第45話教職員会議
ソロモン魔法学校。
教職員室。
今年度の合格者について話し合われていた。
「一位はディートリヒ家のエリアス君、二位はフェルゼンシュタイン家のイルザさん、三位はミラ様。二位と三位が入れ替わっていた可能性はありますが、順当と言えるのではないでしょうか?」
口火を切ったのは、中等部一年S組担任のマリーヌ・エルスターである。
エリアス、イルザ、ミラの担任である。
「確かに。だが、ミラ様という呼び方は止めたまえ。国王からも特別扱いなどせず一般の生徒と一緒の扱いをして欲しいと言われています。ルイーサさんやルイス君の時もそうだったでしょう?」
マリーヌの発言を咎めたのは学校長のヴァルデマー・ソロモンである。
「申し訳ありません。それと……」
「白髪紅眼の奴か、くく、面白れぇじゃねぇか」
アルベルトの入学を快く思ってない教師が多数を占める中で、ごく少数の肯定派の一人は高等部二年S組担任アクセル・シュナイダーである。
ルイーサとリアの担任である。
彼の価値観の全ては面白いか、面白くないか。
アルベルトの存在が面白いと思ったから入学に賛成する。
至極明快な理由である。
良い悪いは置いておいて。
「序列百位の子ですね。私は反対です。何か悪しき考えや力に取り憑かれているように見えます」
「儂もじゃ。奴の力はまともな方法で手に入れたものではなかろう。この学校にどの様な災厄を齎すか分からん」
「くく、別にいいじゃねぇかよ、面白ければ。退屈な奴らだな」
先代の学校長ワルモンド・ソロモンは保守的な考え方だ。
学校長選挙で改革をうたった息子が新学校長になった。
先代の学校長ワルモンドは副学校長兼教師として残ることになった。
「父上……いえ、先代、それでは彼を野に放つというのですか?」
「ま、まぁ、それも仕方ないじゃろ……」
「彼が誰かを傷つけたら?」
「衛兵に任せとけば良いじゃろ。それでうちの責任にはならんじゃろ」
「そういうことを申し上げているのではありません。衛兵が動くということは誰かが傷つけられるということです。その様な事看過出来ますか?」
「くく、確かに」
「うぐっ……」
「彼の合格に異論がある方はいらっしゃらないでしょうね?」
「「……」」
「くく、俺ぁ、面白れぇ奴は好きだぜ」
「ただし、特別措置として、入学時学年序列は百位とします。筆記の成績は置いておいて単純な戦闘力なら二位だと思いますが。潜在能力なら、さらに上だと思います」
「二位!? イルザさんより上ですか?」
マリーヌはイルザよりアルベルトの方が上だという学校長の発言を受け入れられなかった。
当然であろう。
担任として、自らが受け持つクラスの二番より学年百位の人間の方が上だと言われているのだから。
「そうですね。彼が不思議な力を使うことに皆さんも懸念点をお持ちだと思います。だからこそ特別措置を取ったのです。彼が使う力を正当な評価基準として良いものなのかと。私も悩みましたが、苦肉の策でS組でなくD組序列百位とさせていただきました。好戦的な性格なので直ぐに順位を上げてくるでしょうが、危うい部分も多大にあるので教職員で見守っていかなければなりません」
「……」
「くく、諦めろ、マリーヌ。可愛い教え子がD組の奴に負けるのが怖えのかよ?」
「私はそんなこと思ってない。S組の皆を立派に育ててみせる。ただ、よく分からない力を使う子がいて、不測の事態に生徒たちが巻き込まれるのが嫌なだけよ」
「エルスター先生、担任でなくともアルベルト君はわが校の生徒ですよ。差別などせずに寛大に見守っていこうではありませんか。無理に若い芽を摘まずともよろしいのではないですか? それが大人の責務ではありませんか?」
「申し訳ありません、学校長。未知の力を前に取り乱しました。確かに間違った道に進もうとしている子を導くのも大人の責務です。」
「儂は反対じゃからな。どうなっても知らんぞい」
「くく、年寄りは心配性だねぇ」
学校長が言ったことは嘘偽りない言葉である。
だが、彼には別の思惑があった。
資金力が豊富で多大な戦果を上げている公爵御三家や冒険者ギルドに比べて、ソロモン魔法学校はその存在感をなくしていると言っても過言ではない。
卒業生や在校生にも冒険者になり、名を馳せている者はいるが、ソロモン魔法学校より公爵家や冒険者ギルドの方が上であると国民の中で認識されていた。
彼は新しい風を吹かせてくれる者を求めている。
それがアルベルトなのかは分からないが、改革を実現出来る者なら喉から手が出るほど欲しい。
「エリアスにアルベルトか。面白くなりそうじゃねぇか、くくっ」
教職員の中でも、肯定派、否定派分かれたが、アルベルトの入学は正式に認められた。
エリアスとの対決は避けられないだろう。
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