第46話入学式
講堂で入学式が行われている。
学校長、ヴァルデマー・ソロモンから学校の説明が行われている。
ソロモン魔法学校
主に優秀な魔法使いを育てる目的を持った教育機関。
原作ゲーム大罪英雄と運命の勇者の舞台でもある。
卒業生は王宮職や冒険者になるが、王家や冒険者ギルドから独立した機関というのは原則であり建前である。
学校経営には資金が必要であり、王家や冒険者ギルド、貴族の力添えは必要不可欠である。
中等部、高等部があり、その後に専門課程に進むことが出来る。
魔法研究科、教職科。
そして、英雄科。
傲慢で、憤怒しやすく、嫉妬深く、怠惰であり、強欲であり、暴食であり、色欲に塗れた人間を育てる課程。
原作では、その教育方針が功を奏したのか、魔族を討伐することに成功した。
だが、彼らは人類の敵になり、魔族から大罪英雄に敵が変わっただけだった。
遠い昔、魔族や帝国の脅威にアスルーン王国が悩まされていた頃、どこからともなく現れたソロモンという人物がこの国に魔法を齎し、魔族や帝国の脅威は完全に消えた訳ではないが、アスルーン王国は魔法大国として名を轟かし抑止力を手に入れた。
始祖ソロモンが興したのがこのソロモン魔法学校である。
ソロモンは神か悪魔の末裔であったという説もある。
続いてこの学校のランキングシステムについても説明が行われようとしている。
・ランキングは公表される。
・ランキング戦は魔道具により記録され学内の者であればいつでも閲覧可能。
・学外の者でも要求があり学校側が許可すれば閲覧可能。
・クラスは優秀な順からS、A、B、C、Dに分けられる。(例年20人ずつから始まるが、退学者が続出するため、20人に満たないクラスが存在する)
・ランキングは学年ランキングと中等部ランキングと高等部ランキングと全校ランキングがある。(高等部ランキングと全校ランキングが別れているのは中等部の者が全校ランキング一位になる可能性があるため)
・ランキング上位者から下位者、下位者から上位者、下級生から上級生、上級生から下級生に対戦を申し込むことが出来る。(下位者や下級生に挑むメリットは基本的になし。ただし、完全実力主義のため己の実力を相手に誇示するためや、気に入らない相手を屈服させるために対戦を申し込むことが出来る)
・対戦を申し込まれた上位者、上級生は基本的に断ることが出来ない。(病気や怪我、家庭の事情の場合は学校側が判断する)
・下位者、下級生は挑戦を断る権利を有する。
・勝者は相手の順位を奪う。(別学年が相手の場合、中等部ランキング、高等部ランキング、全学年ランキングが変動する可能性があるだけで、学年ランキングの変動はなし)
・敗者は一つ順位を落とす。(別学年が相手の場合、中等部ランキング、高等部ランキング、全学年ランキングが変動する可能性があるだけで、学年ランキングの変動はなし)
・挑戦はチェスの駒を使う。
・キングは学内の何者(教師も含む)にも挑戦できるが、敗北すれば即退学。(教師は挑戦権とチェスの駒を有しない。ただ、生徒からの挑戦を受けるのみである。教師は挑戦拒否権を有しないと解される。実力至上主義の当校において、生徒からの挑戦など一蹴出来る実力を教師には当然備えて欲しいからである。一定の熟考期間を経た後、生徒側から挑戦を取り消すのは可能。対戦の結果、複数のキングを所持することになっても、一つのキングを失ってしまったら即退学になる。なので、相手のキングを奪えば以後の対戦が楽になるということはない)
・クイーンは三学年上まで、百序列上までの者にのみ対戦申し込み可能。(中等部から高等部可能)
・ルークは二学年上まで、五十序列上までの者にのみ対戦申し込み可能。(中等部から高等部不可)
・ビショップは二学年上まで、三十序列上までの者にのみ対戦申し込み可能。(中等部から高等部不可)
・ナイトは同学年十序列までの者にのみ対戦申し込み可能。
・ポーンは同学年五序列上までの者にのみ対戦申し込み可能。
・以上、下位者から上位者に挑む場合の駒の扱い。
・上位者から下位者へは何の駒を使っても良い。
・勝者は賭けた駒が戻ってくるのと、相手の駒を手にする。
・敗者は賭けた駒を失う。
・駒は魔法で現時点の所有者を魔法で管理しており、対戦以外での駒の所有者変更は認めない。
・勝者は一日の対戦回数制限はない。(勝ち続ける限り短期間で順位の上昇が見込める)
・勝者に対する挑戦制限もない。(勝者は勝ち続ける限り対戦を受け続けなくてはならない。そのため結託して上位者に対戦を申し込み続けることも許されている。真なる強者を育てるため勝利者は勝ち続けなくてはならない。但し、挑戦は許可された時間にのみ行うことが出来る。勝者の休憩時間や睡眠時間を奪うことは許されないから)
・敗者は二週間の挑戦権を失う。(敗者への挑戦としては、対戦を経た後、上位者と下位者が入れ替わるので、同じ相手からの複数回の挑戦は、下位者は上位者からの挑戦を断る権利を有することから、その規定を用い挑戦の拒否が出来る。但し、任意で許可することもできる。前回対戦とは同一人物以外の場合、上位者なら断ることができ、下位者なら拒否権は有しない)
・同じ者に三回負けるとその者への半年間の挑戦権を失い、五回負けると一年間の挑戦権を失い、十回負けると永久に挑戦権を失う。
・不戦敗(不戦勝)の規定がある。(上位者が挑戦を申し込んできた下位者を自分より強いと判断した場合の、実際の対戦を避ける規定である。無用な損害を避けるためである。上位者は挑戦を申し込んできた下位者に順位と駒を明け渡す。実際の対戦は行わないが、公式記録には残る。不戦敗者は通常の敗者と同様に一つ順位を落とす。不戦敗者は通常の敗者と同様に二週間の挑戦権を剥奪される)
・審判へ危害を加えた場合、失格負けとなる。
中等部一年は例年100人からスタートするが、退学者が続出し高等部三年になると10人程度になる。
中等部は約230人だが、高等部は約70人である。
「おいおい、マジかよ……」
「きつすぎだろ……」
説明を聞いていた生徒はざわついている。
鬼畜ゲーとか、クソゲーとも言われるシステムである。
上位に行くほど施設や魔道具の使用など様々な恩恵を受けることが出来る。
だが、上位に行くほど集中砲火を受けるシステム。
下位に行くほど施設や魔道具の制限を受ける。
下位にいれば安全のようにも思えるが、順位は上がらないし成績や進級の査定にも影響する。
大罪英雄と運命の勇者は基本RPGだが、恋愛パートもある。
楽しい学園生活を……という訳にはいかない。
退学者が続出するので、推しが退学するなんて普通にある。
自分自身が生き残るだけでは駄目なのである。
自分自身も残りながら、推しを守るという動きが必要なのであった。
この制度から言えることは、上位者が偉く様々な恩恵を受けることが出来るということだけでなく、気に入らない者は実力で叩き潰せということだった。
下位者はもちろん挑戦を断る権利は保持しているが、返り討ちにすれば自分の力を誇示出来るという面もある。
正に実力至上主義。
中等部一年が高等部三年を倒し、下僕にするなり、屈服させるなり自由だ。
強ささえあれば、あらゆることが許される。
「いつからランキング戦を行うことが出来るのでしょうか? 僕には既に戦いたい相手がいます」
アルベルトは早くもランキング戦に興味がありそうだ。
狙いは俺か? 学校長の説明が終わるなり質問をしていた。
「通常は各々の教室で教師から改めてルール説明が行われてからだが、いいだろう。魔法闘技場へ皆を案内してやろう」
予期しない形で初のランキング戦が行われることになった。
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