第70話リズベット&フバード&カイ&オティリアside

 リズベットside


 私はリズベット・フォン・ココシュカ。

 アスラン魔法学校の生徒会長よ。


 生徒会に優秀な人材をスカウトするのが私の仕事。

 今年の新入生は凄い面子。


 この国の第三王女ミラさん。

 フェルゼンシュタイン公爵家のご令嬢イルザさん。


 そして、ディートリヒ家のご令息エリアス君。

 入学式で彼の顔を初めて見た。。


 はい、イケメン~。

 はい、反則~。


 運命の人現れた~。


 絶対にスカウト成功させなきゃ。

 そして、エリアス君と一緒の時間を共有したい。






 休み時間にエリアス君に接触した。

 生徒会に入らないか打診したけど、彼は首を縦に振らなかったわ。


 私の印象だと彼は生徒会が嫌というより、何らかの事情を抱えていて入れない様に見えた。


 一縷の望みに賭け、彼を生徒会の見学に誘ってみた。

 彼は見学だけなら良いと言ってくれたわ。






 生徒会室の前まで来ると、偶然? カイ君がいた。

 そして、何故かカイ君はエリアス君に敵意むき出しだったわ。


 そして、エリアス君まで、魔法試合でカイ君に勝ったら生徒会に入らない、負けたら入るということまで言い出してしまった。






 私たちは魔法闘技場に場所を移した。

 急な魔法試合だったけど、アクセル先生が手が空いていたので、審判を務めていただけることになったわ。


 会場の声援は五分五分。

 だけど、私はエリアス君を応援していた。


 これまでのエリアス君の試合は全て観戦している。


 いつエリアス君の試合があってもいいように、エリアス君の顔と、L・O・V・Eの文字が入った団扇を鞄に忍ばせているわ。


 私の気持ちは抑えきれない。

 中立なんて言ってる場合じゃないわ。





 試合が始まった。

 カイ君のサイコロ魔法。


 エリアス君は初見のはずだけど、当たり前のように躱している。

 というか、魔法を躱すって凄すぎ。


 流石私の運命の人。

 試合はエリアス君が圧倒して終わったわ。


 カイ君、日頃から私への好意を表してたから、もうちょっと頑張るかと思っていたけど、あっさりとギブアップしてしまった。


 ちょっと残念。

 何かしら、この釈然としない気持ちは。





 生徒会室に戻ってきた。

 エリアス君とイルザさんとミラさんが、エリアスが生徒会に入る、入らないで冗談でふざけ合っている。


 可愛いわね、新入生っていうのは。

 三人はただふざけ合っているのは分かるけど、エリアス君が冗談で『生徒会に入る』って言ったから、ダメもとで生徒会に入らないといけない方向に持っていった。


 何か事情があるみたいだから、無理だというのは分かっていたけど。

 そんな彼らのやり取りを咎める者がいた。


 フバード副会長よ。

 彼は、エリアス君たちのやり取りを快く思っていなかった。


 上級生なんだから、もっと広い心を持てば良いのに。

 イルザさんとミラさんまで彼のことを陰険眼鏡という始末。


 本当は怒るべき当事者のエリアス君だけが、何故か副会長の肩を持つというよく分からない構図になってしまった。


 最終的にエリアス君親衛隊? のみんなの集中砲火を浴びて副会長が戦意喪失してしまった。





 エリアス君は生徒会に入らない流れになったけど、私は諦めていない。

 生徒会に入ってもらわなくても、私たちが結ばれる方法はあるはず。






 フバードside


 あぁ、会長いつ見ても麗しい。

 お慕いしております。


 毎日同じく空間で過ごせるのは幸せ過ぎる。

 この幸せが永遠に続けばいいのに。


 そんな私たちの恋路を邪魔する者が現れた。

 エリアス・フォン・ディートリヒ。


 何故か会長はあの新入生を執拗に生徒会に入れたがっている。

 恋路を邪魔する者、否、やる気のない者は生徒会に入る必要はない。


 エリアスたち、新入生は生徒会に入る、入らないと馬鹿みたいにふざけている。

 神聖な生徒会でなんという馬鹿げたことを。


 おまけに私のことを陰険眼鏡だなどと。

 愚かしいにもほどがある。


 生徒会長まで私に敵意の眼差しを向けている。

 あぁ、そんな会長の顔は見たくない。


 私に向けていいのは、慕情の気持ちだけ。


 そして、カイ君やオティリアさんまで私に敵意の眼差しを向けてくる。

 何故か私の味方をするのは、当事者のエリアスだけ。


 この男はどういう者なのだ? 全く読めん。


 この場の全員を(エリアス除く)敵に回して、私は居心地が悪くなり、退散せざるを得なくなった。


 エリアス、なんという人心掌握術を身につけた恐ろしい男。

 だが、私は会長への気持ちは諦めたわけではない。






 カイside


 あぁ、会長美しすぎる。

 付き合いてえ。


 毎回俺がアプローチしても、適当にはぐらかされるんだよな。

 でも、諦めきれねえ。


 ある日会長が新入生を連れてきた。

 確か、ディートリヒ家のエリアスだっけか。


 会長に知っているか聞かれたけど、癪だから知らない振りをした。

 この国でディートリヒ家のことを知らない奴なんているわけねえのに。


 こいつは生徒会に入りたくねえらしい。

 信じられねえ、会長と毎日一緒に過ごせるのに。


 俺なんて、生徒会に入った動機がそれだから。

 会長がいなかったら、とっくに生徒会なんて辞めてる。


 こいつは生徒会に入らねえ口実に俺を使ってきやがった。

 完全に舐めてやがるな。


 いいだろう、上級生の恐ろしさを見せてやる。

 だが、油断はできねえ。


 仮にも、レオン様の血を引く男だ。

 十分に気を付けねえと。


 だが、俺の積み上げてきたイメージがある。

 いつも余裕なカイ様という。


 そこは守りつつ、華麗に勝たせてもらうぜ。





 魔法闘技場に移動した。

 奴はキングを賭けると言った。


 序列が百以上離れていると、それしか選択肢はねえ。

 頭では分かってる。でも、感情が追いつかねえ。


 完全に舐められてる気がした。

 ここは絶対に負けられねえ。





 試合が始まった。

 驚くだろうよ、奴は。俺の魔法を見たら。


 俺の魔法はサイコロの出目で効果が決まる。

 初見の奴はこれで大体ペースを崩して負ける。


 だが、奴は涼しい顔をして躱した。

 躱した……だと? サイコロ魔法とかいう前に、魔法を躱しやがった。


 落ち着け、俺。

 今まで積み上げてきたイメージがある。


 常にクールでいないと。


 来た、六のゾロ目。

 全属性攻撃だ。


 俺は勝ちを確信した。

 だが、奴は全て避けきりやがった。


 そして、魔法を竜の形に変えやがった。

 俺は負けた。






 生徒会室に戻ってきたら、フバード副会長がエリアスに絡んでいた。

 何だ、この苛つきは? 無性に副会長に腹が立つ。


 エリアスのことは気に入らなかったはずなのに、こいつのことを馬鹿にされると腹が立ってきた。


 何故かエリアスの肩を持つ様な発言をしていた。

 不思議だ。


 会長への気持ちは変わらねえ。

 それと、会長のエリアスに対する気持ちも俺には分かる。


 なのに不思議とこいつは憎めねえ。

 会長が好きになったのも分かる。


 こいつは人を惹きつける魅力がある。

 それは否定しねえ。


 だが、俺は絶対に諦めない。





 オティリアside


 カイのバカ!



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