第76話オティリアの盛大な勘違い
「エリアス君、ちょっといいかな?」
「何でしょう? オティリア先輩」
珍しくオティリア先輩から声を掛けられた。
と言うか、初めてかもしれない。オティリア先輩と話すのは。
「こんなことほぼ初対面で訊くのはどうかと思うけど、エリアス君の本命は誰なのかなって?」
「本命? 何がです?」
「ほら? わかるでしょ? 本命よ、本命」
全く何のことか分からない。
オティリア先輩は何を言っているのだろう。
「エリアス君っていつも女子に囲まれてるじゃない? 本命は誰なのかなって?」
確かに俺の周りには常に人がいる。
ミラ様、イルザさん、ハリエットさん、アンナさん、ハンナさんのうちの誰かは必ず俺の近くにいる。
今は奇跡的に一人だ。
オティリア先輩が言う本命が何なのかは分からないが、誰か一人を特別視したことはない。
強いて言えば皆特別だ。
「皆俺にとって特別な人です。誰か一人が特別ということはありません」
「そうなの? 欲張りね。誰か一人に絞らないと皆泣かせるわよ?」
どういうことだろう? 何故誰か一人を特別視しないと皆泣いちゃうんだろう。
「あ、でも一人気になる奴が」
「おお、聞きたい」
「アルベルトって奴です。そいつのことが頭から離れなくて」
「え……? アルベルト? 男の子みたいな名前ね?」
「男ですよ」
オティリア先輩は固まってしまった。
「そうよね……人には人の考え方があるから。分かったわ」
「?」
オティリア先輩は物凄く引いている。
「ありがとうね。君のことが良く分かったわ」
「はあ、どうも」
オティリア先輩、何が分かったんだろう。
あの程度の質疑じゃ俺のことなんて分からないと思うけど。
オティリア先輩はそそくさと行ってしまった。
オティリアside
もう、カイったらリズベット会長のことばかり追いかけて。
その会長はエリアス君のことばかり追いかけてるし。
待てよ、エリアス君はどう思ってるんだろう。
エリアス君はいつも女性に囲まれてるけど、彼自身の気持ちはどうなんだろう?
ほぼ初対面で恋バナなんてするのは非常識なのは分かるけど、私は好奇心が抑えられずエリアス君を呼び止めてしまった。
エリアス君は強さを追い求めることしか考えておらず、他のことは今は考えられないらしい。
私はその正直さ故に彼に好感を持った。
でも、次に彼の口から飛び出したのは信じられない言葉だった。
皆特別で選べないと。
でも、一人だけ気になる子がいるらしい。
おお、それが聞きたかった。
その子は男の子らしい。
え?
そりゃ、人には趣味嗜好があるから、それを否定できないけどそういうことだったのね。
会長や他の女の子から言い寄られても、靡かないのはそういう理由があったのね。
「ふう、リズベット会長、実らない恋だとも知らないで」
エリアス君が現れてから、会長キャラ変しちゃったのよね。
前は威厳のある人だったのに。
どうしちゃったのかしら?
「はくしゅん!」
(誰か私のこと噂してる?)
リズベットはくしゃみをしていた。
そしてオティリアは盛大な勘違いをしていた。
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