第68話会長の我儘

「ヒール」


 俺はカイ先輩を回復した。


「何で俺を……」


「試合のお礼ですよ、楽しかったです。まさか、サイコロの出目で魔法の効果が決まるとは、勉強になりました」


「ちっ、可愛くねえ」






 俺は対戦舞台を降りてリズベット会長に近づいた。


「申し訳ありません。期待に応えられなくて」


「こちらこそ、申し訳なかったわ、不快な思いをさせて。改めてお詫びをしたいから、生徒会室に来てくれない?」


「いえ、もう結構です。では、もう行きます」


 リズベット会長は上目遣いで目をうるうるさせている。


「分かりました、行きますよ、行きます。でも、生徒会には入りませんからね」






 俺とリズベット会長は生徒会室に移動した。

 そして、何故かみんなも付いてきた。


「ここが生徒会室ですのね」


「生徒会室ね」


「ふ~ん、ここが生徒会室」


「ですの」


「……」


「何でみんな来てる?」


「無性に生徒会室に参りたい気分でしたので」


「そうね、急に生徒会室に行きたい気分になったわ」


「不思議ね、急に生徒会室に行きたくなった。ていうか、生徒会室があたしの実家じゃないかって思えてきたわ」


「ですの」


「……」


「そんなわけないだろ……」


 俺はみんなの相変わらずの態度に頭が痛くなりそうだった。

 こんな大所帯で来られたら、生徒会の方達も迷惑だろうに。


「申し訳ありません、会長」


「いいわ、それより……」


 リズベット会長は悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「イルザさんとミラさんね。どう? 生徒会に入らない? 二人が生徒会に入ってくれたら百人力よ」


 イルザさんとミラ様は思案している。


「エリアス君はどうですの?」


「エリアスはどうなの?」


 俺に振ってきた。

 俺はもう結論は出ている。


「俺はもう断った。アルベルトのことを優先させたいので」


「では、わたくしも入りません」


「私もです」


「じゃあ、何で付いてきたんだよ」


「それは先程申し上げました」


「それは言ったわ」


「じゃあ、入る」


「では、わたくしも入りますわ」


「私も入るわ」


 毎度のおふざけをやっていたつもりが、会長に聞かれていた。


「エリアス君、言質取ったわよ」


「い、いや、今のはおふざけというか」


「この場でそんなことが通ると思ってるの? もう幽霊役員でもいいから! これが最大限の譲歩だよ」


 反射的にボケてしまったが、会長の前というのがまずかった。

 幽霊役員なんて意味ないと思うけど。


「会長、もう止めたらどうですか? やる気のない者を生徒会に入れると皆の士気が下がります」


 その声の主は、眼鏡をかけた目つきの鋭い男だった。


「副会長……」


 フバード・フォン・クレーゲル。

 生徒会副会長だ。


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