第53話呪いと解呪の勉強
放課後はハリエットさんと研究室で過ごす以外の日は図書室に行くことが多い。
魔法学校の図書室は文献が豊富で飽きないからだ。
図書室ではエミリーが何かの本を読んでいた。
「エミリー」
「エリアス様」
「様なんてつけなくていいよ。同級生なんだし」
「エリアス君……慣れないですね……」
「敬語もいいよ」
「それは中々……家柄や序列が全然違いますし……それに私は基本アルベルト以外には敬語ですから」
「そうなんだ。家柄とか序列とか関係ないのに。同級生なんだから。でも、無理強いはしないからエミリーの好きにすると良いよ」
「ありがとうございます」
「ところで、その本は?」
エミリーは不気味な表紙の本を読んでいた。
「ああ、呪いの本です。アルベルトのことが何か分かるかと思って解呪の勉強をしようと思っているのですが、解呪を知るためには、先ずは呪いを勉強しようと思いまして」
「そうなんだ。確かに。解呪を知りたければ呪いを知るというのは良い発想だ、エミリー。俺もアルベルトのことは気になっていたから呪いの本を読んでみるよ」
「まだ、アルベルトのあの状態が呪いのせいか分からないんですけどね」
「ああ、まあそうだけど何もしないよりは良い」
それから俺はハリエットさんとの共同研究がない日は図書室でエミリーと一緒に呪いや解呪の本を読んでいる。
「何してんのよ、エリアス?」
アンナさんだ。
俺の隣に座ってきた。
俺が今やっていることを説明するためにはアルベルトの件を説明しないといけない。
アンナさんを巻き込むわけにはいかないので、適当にはぐらかす。
「ああ、勉強をね。俺、馬鹿だから頑張らないと」
「何言ってんのよ、皮肉のつもり? 授業で教師を驚かすほどの理論を披露したり、入試満点のくせに」
「入試の成績って公開されてたっけ? ははは、俺知らなかった」
「あんた、勉強や戦闘は得意なくせに嘘は苦手なのね。なんかほっとしたわ。あんたにも苦手なことがあるなんて。ところで、その娘は?」
「B組のエミリーです。よろしくお願いします」
「S組のアンナよ。別に敬語じゃなくていいのに。あたし、堅苦しいのは苦手なのよね」
「私、基本的に他人には敬語なんです。気を悪くされたのなら申し訳ありません」
「別に気を悪くしてないわよ。あんたの好きにすればいいわ」
「ありがとうございます」
アンナさんは口は悪いが、根は悪い人ではなさそうだ。
「……」
続いてハンナさんがやって来た。
相変わらず無口だ。
俺の正面に座り、『ここが私の定位置ですけど何か?』みたいな顔をしている。
授業の時もそうだが、何故か俺の近くに座りたがる。
「ハンナ、あんた本当にエリアスの近くに座りたがるわね」
「……」
アンナさんもそうですよとはツッコめなかった。
「アンナさん、ハンナさん、またエリアス君の近くに座って。って、早い者勝ちでしたわよね。分かっております」
「エリアス、相変わらずライバルが多……じゃなかった。勉強頑張ってるわね。私も頑張らなきゃ」
イルザさんとミラ様がやって来た。
ミラ様、ライバルって何? あぁ、勉強のか。俺も頑張らないと
イルザさんはアンナさんの隣に座り、ミラ様はエミリーの隣に座っている。
「エリアス君。何故呪いの勉強をしてますの? 呪いは魔法とは理論体系が違いますので、試験には出ないはずでは?」
「あぁ、教養のためにね」
イルザさんもアルベルトの件に巻き込みたくない。
適当にはぐらかす。
「馬鹿ね、イルザ。エリアスはあんたなんか眼中にないのよ。試験の勉強なんかしないでも余裕で勝てるって言外に示してるのよ」
「いやいや、アンナさん、俺そんなこと思ってないって! イルザさんは強敵だと思ってるよ」
俺の言葉は本心だ。
ランキング戦で俺に負けて序列三位に落ちたけど、S組で一番の強敵はイルザさんだと思っている。
「負けませんわよ、エリアス君。見てなさい!」
「だからそんなこと思ってないって……」
エミリーには申し訳なかった。
静かに勉強したかったろうに、騒々しい女性軍団のせいで落ち着いた環境で勉強できない。
アルベルトとエミリーの人生に関わることなのに。
「エミリー、ごめん……」
俺は小声で謝った。
「?」
エミリーは怪訝な顔をしていた。
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