第65話アルベルトのこと
「アルベルト君がエリアス君の友達ということは分かりましたが、とても普通の状態には見えませんでしてよ」
俺たちはいつものように図書室で勉強していたが、イルザさんが話を切り出してきた。
アルベルトの様子が普通ではなかったので、気にしてくれているのだろう。
「そうよ、友達っていうなら、尚更ほっとけないんじゃないの?」
アンナさんも気になっているようだ。
俺は皆を巻き込みたくなかった。
エミリーが近くにいたので、訊いてみることにした。
「エミリー、皆に話していいかな? 君も関わることだし」
ここまで来たら隠し通すのも難しくなった。
この場面で話すしかないのかもしれない。
「ええ、これ以上は隠し通せないし。というより、私は隠す気はなかったけど。エリアス君が過剰に隠そうとしているように見えたけど」
そうだったのか。
エミリーはあまりアルベルトのことを知られたくないのかと思っていた。
俺はアルベルトのことを話した。
子供の頃、王都での武闘祭で出会い、優しく気弱な少年だったこと。
故郷に帰ってから謎の黒兜に出会い、闇魔法を習得し性格が豹変したこと。
俺に対して友好的だったのに、敵意をむき出しにしてきたこと。
「アルベルトのことは気になってたわ。そんな事態になっていたなんて。謎の黒兜。気になるわね。アルベルトの状態が良くなる方法も探しつつ、黒兜の動向も知りたいわね」
「とても信じられませんわね。アルベルト君が気弱で優しかった少年だったなんて。許せませんわ、その黒兜とやらを。もし遭遇しましたら、わたくしが天誅を食らわせますわ」
「そうね。自信満々というより、狂気に―――ってこれは言わない方がいいわね」
エミリーは悲痛な面持ちだ。
元のアルベルトに戻ってほしいだろう。
「二人とも、なんでも言ってよね。手伝うからさ」
「そうですわね。わたくしも微力ながらお手伝いさせていただきますわ」
「ここは力を合わせた方がよさそうね。王城の書庫に何か手掛かりになる文献があればいいのだけど」
「みんな……ありがとう」
「ミラさん、イルザさん、アンナさん、ハンナさん、ありがとう」
ミラ様とイルザさんとアンナさんの他にこの場にはハンナさんもいる。
喋ってないけど、その表情からは手伝ってくれる意思が伝わってくる。
この人たちが同級生で良かった。
心強い。
アルベルトのやっていることは間違っている。
直ぐにでもやめさせたい。
だが、本当に憎むべきは黒兜だ。
アルベルトのことも気になるが、奴を止めないと第二のアルベルトが出現する可能性もある。
今は力を蓄えて黒兜がいつ現れても良いようにしないといけない。
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