第74話エリアスVSルイーサ

 今日は俺とルイーサ様の試合。

 リア姉様との試合があったので、日を改めて試合することになった。

 約五年ぶりの試合だ。


 あの時は魔法でなく、剣の試合だった。

 武闘祭ではルイーサ様が優勝した。


 俺の反則負けで。


 お互い成長したところを見せあえれば良いと思う。


 




 試合が行われる魔法闘技場に場所を移した。。


 ”キャ~、エリアス君~、カッコいい~”

 ”エリアス様~、素敵~”


 ”ルイーサ様、お慕いしております~”

 ”ルイーサ様、負けないで~”


 声援は五分五分だ。


 試合をこなすたびに俺の顔と、L・O・V・Eの文字が入った団扇を持っている女性ファンが増えている気がする。


 ルイーサ様のファンは女性が多い。

 凛とした雰囲気が女性を惹きつけるのだろう。






 審判はワルモンド副学校長だ。

 マリーヌ先生は俺の担任、アクセル先生はルイーサ様の担任なので基本的に審判は出来ない。


「中々興味深い対戦じゃな。駒はどうするのじゃ? エリアス君は全学年序列十位、ルイーサさんは四位なのでポーンは賭けられんぞい」


 俺とルイーサ様の序列は六つ離れている。

 なので、ポーンは賭けられない。


 ナイト以上なら大丈夫だ。


「ナイトを賭けます」


 必要以上の駒を賭けて自分にプレッシャーを賭ける必要はない。

 奇を衒わずにナイトだ。


「私はポーンで」


 ルイーサ様も無難なところだ。


「では、始めるのじゃ!」


 俺は魔氷竜と魔雷竜を展開する。

 ルイーサ様も魔氷鳥を出してくる。


 お互い開始早々フルスロットルだ。


 ルイーサ様の魔氷鳥が俺に襲い掛かってくるが難なく躱す。

 今度は俺の魔氷竜と魔雷竜がルイーサ様に向って行くが、ルイーサ様は氷壁で防ぐ。


「やるな、エリアス」


「ルイーサ様こそ」


「五年前の様にはいかんぞ」


「何を言っているのです? あの時勝ったのはルイーサ様ですよ」


「私はそうは思っていない。皆もそうだろう。私はお前の背中を追いかけ続けてきた」


「光栄ですけど、買い被りすぎです」


 ルイーサ様の強さはリア姉様との試合で思い知らされた。

 リア姉様の魔雷獣獅子王は凄かった。


 それを防ぎきるなんて。

 剣の腕も立つが、魔法の才能もあるようだ。





 俺の魔氷竜と魔雷竜はルイーサ様の氷壁に防がれる。

 ルイーサ様の魔氷鳥を、俺は躱す。


 膠着状態が続いていたが、魔雷竜が氷壁を突き破り、初めてダメージを与えた。


「くっ……」


 俺はさらに畳み掛ける。


 ルイーサ様は自らを強化魔法で守っていたが、それも持たなくなる。

 魔氷竜と魔雷竜はルイーサ様を直撃した。


「ぐ……う……」


 もう勝負はついたと思う。


「どうするんじゃ? まだ続けるか?」


 ワルモンド副学校長から確認が入る。


「王家の責務として簡単に負けるわけにはいかない……と、昔の私なら言っていただろう。だが、素直に負けを認めるのも勇気。私の負けだ」


「勝負ありじゃ、勝者エリアス!」


「わー--! エリアス君、スゲー!」


「流石、エリアス様~」


「五年前の再現になったか。いや、五年前より差が開いたな」


「そんなことないですよ、良い試合でした。ヒール」


 ルイーサ様を淡い光が包む。


「お前は相変わらず甘いな。でも、そういうところが……いや、こんなところで言うのはやめておこう。エリアス、今度は私がお前に言いたいことがある」


「何でしょう?」


「この世は強さが全てではない。負け惜しみではないぞ、私の成長だ」


「良いと思いますよ。俺もそう思います」


 こうして俺とルイーサ様の試合は幕を閉じた。

 観客席を見回すと、五年前の光景が浮かんでくるようだった。


 

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