第52話アンナ&ハンナ&ハリエットside

 アンナside


 あたしはアンナ・フォン・レーヴェンタール。

 レーヴェンタール伯爵家の次女よ。


 あたしは魔法学校に入学が決まったけど、今年の同級生がやばい。

 ディートリヒ公爵家のご令息エリアス様に、フェルゼンシュタイン公爵家のご令嬢イルザ様、そしてミラ王女。


 やばい、緊張する。

 あたしなんかが話しかけても良いのかしら。


 どうしよう……お二人が近くにいる。

 途轍もない美男美女じゃない。


 あたしなんかとは住む世界が違う。

 でも、勇気を出して話しかけてみようかな。


 エリアス様……? エリアス君……? 馴れ馴れしすぎるかしら。

 ミラ様……? ミラさん……? 王女様にそれは駄目かしら。


 意を決してあたしがエリアス様に話しかけた言葉は『エリアス、あんたの隣なんかに座りたくないんだからね!』だった。


 ひー、あたし何を言ってるのよ。

 呼び捨てだし、途轍もなく失礼なこと言ってるじゃない。


 やばい、あたし、キャラ設定ミスったかも……。

 魔法学校デビュー失敗しちゃった……。


 途轍もなく失礼なことを言ってるのに、エリアス様は全く気にする様子がなかった。

 お心が広すぎる。


 ミラ様はエリアス様の隣にあたしが座ったことにご機嫌を損なわれたけど、呼び捨てにしたことは気にされなかった。


 お二人とも人格者過ぎる。

 あたしにはもったいない同級生よ……。





 ハンナside


 私はハンナ・フォン・パレンツァン。

 パレンツァン伯爵家の次女よ。


 私には夢がある。

 魔法学校に入って人気者になって、友達と楽しく過ごすことよ。


『ハンナ、面白いね』なんて毎日皆に褒められる学生生活を妄想しているわ。


 でも、現実はというと……。


「……」


 魔法学校デビュー失敗した……。

 無口キャラになってしまうなんて。


 こんなこと想定してなかった。

 人気者になる夢が……。


 勇気を出して誰かに話しかけようか思案していると、近くにいたのはエリアス様、イルザ様、ミラ様。


 がちがちに緊張して喋りかけられなかった。

 そのまま無口キャラが定着してしまった。


 でも、そんな私にも譲れないことがある。

 エリアス様の隣に座ることよ。


 チャームでも使ってるの……? とても十二歳とは思えない色気。

 どんな修羅場をくぐってきたのか知らないけど、他の同級生とは一線を画していた。


 アンナとかいう女には腹が立った。

 エリアスなんて呼び捨てにして。


 私だってエリアス君とか、エリアスとか呼びたい。

 私が欲しかったポジションを取るなんて。


 お昼にはご飯を食べさせあいっこして……あぁ、妄想が止まらない……。

 ライバルは多いけど諦められない。


 ここで諦めると一生後悔するから。





 ハリエットside


 ハリエットはハリエット・フォン・ミヒャエリスなのです。

 ミヒャエリス侯爵家の長女なのです。


 パパとママには感謝してるのです。

 小さい頃からハリエットに英才教育を施してくれたです。


 おかげで勉強で困ることはなかったです。

 でも、困ったことがあります。


 ハリエットが時代の先端を行きすぎたのか、ハリエットの理論についてこれないのです。

 それはこの魔法学校でも同様なのです。


 今はワルモンド先生という、お爺ちゃん先生が授業をやっているのです。

 ワルモンド先生はハリエットの理論に理解を示してくれませんのです。


 でも、それは覚悟していたのです。

 人は常識というか、その場の空気を払拭できない生き物なのです。


 教室の空気も『こいつ、何言ってんだ』みたいになってましたですけど、エリアス君は違いました。


 ハリエットの理論に理解を示してくれて、共同研究までしたいと言ってくれましたです。

 パパとママ以外で初めてハリエットを認めてくれた人ですの。


 嬉しいですの。

 研究は放課後研究室で行っているですの。


 最初はハリエットの理論を認めてくれて嬉しかったですが、気付いたことがありますの。

 研究室でお互い文献を読んでいる時でしたの。


 隣に座っているエリアス君の顔がとても美しいことに。

 艶やかな銀髪、長い睫毛、白磁のような肌、人間離れした美しさにハリエットは目を奪われましたの。


 ハリエットがエリアス君に見蕩れているところに、彼は気付きましたの。

 本来なら研究する時間なのに、ハリエットは何をしてるのです……。


 エリアス君は一瞬怪訝な顔をしましたが、直ぐに研究に戻りました。

 ハリエットは勉強しかしてこなかったから、この胸の高鳴りの正体が分からないのです。


 ただ、この時間が永遠に続けばと思うのです。

 エリアス君はハリエットのことを妹の様にしか見てくれませんのです。

 でもハリエットはそんな風に見て欲しくないです。


 パパとママには教わらなかったですが、ハリエットは勉強以外も頑張ってみようと思いましたですの。




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