が広い方。


 あたしのことは、只の失礼な女と思ってるのかしら? 彼の気持ちが気になる。

 好きな女性はいるのかしら? いえ、そうじゃないわ、アンナ。


 彼が誰を好きだろうと、全力でぶつかるのよ。

 でもやっぱり勇気が出ない。


 そんな懊悩とした日々を過ごしている。




 エリアス様がブリュンヒルデ先輩と戦う? そんなこと認められない。

 止めた方がいいの? エリアス様がいない人生なんて考えられないわ。


 試合が始まってしまった。

 エリアス様が素早いことは知っていたけど、ブリュンヒルデ先輩を翻弄している。


 魔氷竜と魔雷竜だけでなく、魔光剣という切り札までとっておいたとは。

 試合はエリアス様が勝った。


 感動しすぎて感情が追いつかない。

 どういう言葉をかけたらいいのかも分からない。


 思いの外、エリアス様は冷静だった。


 でも、あたしは冷静でいられない。

 あたしの中の恋の炎が燃え上がったから。





 ハンナside


 エリアス君には、いつも心の声で話しかけている。

 まあ、聞こえるわけないけど。


 エリアス君は、いつも無口な私を気遣っている様に見える。

 声を発さなくても、表情や仕草で私が何を言おうとしているのか、理解しようとしてくれる。


 思えば、私のことをこんなに理解してくれようとしてくれる人はいなかったかも。

 もう……好きになっちゃうじゃない。




 エリアス君がブリュンヒルデ先輩と戦う? 私の胸は高鳴っていた。

 私は戦闘に関してはデータ主義。


 これは面白いものが見れると思った。

 みんなはブリュンヒルデ先輩の圧倒的な魔法攻撃力を称えてるけど、当たらないと意味はない。


 エリアス君なら回避できるのでは? と、私は考えている。

 それにブリュンヒルデ先輩は一瞬で戦闘を終わらせるので、長期戦の経験がない。


 試合は私の読み通りになった。

 読みが外れた、と言うより予期できなかったのが、エリアス君が魔光剣という切り札を隠し持っていたのと、ブリュンヒルデ先輩の魔法防御力が思いの外低かったこと。


 私は私のデータに改めて自信を持った。

 でも今はそれはどうでもいい。


 私はエリアス君に駆け寄り、途轍もなく喋った。

 無口キャラというのも忘れて。


 私は戦闘に関してはデータ主義だ。

 でも、恋愛に関しては感情で動きたいと思う。





 ハリエットside


 エリアス君は努力家なのです。

 放課後はハリエットと研究か、図書室で勉強しています。


 この努力が序列一位をキープしている理由なのです。

 

 ハリエットはエリアス君との研究の時間、よくエリアス君の顔を見ています。

 でも、エリアス君はハリエットの気持ちに気付いてくれません。


 ハリエットのことを妹みたいな目で見ているのでしょうか。

 ハリエットは違いますのに。





 エリアス君がブリュンヒルデ先輩と戦いますの。

 嫌ですの、エリアス君がいなくなっちゃうのは。


 だめですの、ハリエット。

 悲観的になっては。


 エリアス君が勝つって信じるですの。

 試合が始まりましたの。

 エリアス君は素早いですの。


 ブリュンヒルデ先輩の攻撃は当たりませんの。

 おまけに魔光剣という切り札まで隠し持っていたですの。


 試合はエリアス君が勝ったですの。

 ハリエットは嬉しいですの。


 またエリアス君と研究が出来るですの。

 研究が出来るのも嬉しいですけど、大好きなエリアス君と一緒に過ごせるのが嬉しいですの。





 エミリーside


 アルベルトの気持ちは嬉しい。

 私のことを想ってくれてたなんて。


 でも私には好きな人が。

 どうしてもエリアス君のことを諦めきれない。


 エリアス君がいつも女性に囲まれていることは知っている。

 私がアルベルトを好きだと勘違いされてる可能性もある。


 でも、諦めきれない。





 アルベルトが謹慎しているから、彼の様子を気にかける日々が続いている。

 そんな時たまたまエリアス君とブリュンヒルデ先輩が戦うことを知ってしまった。


 五年以上全学年序列一位をキープされている方。

 エリアス君が強いと言うことも重々承知だけど、相手が悪い。


 私はどうすればいいの? 祈ることしか出来ないの?


 試合が始まった。

 ブリュンヒルデ先輩の攻撃は凄い威力。


 あんなの一発でも食らったら、普通の人は跡形もなく吹き飛んでしまう。

 でもエリアス君は一発も食らわずに、全て躱している。


 どんなに威力が凄くても食らわなければいい。

 言うだけなら誰にでも出来る。


 でも、今まで誰も出来なかったから、ブリュンヒルデ先輩がずっと全学年序列一位だったのよね。

 それをエリアス君は成し遂げようとしている。


 エリアス君の素早さと精神力があればこそ。

 どんなに素早くても、臆した瞬間負けが待っている。


 エリアス君が魔光剣という切り札で、ブリュンヒルデ先輩を負かした。

 凄い、凄すぎる。


 私は感情が高まりすぎて、エリアス君に駆け寄っていた。

 やっぱり好きだという感情が抑えきれない。


 どんなにライバルが多くても、私は諦めたくない。





 フィオナside


 エリアスとレイラ様には感謝してもしきれない。

 半魔の庭で保護してもらった。


 だけれどもエリアスに会いたいというのも本当。

 半魔の庭の人たちは優しいけれど、どうしてもエリアスに会いたい。


 そんな私の心を見透かしたように、レイラ様はエリアスに会いに行きなさいと言ってくれた。


 久しぶりにエリアスに会える。

 嬉しすぎる。


 でも、エリアス、私のこと忘れてないかな。


 久しぶりに私を見たエリアスは驚愕していた。

 ふふ、それもそうよね。


 私が人間になっていて、妹になったのだから。

 ふふ、驚かせちゃったかしら。


 それと、私自身の感情も確かになった。

 何年経とうとエリアスが好きだって。





 エリアスとブリュンヒルデという人が戦うことになった。

 私は魔法学校に入ったばかりで、ブリュンヒルデという人をあまり知らないけれど、凄い人みたいね。


 でも心配していない。

 エリアスは勝つ。


 エリアスが負ける未来なんて想像できない。


 試合が始まった。

 エリアスってこんなに強かったんだ。


 元から好きだったけど、さらに好きになっちゃった。


 私は闇魔法を使うから分かるけど、ブリュンヒルデという人の闇魔法は私とは桁違い。

 あんなの食らったらだれでも、跡形もなく消し飛んでしまう。


 エリアスは別として。

 誰が相手でもエリアスは負けない。


 それだけは揺るぎなく信じられる。

 理屈じゃない。


 試合が終わった。

 当然私の大好きなエリアスが勝った。


 私はエリアスに駆け寄り、『大好き』って囁いた。

 彼は驚愕していたけど、我慢できなかった。


 だって本当に大好きだから。

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