第71話副学校長からの贈り物

 次の授業は魔道具学だ。

 その前にヴァルデマー学校長から声を掛けられた。


「エリアス君、ちょっといいかな?」


「はい、学校長」


「君とハリエットさんが考えたカデンだったかな? 王国中で大人気だよ。量産体制を整えていたのだけれど、それでも品切れ続出だ。嬉しい悲鳴だよ」


「そうですか、良かったです」


 俺たちが考えた家電は、この国の文明レベルを飛躍的に向上させた。

 俺も転生前のような便利な生活が出来て嬉しい。


「これからも期待しているよ」


「はい、学校長」


 俺だけの功績ではないけれど、褒められたのは素直に嬉しい。

 これからも研究を頑張らないといけない気持ちになった。






 魔道具学の授業が始まった。


「……ということじゃ」


 ワルモンド副学校長の授業が行われている。

 心なしか副学校長の元気がいつもより良い気がする。


「今日はここまでじゃ」


 授業が終了した。


「エリアス君、ちょっといいかの?」


「なんでしょう? 副学校長」


 珍しい。

 授業が終わるといつもそそくさと教室を出ていく、副学校長が声を掛けてきた。


「ヴァルデマーが君のことを褒めておったよ。君の考えたカデンは売れに売れていると。儂はヴァルデマーが良からぬことを考えておるのではないかと心配しておった。じゃがそれは杞憂じゃった。奴は学校経営のことを考えて、君らのカデンを売り出すために身を粉にして働いておった。そんな奴の姿を見ていたら、奴を疑っておった儂が恥ずかしくなった。そして、この国の文明レベルは遥かに向上した。儂も使っておるよ、カデンを。便利になったもんじゃ。そして、儂が古い考えに凝り固まっておったことに気付いた。ありがとう、エリアス君。これはお礼じゃ」


 ワルモンド副学校長から杖を手渡された。


「これは?」


「ケーリュケイオンじゃ」


 医術や医学を司る杖ケーリュイオン。

 杖には蛇の装飾が巻き付き、上部には羽の装飾が施されている。


「お礼じゃ、これは君が持っていた方が良さそうじゃ」


「そんな、こんな凄い物を……」


「気にするでない。物は持つべき者の手にあるべきじゃ」


「ありがとうございます、大事にします」


「君の今後に期待しとるよ」


「ありがとうございます、ワルモンド副学校長」


 不器用なワルモンド副学校長からの贈り物。

 医術と医療を司る杖。


 ワルモンド副学校長はアルベルトのことをどこまで知っているか分からないけれど、俺は副学校長からのメッセージと受け取った。


 アルベルトのことを解決できる糸口になれば良いが。



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