第81話エリアス派閥? とアルベルト派閥

「フィオナさん、美しいです」


「羨ましいわ~、フィオナさん」


「そんなこと御座いませんわよ、おほほ」


 フィオナは大人気だった。

 そして、教室では猫を被っていた。


「フィオナさんって、エリアス君に似てない? 双子だから当たり前か」


「そうそう、二人ともとても美しいわ」


「そうかな? そんなに似てる?」


 俺は半魔、フィオナはハーフエルフ。

 同じハーフということで顔立ちは似ているのかもしれない。


 実際は血の繋がりはないが。


「似てる、似てる」


「似てますわ」


「ですってよ~、お兄様」


「ははっ……」


 俺は愛想笑いするしかなかった。






 次は選択科目だから教室を移動しないといけない。


「フィオナ、教科書は持ったか? ノートは?」


「はい、大丈夫です。お兄様」


「こうして見るとエリアスってお兄ちゃんみたいね」


「そうね、お兄ちゃんみたいね」


「お兄ちゃんですわ~」


「アンナさん、ミラ様、イルザさん、お兄ちゃんみたいじゃなくて、お兄ちゃんなんですって!」


「お兄ちゃんみたいです」


「ハリエットさんまで……」


 まあ、実際はお兄ちゃんじゃないけど。


「お兄~ちゃん」


 フィオナは腕を組んできた。


「ちょっと、待って」


 ミラ様はその腕を振りほどいた。


「どうされたのですか? ミラ様?」


「貴方、エリアスと腕組んでたじゃない?」


「それが何か? 私たち、仲良し兄妹なんです。問題ないと思いますが?」


「むぅ、変よ。いえ、変じゃないかも。いえ、やっぱり変よ。どうなのかしら? 私はお兄様やお姉様と腕なんか組んだことないし」


 俺も自信を持って、変だ! とはツッコめなかった。

 リア姉様やレア姉様と腕を組んだことなんかないけど、世間一般の兄妹が腕を組むのか組まないのか分からなかった。


「でも、物凄く嫌な感じがしたの。エリアスじゃなくて、フィオナさんの。フィオナさんのエリアスに対する態度がとても兄に対するものじゃないのよね」


 ミラ様、鋭い。

 本当に兄じゃないんです。


 ミラ様、本当は気付いているんじゃないかって思うほどだ。

 でも、それは口が裂けても言えない。


「血の繋がった兄妹ですわ~、ねぇ? お兄様?」


「あ、ああ、フィオナ。当たり前だろ。そんなこと今更いうほどのことでもない」


「ふ~ん」


「へ~」


「ほ~」


「ですの~?」


「……?」


「みんな、何にもないって! もう授業が始まる。行こう」






 みんな、何か腑に落ちてないようだ。

 俺たちが歩いていると、前から集団がやってきた。


 アルベルトとその取り巻きだ。


「相変わらず女に囲まれて良いご身分だな、エリアス」


「お前も知らない間に仲間を増やしたようじゃないか、アルベルト」


 アルベルト派閥は急速に勢力を広げている。

 俺たちが一触即発の状態で睨み合っていると、横から緊張感のない声が上がった。


「この人何ですか~、お兄様~? 怖~い」


 フィオナだ。

 この学校ではアルベルトのことを知らない者はいなくなっていた。


 魔法試合を圧倒的な強さで駆け上がったアルベルトを、恐れる者や崇拝する者で占められていた。


 フィオナはそんなことなどどこ吹く風という様子だ。


「何だこの女は? お兄様? エリアスに妹がいたのか。初耳だ」


 いつもは緊張感を漂わせているアルベルトだが、素っ頓狂な声を上げた。

 真剣な場面なので、噴き出さない様にしないと。


「ああ、そうなんだ、アルベルト。仲良くしてやってくれ」


「誰がするかゴミ! そうだ、エリアスの妹なら殺さないとな、切り刻んで」


「この人ゴミって言った! 殺すって言った! 切り刻むって言った! 非常識よ!」


「何だ、こいつは? ちっ……」


 アルベルトはフィオナにペースを乱されている。

 こうなったら、派閥の長も形なしだな。


「女ー! お前、アルベルト様になんてことを!」


「そうですよ、我らが主アルベルト様です。控えなさい」


「この人たち何、お兄様? 怖いわ」


「気にするな、フィオナ。取るに足らない者だ」


「てめえ! エリアス! 今日という今日は決着を付けてやるぞ!」


「そうです。我らが主アルベルト様の怖さを存分に教えてあげましょう」


 アルベルト様の子分の二人が凄んで来る。

 だが、こいつらは威勢がいいだけで大したことはない。


「お前が来いよ」


「くっ……」


「君たち、何してるの! もう授業が始まるわよ」


 マリーヌ先生がやって来た。


「ちっ、お前たち、行くぞ」


「ああ」


「はい」







「何やってるの、エリアス君。君ともあろう者が」


「申し訳ありません」


「先生、お兄様は悪くありません。あの方がお兄様に因縁を付けてきたのです。そして、お兄様は私を守ろうとして……なのでお兄様は悪くありません」


「そうよ、そうよ」


「ですわ、そうですわ~」


「ですの!」


「アルベルト君か……困ったものね……分かったわ、この場は不問にする。早く授業に向かいなさい」


「はい。申し訳ありません」


 アルベルト派閥の態度は次第に目に余るものになっている。

 何を企んでいるアルベルト。


 

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